高所得者の税金はいくら? 新内閣の所得再分配政策の今後の動きは?
配信日: 2022.01.20
今回は、国税庁が公開している情報から、給与所得者のうち高所得者が占める割合と税金額をチェックしていきましょう。高所得者から低所得者へお金を再分配する、岸田内閣の「所得の再分配政策」の今後の動きについても解説します。
執筆者:下中英恵(したなかはなえ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者
“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。
富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”
高所得者の割合
国税庁が実施している「民間給与実態統計調査」(※)によると、令和2年の日本人の平均給与の金額と、給与階級ごとに区分した給与所得者の構成比は以下となっています。
<年間給与階級別構成比(令和2年分)>
区分 | 構成比 |
---|---|
100万円以下 | 8.4% |
100万円超~200万円以下 | 13.8% |
200万円超~300万円以下 | 15.5% |
300万円超~400万円以下 | 17.4% |
400万円超~500万円以下 | 14.6% |
500万円超~600万円以下 | 10.2% |
600万円超~700万円以下 | 6.5% |
700万円超~800万円以下 | 4.4% |
800万円超~900万円以下 | 2.8% |
900万円超~1000万円以下 | 1.8% |
1000万円超~1500万円以下 | 3.4% |
1500万円超~2000万円以下 | 0.7% |
2000万円超~2500万円以下 | 0.2% |
2500万円超 | 0.3% |
※筆者作成
調査の結果では、年間給与300万円超から400万円以下の区分の割合が最も多く、400万円以下で見ると全体の55.1%と給与所得者の半数以上を占めています。年収1000万円超の高所得者は、全体の4.6%と少数派です。
高所得者の納税額
次に、給与別に納めた税金額を見ていきましょう。
同じ国税庁の調査の結果によると、令和2年で年間給与800万円超に該当する給与所得者の数は481万人です。これは給与所得者全体の1割程度(9.2%)ですが、納めた税金の合計は6兆8834億円で、税額全体(10兆7126億円)で占める割合では64.3%となっています。
さらに年間給与2500万円超の超高所得者に限って見た場合、その数は給与所得者全体のわずか0.3%です。しかし納めた税金は1兆9469億円と、税額全体の18.2%を占めています。
この数字から、高所得者の税率が高くなる「累進課税制度」が機能しており、高所得者が納めた税金が日本の税額の大部分を占めていることが分かります。
所得の再分配に関する今後の動き
2021年10月、新しく岸田内閣が誕生しました。岸田内閣は当初から所得の再分配政策を推し進めることを主張しており、株や投資信託にかかる税金の負担を上げる金融所得課税の見直しが検討されていましたが、市場への影響を考慮して「当面は変えない」と発言を撤回しています。
一方で、累進課税制度により多くの税金を支払っている富裕層の方々が相続税対策として活用していた、110万円の暦年課税制度(受贈者ごとに年間110万円の贈与分までの贈与税が非課税となる)などは今後の見直しについて議論がされています。
内閣が替わると、大きな制度変更も行われる可能性があるので、税制改正の動きにも注目してみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。給与所得者の中で高所得者が占める割合や、納めている税金額について、普段はあまり意識することはないかもしれませんが、今回の記事を参考にしながら、自身の給与や税金をあらためて確認してみてはいかがでしょうか。
出典
(※)国税庁 令和2年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-
執筆者:下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者