「年収1000万」は損? 年収1000万から受けられなくなる「公的サービス」や「給与所得控除」まとめ
配信日: 2023.01.07
しかし、近年では年収1000万を境に受けられなくなるサービスがあったり、支払う税金が多くなったりと、年収1000万は損なのではという声が上がっています。年収1000万で受けられなくなるサービスや税制度をみていきましょう。
執筆者:守屋鮎美(もりや あゆみ)
2級ファイナンシャルプランナー
年収1000万の税金「所得税」と「給与所得控除」
まずは、年収1000万の税金と手取りについて確認してみましょう。所得税は所得に応じて税率が変わります。また、所得税を算出するための元になる課税所得を計算する際の控除で大きな割合を占める給与所得控除も、所得額によって控除額が変わってきます。
所得税も給与所得も所得1000万前後でその額と率が大きく変わってくるため、年収1000万は損なのではないかといわれています。
所得税率は、確かに1000万前後で、695万円~899万円の「23%」から900万円~1799万円の「33%」と10%も税率が上がっており、いきなり負担が大きくなるように見えます。
しかし、実際にはそれぞれの所得額に応じて、さらに決まった控除額を差し引くことになります。実際の所得税額である「それぞれの所得に応じた所得税率-所得に応じた控除額」でグラフを描くと、1000万円前後でいきなり大きく突き抜けるということはなく、緩やかなカーブを描くことになり、そこまで大きな差が生じるわけではありません。
給与所得控除については、850万円までは所得税と同様、所得ごとに「率」と「差し引きする一定額」が定められており、どこかで大きく差が生じるわけではありません。
しかし、850万円を超えると一律で195万円の控除額となります。そのため、850万円以上を超えてしまうと、その分損をするという見方ができるでしょう。
年収1000万で制限される子育て支援サービス
次に、年収1000万円で制限される主な公的サービスについて、みていきましょう。多数の公的サービスが年収によって制限がされますが、その代表的なものが「子育て支援」に関するものでしょう。その中でも「子育て罰」と話題に上がることの多い「児童手当」と「保育料」の制限について説明します。
児童手当
「児童手当」は中学卒業までの子のいる世帯を対象に給付される制度で、所得制限が設けられています。通常、「3歳未満」で1万5000円/月、「3歳~中学生」は1万円/月を受け取れますが、所得制限と上限額が設定されており、約960万円で5000円/月、約1200万円で児童手当自体が受けられなくなります。
正しくは、「子が何人いるか」「控除額がいくらか」などで変わってくるので、ご自身の場合はどうなるのか、しっかり確認してみましょう。
児童手当を中学生まで満額支給された場合、198万円になります。対して、1200万円を超えて児童手当が受けられない場合、0円になりますので、子が2人・3人といた場合には大きな差になります。
保育料
保育園は基本的に国の認可を受けた認可保育園と、それ以外の認可外保育園に分けられます。その中で認可保育園では市町村によって異なりますが、基本的に所得ごとに保育料が定められています。東京都世田谷区の月額保育料の例を見てみると、以下のようになっています。
●課税所得が0円の世帯は無料
●世帯年収500万円で約2万3000円
●世帯年収1000万円で約5万2000円
●世帯年収1800万円以上で約7万9000円
※控除額により目安年収は異なります。
世帯年収500万円と1000万円の差額は2万9000円となりますので、年額にして34万8000円の差となります。
対して、認可外保育園の保育料は所得にかかわらず一律とされているところが多いので、世帯年収によっては、認可外保育園に通った方がお得になる世帯も存在します。
さまざまな所得制限
今回ご紹介したもの以外にも、所得制限を設けている公的サービスは多くあります。
所得を得る本人の所得控除についてはご紹介しましたが、配偶者控除なども世帯主の所得に応じて変動します。それ以外にも、高校無償化や大学無償化など、年収1000万といわずとも所得制限を設けています。
それぞれ簡単に年収のみで制限されているわけではないので、細かく自身の場合は当てはまるのか否かを確認してみてください。
出典
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1410 給与所得控除
内閣府 児童手当制度のご案内
世田谷区 保育料および給食費について
執筆者:守屋鮎美
2級ファイナンシャルプランナー