更新日: 2024.01.25 年収
公務員の友人が「3万円」を差額支給で振り込まれたそうです。正直「うらやましい」と思うのですが、何の差額なのでしょうか?
執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
公務員の差額支給とは?
「差額支給」とは、国家公務員の給与水準が民間水準に比べて少ない場合に、年度の4月分からさかのぼって12月頃にまとめて支給することをいいます。
当該年度4月分の民間給与と国家公務員給与を調査して比較し、例年8月頃に勧告が公表されます。調査の結果、民間給与の水準より低ければ差額支給され、高ければ差額が回収されます。
2023年度は平均月例給が0.96%アップし、平均3869円のベースアップとなりました。2020年度と2021年度は民間給与の水準よりも高かったとして、期末手当(冬季ボーナス)から回収されました。
2023年度は月例給だけでなく、初任給も見直されました。そのほか、在宅勤務を取り入れた柔軟な働き方に対応できるよう、在宅勤務手当が新設されるなど新しい動きもありました。月例給与の見直しによって、時間外手当、休日手当、地域手当、期末手当、勤勉手当などの額も変動します。
民間との差額を調査する方法を解説
民間給与水準との差額の調査はどのようにして行われるのでしょうか。調査対象の民間企業は、企業規模50人以上の約5万8800事業所の中から無作為に約1万1900事業所を抽出して行われます。調査では緻密に比較できるよう「ラスパイレス比較」という方法が用いられています(図表1)。
比較対象になる公務員は、国家公務員59万人のうち、一般職の中でも給与法適用職員である28万2000人です。給与決定の要因になりうる役職、勤務地域、学歴、年齢別に細かく分類し、それらに該当する階層の国家公務員数をかけ合わせて給与の総支払額を算出します。
つまり国家公務員の年齢や階層が同様の人数構成である民間企業があったときに、給与の総支払額と平均額が民間給与と比べてどうかを比較します。
図表1
人事院 本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み(令和5年8月)より抜粋
8月の勧告から3ヶ月以上かけて給与が決定する
当該年度の4月分給与を調査し、例年8月頃に人事院より調査結果などをもとに内閣と国会に対し人事院勧告が行われます。内閣で勧告の取り扱いを決定して、10月頃に国会へ給与法改正案を提出します。そして国会で改正給与法が成立した後、11月以降に施行されます。
国家公務員は労働基本権の制約を受けており、労働条件の改善のためのストライキなどができません。民間企業と国家公務員の給与格差をなくすため、毎年1度は人事院勧告を行うことが法律で定められています。
まとめ
国家公務員はストライキなどで労働環境の改善を求めることができません。その代わり、人事院が毎年民間給与水準を調査し、人事院勧告によって給与を調整します。
民間企業では前年度中に翌年度のベースアップなどが発表されることがほとんどですが、国家公務員は民間給与のベースアップなどの結果を受けてまず調査します。調査結果をまとめた後に内閣から給与法改正案を提出し、国会で法案成立後の支給となるため、早くて11月、例年12月頃に4月分からさかのぼって、まとめての支給となります。
出典
人事院 本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み(令和5年8月)
執筆者:古澤綾
FP2級