更新日: 2023.05.02 年収
新卒で財務省に入省! 将来「財務事務次官」になった場合の年収は「2000万円」!?
財務事務次官は、入省年次から0~1名、まれに2名または3名がなることもありました。もし約40年近く財務省で働く場合、現在の同期の中から財務事務次官が誕生する可能性もあるでしょう。
本記事では、将来財務官僚の中の最高役職である財務事務次官になった場合の年収について解説します。
執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)
二級ファイナンシャルプランニング技能士
財務事務次官の年収はいくら?
国家公務員の給与は、法律によって定められており、民間企業の基本給に相当する俸給を始めとして、各種諸手当が働いている人の状況によって加算されます。
諸手当には、配偶者や子どもなどの扶養親族がいる場合の扶養手当や、通勤手当、単身赴任手当、超過勤務手当や、離島などに勤務する場合の特地勤務手当、寒冷地に勤務する場合の寒冷地手当などさまざまなものがあります。
財務事務次官の年収を算出するために、基本給にあたる「俸給」や、ボーナスにあたる「期末手当」、民間企業の賃金水準が高い地域に勤務する際の手当である「地域手当」で計算したものが図表1です。財務省の本省に勤務することで受け取れる3種類に絞りました。
図表1
月額 | 年額 | |
---|---|---|
俸給(指定職俸給第8号) | 117万5000円 | 1410万円 |
地域手当(東京都特別区20%) | 23万5000円 | 282万円 |
期末手当(年間3.30月分) | 232万6500円 (半年に1回分で計算) |
465万3000円 (年に2回分で計算) |
合計 | 141万円 (期末手当除く) |
2157万3000円 (期末手当含む) |
内閣官房 国家公務員の給与(令和4年版)、人事院 国家公務員の諸手当の概要、内閣官房 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第81号)の概要を基に筆者作成
指定職俸給表の中で第8号が最も高く、財務事務次官のほかに各省の事務次官とも同列です。なお国のトップである内閣総理大臣や、各省大臣は特別職俸給表という別の俸給体系になり、各省事務次官よりも俸給月額が高くなります。
財務事務次官の主な仕事
財務省は、財務省設置法によると健全財政の確保や適正で公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正管理、通貨に対する信頼の維持、外国為替の安定を図ることが仕事です。財務省のトップは財務大臣であり、その下に財務副大臣、財務大臣政務官と続き、それらの役職は、与党の政治家が担います。
そして財務大臣政務官の次に事務方のトップとして財務事務次官となります。財務事務次官は、一般的に予算編成の責任者である主計局長の役職を経て就任することになるため、国の予算編成について掌握しており、業界の利益代表である政治家との調整を行うことがあります。
政策の実現は、時の内閣と財務事務次官を始めとする官僚との力関係によって左右されることが多いです。例えば、選挙による民意を得て誕生した内閣は強く、逆に民意に裏打ちされていない内閣の場合、政治力のある強い財務事務次官が就任していれば、時の政権にとって行いたくない政策でも実現させてしまうこともあるでしょう。
健全財政を実現させるために、しばしば消費税を上げるために政治家に影響力を行使することもあり、財務事務次官の行動によっては政局になることも多いです。また政局の結果、財務事務次官が主導していることが一般メディアに取り沙汰されたことで、大蔵事務次官OBに叱責されることもありました。
ちなみに歴代大蔵事務次官のOB会のことを通称「大蔵元老院」と呼んでおり、歴代事務次官の中で、通常1年任期のところを2年在任することで大物と見られるようになります。また過去には、事務次官退官後に東証理事長や、日銀総裁または両方に就任することで、「大蔵元老院」の中でも一目置かれ、現役に対して影響力を行使することもできます。
しかし現役に対して毎回影響力を行使するわけではありません。本来、国の政治に責任を負うのが政治家であり、個々人の官僚が責任を負うわけではないため、表立って政局になるような行動を取れば、いわば「官僚の矩(さしがね)」に反することにもなるため、官僚自身もわきまえて、政治家と調整しています。
財務事務次官になるためには
財務事務次官は、経験すべき役職がおおよそ決まっているため、就任する約10年前からほぼ決まっているといわれています。
財務省の中で花形といわれるのが財務省主計局です。財務省の内部部局には、主計局のほか、主税局、理財局、国際局、関税局そして大臣官房があります。
例えば、長らく主計局の役職をやっている人であれば「主計畑」、主税局であれば「主税畑」、国際局であれば「国際畑」といわれ、主計畑であれば最終役職として、財務事務次官になれる可能性が高く、主税畑は、国税庁長官、国際畑であれば財務官と、おおよそのコースが決まっています。
財務省に入省してから、いくつかの課を経て、課長級の役職である「財務省主計局主計官(厚生労働第1係・第2係担当)」や「財務省大臣官房文書課長・総合政策課長・秘書課長」などを経て、「財務省主計局次長(末席、次席、主席)」、「財務省大臣官房総括審議官」、「財務省大臣官房長」を経験することで就任できる可能性が広がります。
そして「財務省主計局長」に就任することでほぼ確実に財務事務次官になれるといわれます。ただし歴代局長経験者でも事務次官になれなかった人もいるため、絶対というわけではありません。
以上のような流れを経て、財務事務次官になります。財務事務次官の年収は、約2000万円円と高額です。しかしそれに見合うだけの責任を負っていることは間違いないといえるでしょう。
出典
内閣官房内閣人事局 国家公務員の給与(令和4年版)
人事院 国家公務員の諸手当の概要
内閣官房 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第81号)の概要
e-Gov法令検索 財務省設置法
香川俊介さん追悼文集発行委員会編 財務官僚・香川俊介追悼文集「正義とユーモア」(イマジニア、2016)
山村明義 財務省人事が日本を決める(徳間書店、2019)
倉山満 検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む(光文社新書、2012)
神一行 大蔵官僚 超エリート集団の人脈と野望(講談社、1986)
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士