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更新日: 2023.10.27 年収

年収の壁、壊したあとに気を付けたいこと

年収の壁、壊したあとに気を付けたいこと
厚生労働省から、年収が一定額を超えると社会保険料の支払いが生じて手取りが減る「年収の壁」対策に関する、支援強化パッケージが正式に発表されました。
 
別稿(※)で「手取りが減ることは損でないという選択肢も考えてみよう」ということを申し上げましたが、今後、「年収の壁対策がとられるなら、もっと働こう」と、実際に壁を壊す方が増えてくるかもしれません。今回は支援パッケージの内容と、壁を壊したあとのライフプラン上のメリット・デメリットをお話しします。
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

年収の壁対策として発表された新情報とは

現行では、年収130万円以上(従業員100人以下の企業の場合)で社会保険に加入するということが原則的な社会保険上のルールです。従業員101人以上の企業の場合、月額の給料が8万8000円(年収換算で約106万円)でも同様に社会保険に加入する必要があり、これを超えると、労働者への負担と同時に企業の負担も増えます。
 
今回の支援パッケージの内容は、負担を少しでも緩和するための補助として、1人あたり3年(2025年度末まで)で最大50万円が企業に支給されるということです。ただ、その対応と助成額は複数あり、例えば労働時間を4時間延長するという対応も含まれます。
 
今後、このような補助金を受け取りたい企業側は、手当を支給するのか、労働時間を延長するのかなど、企業側の対応によって受け取れる補助金額が異なります。さらに期間が2025年度末までということで、勤務先からいきなり「パートはみんな社会保険に加入します」とはならないでしょう。
 
手続きの詳細はこれからですが、「取り組み開始から6ヶ月後に支給申請が可能」となりますので、今「扶養範囲内」で働いて、年末までシフトを増やそうか迷っている方にとっては、じっくりと迷う時間をとったうえで、今後の働き方を決定するようにしましょう。
 
もし、勤務先から「もう少し勤務時間を増やしてほしい」といわれても、最大50万円がいきなり自分に支給されるわけではないということを思い出してください。
 

収入が増えるとできること

労働者側からすると、年収の壁を壊すことに何のメリットもないのかというとそうでもありません。家計の選択肢が増えるという意味で、「妻(夫)が正社員として働く」という対応は非常に効果の高いものであるのは事実です。
 
収入が増えるから社会保険料も増え、税金も増えるという流れで、扶養家族のままの働き方にこだわる方もいますが、収入が同額でも自分の手元に残るお金がみな同じとはかぎりません。なぜ違うかというと、人が利用できる「控除」はさまざまだからです。
 
これから年末調整の時期に向けて、勤務先で「生命保険料控除」や「社会保険料控除」など、会社で年末調整をするための説明がされるかと思います。収入が増えることで、使える控除も多くなります。
 
最近は、老後資金を準備するために個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する方も増えています。収入を増やすことでパート労働者でも自分自身の年金の上乗せを作ることができ、これにより「小規模企業共済等掛金控除」を利用でき、節税にもつながります。年収の壁を壊して収入を増やすことで「できること」が増えるという点は、大きなメリットといえます。
 

それでも扶養のままでいたいと思ったときに

今回の支援パッケージのなかに、興味深い内容が含まれています。それは「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」です。この言葉を聞いただけでは意味は分からないでしょうが、一時的に収入が130万円以上になる事態になったとしても、人手不足による労働時間延長に伴う収入変動である旨を事業主が証明することで、扶養家族と認定されるという内容です。
 
あくまでも「一時的な事情」として、「原則1人に対して連続2回までを上限」という内容ですが、「配偶者手当が加算されている配偶者の給料を減額されたくない!」という事情であれば、この制度を使って働きつつ、扶養のままでいるという選択肢もあります。
 
今回の支援は、3年という一時的なものです。その後の支援内容がどうなるのかは誰にも分かりませんが、今回の扶養認定が連続2回まで、一時的な収入アップになっても「扶養のまま」いられる制度があることは、年末までの働き方で迷っている方は頭の隅に置いておいてください。
 
いずれにせよ、ここまで一気に支援パッケージが公開されるということは、早期の実現がされることで人材不足の解消が求められているということです。
 
ただ、労働者側にとっては直接50万円が受け取れるという制度ではないために、今後どうやって働くのか、人生100年時代に何歳までどんな働き方をするのか、自分を見つめ直し、かつ配偶者や勤務先とも話し合うためのよい機会にしていただきたいものです。
 
(※)ファイナンシャルフィールド 2023年。年収の壁は解消される?
 

出典

厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ

 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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