更新日: 2022.07.26 年収

年収700万の家庭に適用される私立高校の就学支援金はどのくらい?

年収700万の家庭に適用される私立高校の就学支援金はどのくらい?
2020年4月より導入された「私立高校実質無償化」により、私立高校に通う生徒への支援が手厚くなりました。
 
正確には、高等学校等就学支援金制度が改正されたことにより、私立学校への支援額が引き上げられたわけですが、実際に制度が適用されるかどうかは、世帯の年収が大きく関係します。
 
では、実際に年収700万円の家庭が適用される私立高校の就学支援金は、どのくらいの金額なのでしょうか?
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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就学支援金の判定基準

就学支援金の対象となる人の判定基準については、両親2人分の都道府県民税所得割と、市町村民税所得割額の合計額によって決まります。
 
具体的には、下記となります。
 
両親2人分の市町村民税の課税標準額(課税所得額)×6%-市町村民税の調整控除の額
 
この額が15万4500円未満であれば、私立高校における授業料の実質無料化の対象になります。また、30万4200円以下であれば、基準額である11万8000円が支給されます。
 

市町村民税の課税標準額は家族構成によって異なる

では、市町村民税の課税標準額の計算方法を確認してみましょう。計算上、片働きとし、世帯主は東京都在住の40歳以上とします。
 

■市町村民税の課税標準額の計算方法

市町村民税は、所得によって異なる「所得割」と、所得に関係なく課税される「均等割」の2つで構成されています。
 
そして、就学支援金の判定基準となるのは、「課税標準額」です。課税標準額については、以下の計算式で求められます。
 
前年の所得金額-所得控除額(千円未満切り捨て)
 
例えば、給与所得者で昨年の年収が700万円の場合、給与所得額は以下の計算で求めます。
 
700万円-給与所得控除(※1)額(180万円)=520万円
 
さらに、ここから社会保険料(東京都の場合(※2):約105万円)を差し引くと、415万円です。
 
ここから、家族構成によって考えられる所得控除(※3)を羅列してみましょう。計算において、生命保険料控除などは考慮しないものとします。
 

●基礎控除:43万円
●配偶者控除:33万円
●一般の扶養控除(16歳以上19歳未満):33万円
●特定扶養控除(19歳以上23歳未満):45万円

 

■家族構成による課税所得金額の違い

税額控除を考慮しなかった場合、最終的な所得割額は家族構成によって変わります。
 

・配偶者と子ども1人(高校生)の場合
415万円-(43万円+33万円+33万円)=306万円

・配偶者と子ども2人(両人ともに高校生)の場合
415万円-(43万円+33万円+33万円+33万円)=273万円

・配偶者と子ども2人(高校生と大学生)の場合
415万円-(43万円+33万円+33万円+45万円)=261万円

・配偶者と子ども3人(高校生2人と大学生1人)の場合
415万円-(43万円+33万円+33万円+33万円+45万円)=228万円

・配偶者と子ども3人(高校生1人と大学生2人)の場合
415万円-(43万円+33万円+33万円+45万円+45万円)=216万円

 

家族構成による支給額の違い

では、上記で計算した課税所得金額に基づいて、支援金額を計算してみましょう。計算上、調整控除は加味しないものとします。
 

・配偶者と子ども1人(高校生)の場合
306万円×6%=18万3600円(支給額:11万8000円)

・配偶者と子ども2人(両人ともに高校生)の場合
273万円×6%=16万3800円(支給額:11万8000円)

・配偶者と子ども2人(高校生と大学生)の場合
261万円×6%=15万6600円(支給額:11万8000円)

・配偶者と子ども3人(高校生2人と大学生1人)の場合
228万円×6%=13万6800円(支給額:最大39万6000円)

・配偶者と子ども3人(高校生1人と大学生2人)の場合
216万円×6%=12万9600円(支給額:最大39万6000円)

 
家族構成によって所得控除額が異なり、それによって課税所得金額も異なります。
 
そして、課税所得金額の6%の額が15万4500円未満であれば、私立高校授業料の実質無償化の対象となり、15万4500円以上30万4200円未満であれば、11万8800円の支給対象です。
 
実際には、生命保険料控除や地震保険料控除などがあるため、ギリギリのラインにいる「配偶者と子ども2人(高校生と大学生)」の世帯であれば、最大39万6000円の支給を受けられる可能性はあります。
 

まとめ

今回は片働きのケースで、給与所得者の例を挙げて計算してみましたが、ひと言で共働きで世帯収入が700万円といっても、家族構成などによって計算結果が異なります。
 
ただ、計算の流れをきちんと理解しておけば、どのくらいの課税標準金額になり、就学支援金の支給額の判断の基礎となる額についても、概算で把握できるでしょう。
 
正確な金額については、課税証明書などで確認できますが、自分でもどのような計算の流れで支給額が決定したのかを、判断できるようにしておきましょう。
 

出典

(※1)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1410 給与所得控除

(※2)
全国健康保険協会 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
(※3)
東京都主税局 個人住民税 7 個人住民税の所得控除
全国健康保険協会 ホームページ

 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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