更新日: 2023.03.18 年収

保育士ですが手取りは「20万円」です。たった1人で「30人の子ども」を見ているのですが安くないでしょうか…?

保育士ですが手取りは「20万円」です。たった1人で「30人の子ども」を見ているのですが安くないでしょうか…?
保育士というと、「優しそう」「小さいころに憧れた職業」というポジティブなイメージを持つ人もいる一方、「低賃金」「労働環境が良くない」と話題に上がることもしばしばあります。とてもやりがいのある仕事ですが、待遇が良くない現状に悩む保育士も少なくありません。
 
実際に大切な子どもを預けている保護者からしても、お世話になっている分、保育士の労働環境について気になる人も多いのではないでしょうか。
 
本記事では保育士の給料の実態について解説しています。
FINANCIAL FIELD編集部

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保育士の手取りは20万円前後

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均的な給与は「きまって支給する現金給与額」が25万6500円、「年間賞与その他宅別給与額」が74万4000円です。よって、年収で見ると382万2000円ということになります。毎月の給与は額面ですので、手取りが8割だとすると大体20万円前後です。
 
なお、国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は443万円ですので、保育士の年収は決して多い方ではないと言えるでしょう。
 

保育士の中でも条件によって年収は異なる

さまざまな職業の中で保育士の年収は高くはないかもしれませんが、条件次第では保育士の平均年収を超えるような場合もあります。
 
具体的には、同一園内では勤続年数が長くなるほど基本給が上がるケースがあります。また保育士には正社員のみならず、契約・派遣社員やパートなども多く勤務していますが、正社員の方が契約・派遣社員やパートなどよりも年収は高いことが一般的です。
 
また、役職に就いていれば役職手当分の給与アップが見込めますし、私立よりも公立の保育園の方が給与や福利厚生に関しては待遇が良くなるケースが多いようです。
 

多忙な保育士の配置基準ってなに?

国は保育士の人数について配置基準を定めています。「配置基準」とは、保育士1人が対応可能とする子どもの数の基準のことです。具体的には、0歳児では子ども3人につき保育士1人、1・2歳児では子ども6人につき保育士1人、3歳児は子ども20人、4・5歳児は子ども30人につき保育士1人です。
 
普段、家庭で育児をしている保護者からすると、この配置基準がどれほど厳しいかは想像に難くないのではないでしょうか。
 
子どもと一口に言っても、そこにはさまざまな個性の子がいて、幼い時期は発達の個人差も大きいです。
 
例えば昼食の時間、1人で食べられる子、食べられない子、おかわりが欲しい子、なかなか食べてくれない子、友だちとけんかをする子、うまく食べられない子などさまざまです。その中で担当する範囲の子どもたちをくまなく援助するのは、まさに息つく暇もない労働環境だと言えるでしょう。
 

配置基準の矛盾が生む保育士の低待遇

私立保育士の給料の「拠出元」として大きいのは国からの補助金ですが、国からの補助金は前出の配置基準が元になります。しかし、この配置基準が実態と合っていないため、保育士の給与が抑えられている側面があります。
 
例えば、4・5歳児は子ども30人につき保育士1人という配置基準に基づき、補助金が支払われます。しかし、実態として、4・5歳児は子ども30人につき保育士1人ではとても足りないため、2人を配置していたとしても、補助金は1人分しか支給されません。そのため、保育士1人分の補助金で2人分を賄わなければならなくなってしまいます。
 
ただし、都道府県・指定都市・中核市は、国の基準を上回る基準を条例で定めることができ、横浜市などのように「4歳以上児24人につき1人以上」といった自治体独自に配置基準を設けて補助し、より手厚い保育環境を提供しているケースもあります。
 
2022年12月の会見で加藤厚生労働大臣は「保育士等の配置の改善を図ることは重要な課題」との認識を示す一方、「取り組むという姿勢を示してから10年近く経っているわけだから、そうした認識はしっかり持って取り組んでいきたい」と、未実施である1歳児や4、5歳児に対する保育士の配置改善に前向きな考えを示しています。
 

保育士は大変だが魅力的な仕事

保育士の仕事は決して楽なものではなく、現状給料も高くはありません。とはいえ、給料も昔と比べれば増えてきていますし、世論でも改善待遇の声は聞こえてきています。また、自治体の中には独自の配置基準を設けるなど、保育士への待遇を手厚くしている場合もあります。
 
子どもの成長に関われるというとても魅力的な仕事である保育士の将来は、働く側からしてもより魅力的なものになることを期待しましょう。
 

出典

厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) ※表番号1

国税庁 令和3年分 民間給与実態統計調査

厚生労働省 地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会(第1回)資料 資料3 保育を取り巻く状況(令和3年5月26日)

厚生労働省 加藤大臣会見概要(令和4年12月13日(火)11:01~11:17 省内会見室)

横浜市 横浜市民間保育所設置認可・確認等要綱

 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

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