更新日: 2022.06.21 年収

【年収比較】世界の「介護職員」の年収は国の平均よりも高い? 日本と比較して解説

【年収比較】世界の「介護職員」の年収は国の平均よりも高い? 日本と比較して解説
同じ業務内容の仕事であっても、国によって待遇の水準は異なります。エッセンシャルワーカーとして位置づけられる介護職も例外ではありません。
 
本記事では、世界各国で働く介護職員の年収を日本、韓国、ドイツ、オランダ、フランスの5カ国で比較します。介護の質を高めるために奨励金を出すといった他国の取り組みなどを知り、日本における介護職を取り巻く環境について考えるきっかけにしてみてください。
川辺拓也

執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)

2級ファイナンシャルプランナー

日本の介護職員の平均年収は約360万円

日本の介護職員の平均給与は30万円となっています。年収換算すると約360万円。民間事業所における給与所得者の平均月収約36 万 円と比べますと、介護職の給与水準は高いとは言えません。
 
ただ、5カ国内で比較しますと、日本の介護職員の年収は後で紹介するドイツやオランダに次ぐ水準となっています。
 

韓国の介護職員の平均年収は約160万円~約290万円

韓国で、介護職員にあたる職業は療養保護士と呼ばれています。療養保護士の月給は134万~240万ウォン(約13万~約24万円)です。年収に換算しますと、約162万円~約292万円となります。
 
韓国における全産業平均月給約254万ウォン(約25万円)と比べますと、日本と同様、介護職の給与が高い水準にあるとは言えません。
 
【図表1】

図表1

出典:健康保険組合連合会 「公的介護制度に関する国際比較調査(令和2年3月)」より筆者作成
 
ただ、韓国では介護の質を高めるため「長期勤続奨励金」を毎月支給する制度があります。図表1の通り、同一の長期療養サービス提供機関において、最短で36ヶ月以上働くと支払われることになっています。
 

ドイツの介護職員の平均年収は約430万円

ドイツにおける介護従事者の月給は、ドイツ全体の中央値として2621ユーロ(約35万円)となっています。年収換算すると430万円程度と、日本より高い水準ですが、ドイツ国内の全産業と比較するとどうでしょうか。
 
【図表2】

図表2

出典:健康保険組合連合会 「公的介護制度に関する国際比較調査(令和2年3月)」より筆者作成
 
図表2にある通り、ドイツ国内で介護職の給与水準はやはり全産業の平均水準を下回る結果となっています。
 

オランダの介護職員の平均年収は約300万円~約400万円

オランダでは介護サービスは図表3にある通り、5つの役職から構成されています。そのうち、日本の介護職に近い職種はヘルスケアワーカーと介護福祉ヘルパー、ケアヘルパーの3つです。
 
【図表3】

図表3

出典:健康保険組合連合会 「公的介護制度に関する国際比較調査(令和2年3月)」より筆者作成
 
収入で比較すると図表4の通り、ヘルスケアワーカー、介護福祉ヘルパー、ケアヘルパーは全産業の平均と比較して低水準となっています。
 
【図表4】
図表4

出典:健康保険組合連合会 「公的介護制度に関する国際比較調査(令和2年3月)」より筆者作成
 
オランダの介護職員(ヘルスケアワーカー、介護福祉ヘルパー、ケアヘルパー)の平均年収は約300万円~約400万円となっています。
 

フランスの介護職員の平均年収は約240万円~約324万円

フランスにおける介護職(生活指導介護士と医療系介護士)の月収水準は1500~2000ユーロ。円換算で約20万円~27万円、年収では約240万円~約324万円となっています。
 
全産業の労働者の最低賃金水準である約1521ユーロ並の水準です。所得中央値も1794ユーロ。フランスの介護職の給与水準は国内、他国のいずれと比較しても低い水準となっています。
 
給与水準の低さもあり、フランスでは介護職員が就業してから6年以内に4人に1人は離職している現状で、深刻な人員不足が叫ばれています。
 

5カ国で比較すると日本の高齢化率が際立つ

日本の高齢化率は2021年で28.8%と世界で最も高く、介護職員は2025 年には約245万人が必要になるとされています。
 
ここでは、介護職の魅力と質を高めるために奨励金制度を設けている海外事例についても紹介しました。介護職が担う社会的な役割の重要度を考えますと、日本も他国に劣らない早急で実効性のある対策が必要といえます。
 
※文中の円換算数値はいずれも各通貨の5月28日時点のレートを基に算出。為替水準は変動する可能性があります。
 

出典

健康保険組合連合会 公的介護制度に関する国際比較調査(令和2年3月)
内閣府 令和3年版高齢社会白書
 
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー
 

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