専業主婦がパートタイムで働くときのさまざまな壁<その2>~社会保険に関する「130万円の壁」

配信日: 2023.04.21

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専業主婦がパートタイムで働くときのさまざまな壁<その2>~社会保険に関する「130万円の壁」
「その1」では、専業主婦がパートタイムで働く場合の年収について、社会保険に関する「106万円の壁」を説明しました。「その2」では、もう一つの「130万円の壁」について説明したいと思います。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

「130万円の壁」とは?

厚生労働省は、社会保険の被扶養者(扶養される資格のある者)の認定基準を定めていますが、「130万円の壁」とは、そのうちの収入に関するものをいいます。
 
社会保険で扶養される資格のある者と認定されるためには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
 

1. 住民票と生計の維持の要件

日本国内に住民票を有しており、被保険者により主として生計を維持されていること
 

2. 収入に関する要件

年間収入130万円未満(※1)
60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満(※2)、かつ、
同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
 

3. 同居の要件

ア.被保険者と同居していなくとも被扶養者と認められる者
配偶者、子、孫および兄弟姉妹、父母、祖父母などの直系尊属
 
イ.被保険者と同居していることが必要な者
上記ア以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)

 
上記(※1)の「130万円の壁」に関する収入の認定方法は若干複雑なので、以下の点に注意する必要があります。
 
(1)年間収入とは、過去の収入ではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の「年間の見込み収入額」をいいます。
 
すなわち、その時点で月額給与が10万8333円以下であれば、年間収入130万円未満とみなされることになりますが、例えば、その時点で11万円を超えていた場合、年間収入は130万円以上とみなされ、扶養に入ることができなくなる可能性があります。
 
(2)年間収入には給与収入・事業収入などだけでなく、利子収入、公的年金、傷病手当金、出産手当金なども含まれます。
 
(1)(2)に関する判断は所属する健康保険組合が行うので、事前に健康保険組合に確認することが必要です。
 
上記のような収入認定に関する注意点はありますが、一般的にいうと、通常のパートタイム主婦の方で年収が130万円未満、かつ、夫の収入の半分未満であれば、社会保険上、扶養される資格があることになります。
 

60歳以上または障害者の場合の「壁」

前述の「2. 収入に関する要件」の(※2)で示すように、60歳以上または障害者の場合は、「130万円の壁」が「180万円の壁」に上がり、年間収入180万円未満であれば社会保険への加入義務はなくなります。
 
例えば、60歳以上のパートタイム主婦の場合は、この条件に当てはまります。ただし、年金生活者の主婦がパートタイムで働いている場合は、パートタイムによる給与収入だけでなく、年金収入も収入に含まれるので、「給与収入+年金収入」が180万円未満であることが必要です。
 

「106万円の壁」との関係

106万円の壁を回避できても、130万円の壁にぶつかる可能性があります。
 
例えば、従業員数51人未満の企業に勤めていても、年収が130万円を超えると社会保険への加入義務が出てきます。また、週20時間以上の労働時間がなくても、時給が高く、年収が130万円を超える場合は、やはり社会保険の加入対象となります。すなわち、「106万円の壁」と「130万円の壁」の両方を回避しないと、社会保険への加入義務が生じることになります。
 
2024年10月には、従業員数51人以上の企業も社会保険適用拡大の対象になることを考慮して、今後どのように働くかを決めるべきでしょう。
 

まとめ

次回「その3」では、「壁」を超えて社会保険への加入義務が生じた場合、どのくらいの出費増になるのか説明したいと思います。
 

出典

日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き

 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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