更新日: 2022.09.28 年収

フリーランスの平均年収が「低い」は本当?

フリーランスの平均年収が「低い」は本当?
フリーランスの「平均年収」は、ランサーズ株式会社が実施した「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」によれば300万円未満と、会社員の平均年収を下回っています。
 
ただ、フリーランスで活動している人々の中には、むしろ会社員よりも高収入であるケースも珍しくはありません。
 
今回の記事では、世に出回るフリーランスの「平均年収」に関する情報に、どのように向き合ったらよいのかについて解説していきます。フリーランスへの転身を検討されている方は、独立後の生活設計に向けた情報収集に取り組む際の参考にしてみてください。
北川真大

執筆者:北川真大(きたがわ まさひろ)

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副業で活動している場合を含むかどうかに注意

フリーランスの平均年収に関する民間企業の調査レポートを見るとき、注意すべき点があります。それは、「副業として活動している場合が含まれているか」によって、平均年収の水準が変わるということです。
 
「フリーランスの定義」をめぐっては現状、社会的な共通認識の形成には程遠い状況といえます。
 
例えば、クラウドによる開業支援などを手掛ける株式会社マネーフォワードが運営するサイト上では「自分のスキルや専門技術を生かして個人で仕事をするのであれば、職種は問わず誰でもフリーランスと名乗ることができる」と大まかに規定されています。
 
一方、クラウドソーシングなどを手掛けるランサーズ株式会社が2021年9月から10月にかけて3094人(うち、フリーランス1548人)を対象に実施した「新・フリーランス実態調査2021-2022年版」では、国内のフリーランス約1500万人を以下の4タイプに分類しています。

・副業系すきまワーカー:約400万人
・複業系パラレルワーカー:約350万人
・自由業系フリーワーカー:約300万人
・自営業系独立ワーカー:約500万人

このうち、個人事業主や経営者として仕事をしているフリーランスは「自営業系独立ワーカー」だけです。自営業系独立ワーカーの平均年収は297万円で、副業系すきまワーカーの62万円とは5倍近い差が開いています。
 

基準や統計対象が異なる

フリーランスに関する調査は官公庁も行っています。安倍政権時の2013年から2020年に開かれた日本経済再生本部の事務局、内閣官房日本経済再生総合事務局(以下、再生本部)が2020年5月に発表した「フリーランス実態調査結果」(調査対象14万4342人、うちフリーランスは9392人)では、次の4点に該当する場合をフリーランスと定義しています。なお、法人の経営者はフリーランスに含まれます。

・自身で事業等を営んでいる
・従業員を雇用していない
・実店舗を持たない
・農林漁業従事者ではない

一方、厚生労働省が設けているフリーランスの定義は、以下6点に該当する人となっています。法人の経営者がフリーランスに含まれる点は同じです。

・自身で事業等を営んでいる
・従業員を常時使用していない
・個人事業主等で店主ではない
・農家や漁業者ではない
・業務の委託を受けている
・事業者が直接の取引先

 

職種等による収入差が激しい

再生本部の調査結果によると、フリーランスの年収は200万円以上~300万円未満の人が19%と多数を占めています。
 
ただし、どの職種でフリーランスとして活動しているかによって年収の水準感には差が見られます。一般社団法人フリーランス協会によると、年収600万円以上の割合は以下の通りです。

・エンジニア系:40.9%
・文筆系:17.9%
・コンサルタント系:27.9%
・アーティスト系:21.5%
・士業系:43.4%

一般的に、参入障壁の低い職種は低収入の人が多く、専門性の高い職種ほど高収入の人が多くなる傾向です。ちなみに、年収200万円未満が最も多い職種は文筆系で32%となっています。こうした多種多様な職種の人々の年収を合算し、単純に人数で割っただけの「平均年収」によって、フリーランスの収入の実態を捉えるのは難しいといえるでしょう。
 

「平均年収」はあくまで平均値

フリーランスの「平均年収」が、金額だけを見ると会社員の平均年収より低いことは事実です。
 
ただし一口にフリーランスといっても、その職種や本業か副業かなどによって金額差があるため、見かけ上の「平均年収」と実際の収入が一致しているフリーランスは一部に限られます。
 
フリーランスへの転身を検討する際には、「平均値」に関する調査データは参考程度にとどめ、自分が進もうとしている職種における収入の水準感などを多角的に調べてみるように心がけましょう。
 

出典

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 「フリーランス白書2020」
内閣官房日本経済再生総合事務局 フリーランス実態調査結果(令和2年5月)
ランサーズ株式会社 【ランサーズ】新・フリーランス実態調査 2021-2022年版
 
執筆者:北川真大
2級ファイナンシャルプランニング技能士・証券外務員一種

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