更新日: 2023.04.11 年収
稼ぎすぎると「損」をする? もっとも得する年収は「600万円前後」って本当?
もっとも得をする年収は600万円前後であるといわれていますが、本当なのでしょうか。本記事では、年収600万円前後がもっとも得をするといわれる理由について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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「稼ぎすぎると損をする」主な原因は所得税
日本は何らかの方法で収入を得た場合は、所得税や住民税を納めなければいけません。住民税は、年収に関係なく一律で課税されます。しかし、所得税はお金を稼げば稼ぐほど税率が上がる超過累進税率を採用しています。
日本の超過累進税率は図表1のとおり定められています。
図表1
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000円~194万9000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万円~649万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万円~899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万円~1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円~3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
4000万円~ | 45% | 479万6000円 |
※1000円未満切り捨て
国税庁 No.2260 所得税の税率を基に作成
例えば、課税所得が4000万円を超える人は、「4000万円×45%-479万6000円=1320万4000円」を所得税として納めなければいけません。また、住民税も10%発生するため、合計1720万4000円が税金として納めなければいけない計算です。
一方、課税所得が194万9000円以下の人は、わずか5%の税率で済みます。仮に、194万円の課税所得があった場合は、9万7000円+19万4000円(住民税)=29万1000円のみです。
年収600万円の課税所得は300万円前後
年収600万円の給与所得者の場合、以下の控除を受けられます。
・基礎控除(48万円)
・給与所得控除(収入金額の20%+44万円)
・社会保険料控除(90万円前後)
48万円+164万円+90万円=302万円
年収から上記控除額を差し引くと、課税所得は298万円となります。仮に、課税所得がちょうど298万円だった場合、所得税は以下のとおりです。
298万円×10%-9万7500円=20万500円
年収600万円の人の所得税額は、20万500円程度であることがわかりました。次に、なぜ年収600万円前後がもっとも得をするのかについて解説します。なお、住民税は課税所得298万円の10%であるため、29万8000円となります。
図表2
所得税額 | 住民税額 | 合計 |
---|---|---|
20万500円 | 29万8000円 | 49万8500円 |
筆者作成
600万円前後がもっとも得をする
年収600万円前後がもっとも得をする理由として、超過累進税率を採用していることが挙げられます。例えば、仮に「年収700万円」だった場合は、税率が20%に引き上がるギリギリのボーダーラインとなり得ます。
・基礎控除(48万円)
・給与所得控除(収入金額の10%+110万円)
・社会保険料控除(110万円前後)
700万円-(48万円+180万円+110万円)=362万円
図表1を元に確認すると、課税所得が362万円の場合は税率が20%で控除額が42万7500円です。そのため、所得税の納税額は29万6500円となります。
図表3
所得税額 | 住民税額 | 合計 |
---|---|---|
29万6500円 | 36万2000円 | 65万8500円 |
筆者作成
年収600万円と700万円を比較すると、所得税・住民税で16万円もの差が発生します。一方、年収が500万円の場合は、以下のとおりです。
・基礎控除(48万円)
・給与所得控除(収入金額の20%+44万円)
・社会保険料控除(75万円前後)
500万円-(48万円+144万円+75万円)=253万円
上記のとおり、課税所得が253万円であるため年収600万円の場合と比較して税率は変わりません。また、納税額も以下のとおりです。
図表4
所得税額 | 住民税額 | 合計 |
---|---|---|
15万5500円 | 25万3000円 | 40万8500円 |
筆者作成
年収600万円の場合と比較して、その差はわずか9万円です。税率も変わらず、納税額も大きな差異がないことから、もっとも得をする年収は600万円程度であることがわかります。
年収600万円前後が狙い目
もっともお得な年収は600万円前後です。働いている中で年収をある程度調整できるのであれば、600万円前後を狙ってみると良いでしょう。
出典
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1410 給与所得控除
全国健康保険協会 都道府県毎の保険料額表
日本年金機構 厚生年金保険料額表
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部