更新日: 2022.10.31 年収

「年収900万円世帯」が貯蓄に回せる金額はいくらくらい?

「年収900万円世帯」が貯蓄に回せる金額はいくらくらい?
国税庁の調査によると日本の平均給与は年間で約460万円であり、年収900万円というとかなりの高所得者のイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
 
しかし、日本では高所得者ほど税率の上がる累進税率を採用している点や、社会保険料の負担増によって実際にはそれほど余裕のある生活を送れていない場合もあります。そこで、今回は年収900万円の人がどれくらい貯蓄に回す余裕があるかについて公的資料をもとに計算してみました。
FINANCIAL FIELD編集部

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年収900万円世帯の手取り額はどれくらい?

年収900万円は月額換算にして75万円ほどの給与をもらえている計算です。しかし、実際にもらえるお金は社会保険料や所得税などが差し引かれているので、毎月75万円を自由に使えるわけではありません。そこで、貯蓄に回せるお金を計算する前に、年収900万円の手取り額について考えてみましょう。
 

・社会保険料の負担は年間でおよそ120万円

まずは、健康保険や厚生年金などの社会保険料の負担について計算していきます。健康保険では標準報酬月額75万円は38等級、厚生年金では32等級です。
 
東京都の場合、介護保険第2号被保険者(40歳から64歳まで)は4万2937.5円、介護保険第2号被保険者に該当しない人(40歳未満)は3万6787.5円ほどが毎月の給与から差し引かれます。一方、厚生年金は毎月5万9475円ほど差し引かれる計算です。
 
また、雇用保険の保険料は令和4年10月に従来の0.3%から0.5%まで引き上げられており、「75万円×0.5%=3750円」かかります。つまり、社会保険料の年間負担額は40歳から64歳までの人で126万7470円(毎月10万5622.5円)、40歳未満の人で120万150円(毎月10万12.5円)が目安です。
 

・所得税および住民税の負担額合計もおよそ120万円

所得税や住民税で納める金額は配偶者や扶養家族の有無などによって異なりますが、今回は仮に独身者で基礎控除しか適用されないパターンで計算していきます。年収900万円の人は給与所得控除195万円、基礎控除48万円です。
 
社会保険料を120万円とした場合、所得税の計算式は「900万円-195万円-48万円-120万円」となり、課税所得は537万円となります。課税所得537万円の計算式は「537万円×20%-42万7500円」で、64万6500円ほどを納めなくてはいけません。
 
また、住民税は所得税と違って基礎控除が43万円なので、課税金額は「900万円-195万円-43万円-120万円=542万円」になります。税率についてはほとんどの地域で10%ですが、それに加えて5000円の均等割りが課されるのが特徴です。そのため、「542万円×10%+5000円=54万7000円」を納める必要があります。
 

平均的な世帯でどれくらい貯蓄ができるのか

上記で紹介したように、年収900万円の人は社会保険料120万円、所得税および住民税120万円の合計240万円ほどが年間で給与から差し引かれてしまいます。もちろん、この金額は世帯構成やそのほかの所得控除などによって人それぞれ変動する点は留意しなくてはいけません。
 
しかし、目安となる手取り金額が「900万円-240万円=660万円」まで落ちると聞いて驚く人もいるのではないでしょうか。
 
660万円を月額で計算すると、毎月の手取り額は55万円ほどです。ここから毎月かかる生活費を差し引いた金額が貯蓄に回せる分になるでしょう。毎月かかる生活費の目安については、総務省統計局の「家計調査報告」が参考になります。同資料の令和4年8月分によると、二人以上世帯における毎月の消費支出の平均は28万9974円でした。
 
しかし、同資料では持ち家に住んでいる人や子どもがいない世帯の人も含まれているせいか、住居費と教育費がかなり低く抑えられています。住居費と教育費を除いた消費支出の平均値は26万3918円で、実際にそれらにかかる金額を考慮すると毎月の支出は35万円近くになるでしょう。仮に、毎月の平均的な支出が35万円である場合、毎月の手取り額が55万円の人は20万円ほど貯蓄ができる計算になります。
 

毎月の貯蓄額がいくらなら十分かは人それぞれ異なる


 
年収900万円の人が平均的な生活を営む場合、毎月20万円ほど貯蓄ができる可能性があります。しかし、子どもの教育や住宅にどこまでお金をかけるかの価値観は人それぞれ違うので、それほどの貯蓄ができない場合もあるでしょう。
 
また、人によっては趣味やレジャーにもっとお金をかけたいと考える人もいるかもしれません。貯蓄がどれくらいあれば十分かはライフスタイルによって変わるので、将来のお金について不安のある方は、まずは長期的な人生計画を考えることから始めてみてはいかがでしょうか。
 

出典

国税庁 平均給与

全国健康保険協会 被保険者の方の健康保険料額(令和4年3月~)

厚生労働省 雇用保険料率について

国税庁 No.2260 所得税の税率

国税庁 給与所得控除

東京都主税局 個人住民税

総務省統計局 家計調査報告

 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

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