更新日: 2024.01.05 年収
冬ボーナスの代わりに「寸志」10万円が現金支給されました。これはもう「お小遣い」扱いで税金はかかりませんよね?
しかし、実態は業界によって異なっており、中小企業の35.4%は「ボーナスを支給しない」と回答している調査もあります。実際に、「ボーナスなし」もしくは「寸志のみ」という人も多かったのではないでしょうか。
本記事では、ボーナスではなく「寸志」が支給された場合の課税関係について解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
「寸志」って何?
寸志とは一般的に、「少しの贈り物」を意味します。「寸」は、長さの単位が由来となっており、一寸法師を想像するとその小ささがわかりやすいのではないでしょうか。
「志」は相手を思いやる気持ちを意味しているので、組み合わせると、「一寸(ちょっと)ばかりの気持ちです」と謙譲して使う言葉になります。よって、寸志は高額な金品ではありません。ボーナス時に使用される場合は、「ボーナスといえるほどではないけれども、日頃の労働に感謝して寸志を支給します」といったところでしょう。
「寸志」と「ボーナス」の取り扱いは同じ
「寸志=会社からのお小遣い」というイメージがありますが、どう取り扱われるのでしょうか。「寸志」の意味を知ると、会社から給与とは別に渡されるプレゼントのような感覚になるかもしれません。しかし、税金の取り扱いにおいてはボーナスと同じなので注意しましょう。当然年収に含まれますし、税金と社会保険料がかかります。
寸志10万円にかかる税金と社会保険料
10万円の寸志から天引きされる源泉徴収税額を計算するためには、まず社会保険料の金額から計算しなければなりません。本記事では東京都在住、介護保険第2号被保険者に該当する場合で計算します。
10万円×(健康保険料5.91%+厚生年金保険料9.15%+雇用保険料0.6%)=1万5660円
寸志(ボーナス)にかかる源泉徴収税額は前月の給与に応じて税率が決まります。本記事では前月の給与が30万円(社会保険料控除後)、扶養親族0人の場合で計算してみます。
(10万円-1万5660円)×8.168%=6888円
この場合、10万円の寸志から源泉徴収税額である6888円と社会保険料1万5660円の計2万2548円が天引きされ、手取りは7万7452円になりました。
でも「10万円」ピッタリもらったけど?
税金や社会保険料の取り扱いは、寸志もボーナスも同じです。本記事の例では、寸志10万円であれば2万2548円が天引きされて7万7452円が支給されるはずですが、会社によっては天引きなしでピッタリ10万円支給されるケースもあります。その場合は、次月の給与や年末調整で精算されているのではないかと考えられます。
まとめ
「寸志」と「ボーナス」は単純に名称の違いのみで、税金の取り扱いは同じです。寸志であっても税金と社会保険料がかかるので勘違いしないようにしましょう。もし、天引きなしの金額で支給された場合には、給与や年末調整で精算されているはずです。気になる場合には、会社に確認してみるとよいでしょう。
出典
一般財団法人労務行政研究所 東証プライム上場企業の2023年年末一時金(賞与・ボーナス)の妥結水準調査
大阪シティ信用金庫 中小企業の2023 年冬季ボーナス支給予定
全国健康保険協会 令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
厚生労働省 令和5年度雇用保険料率のご案内
国税庁 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和5年分)
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士