更新日: 2023.05.30 年収
パートですが130万円の壁を超えそうです。働き損にならないのは年収いくらですか?
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
知っておきたい扶養控除のこと
まず、おさえておくべきことは、扶養控除、扶養控除内で働くということがどのようなものなのか、ということです。
パートで働く人の多くが、扶養控除内で働くことを意識しています。また、そもそも扶養控除内で働く場合、税法上の扶養と社会保険上の扶養があるという点に注意が必要です。
(1) 税法上の扶養控除
税法上の扶養とは、年収が一定範囲内のときには所得税や住民税が軽減されることをいいます。その仕組みとしては、100万円を超えると住民税がかかる場合(自治体)があり、さらに103万円を超えると所得税がかかります。
なお、年収が103万円以下で配偶者がいる場合には、その配偶者が配偶者控除として最大で38万円の控除を受けることができます。その他にも、配偶者特別控除が受けることができます。
ただし、配偶者(納税者本人)の年収が1220万円を超えると、これらの控除は受けられないことになっています。
(2) 社会保険上の扶養控除
社会保険上の扶養控除とは、パートで働いて収入を得ている場合であっても、配偶者の加入する健康保険や厚生年金の扶養に入ることをいいます。その仕組みはかなり複雑で、勤務先の従業員の人数などによっても違いがあります。
具体的には、従業員が101人以上の会社で働いているときには、年収が約106万円を超えてしまうと、自分の働いている会社の社会保険に加入する義務が発生する場合があります。
その他のときには、年収が130万円を超えると配偶者の保険の扶養から外れてしまうことになってしまい、社会保険に加入しなければならず、社会保険料を支払わなければならなくなります。
そもそも130万円を超えなければ加入義務がないため、社会保険上の扶養控除が受けられるのですが、130万円を超えてしまうことで社会保険に加入する義務が発生してしまうのです。これは、家計にとって大きな問題。これがいわゆる130万円の壁といわれているゆえんです。
もう1つの壁も知っておく
実は、130万円の壁の他にも、知っておくべき壁もあります。それが150万円の壁です。パートで働いているとき、年収が150万円を超えてしまうと、配偶者特別控除が満額受けられないことになってしまいます。
100万円や103万円、130万円や150万円などの壁がありますが、働き方によってどのような支払いが生じるのか、生じるのか、受けられる控除の種類も違ってくることに注意しましょう。
働き損にならない年収はいくら?
自分が働いた収入から1円たりとも支払いたくないなら、年収100万円未満を目安にすると良いでしょう。
130万円の壁を超えてしまうようなら、配偶者である夫の扶養の範囲内である年収130万円未満に抑えることを心がけてください。130万円超えてしまうようなら、年収155万円以下を目指して働くとよいでしょう。
ただ、知っておくべきことは、社会保険に加入することが必ずしも損をする、デメリットになるわけではないということです。
社会保険に加入したときには、自分自身で健康保険に加入することになるため、傷病手当金や出産手当金の対象になります。さらに、厚生年金に加入することになるため、将来の自分の年金の受取額を増やすことも可能になってきます。決して悪いことばかりではありません。
働き方はさまざまです。また、損という概念も人によって違ってきます。支出を抑えることが大切なのか、福利厚生などの充実が大切なのかなども、個人によって違います。自分にとって損をしない働き方、年収はいくらになるのか、じっくりと考えてみてください。
出典
国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.1195 配偶者特別控除
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト