更新日: 2024.05.19 年収

社会人3年目ですが、新卒の「初任給」が私より高いと聞いて驚きました。物価高で引き上げたそうですが、正直「不公平」に感じてしまいます…

社会人3年目ですが、新卒の「初任給」が私より高いと聞いて驚きました。物価高で引き上げたそうですが、正直「不公平」に感じてしまいます…
社会人3年目ともなれば、会社の若手社員としてさらなる活躍が期待される時期でしょう。しかし、仕事へのやりがいだけではモチベーションを保(たも)てません。
 
2024年は新入社員の初任給が大幅アップし、自分の給料よりも高いと聞いて「なぜ実績もない新人が自分より給料が高いのか」「最近入社したばかりの自分たちにはあまりにも不公平」と感じる人もいるでしょう。
 
本記事では、新卒社員と若手社員の「給料逆転現象」について解説します。上がらない給料に不満を抱く若手社員の人や給料の取り扱いに悩む人事担当の人は、ぜひ参考にしてください。

初任給引き上げの背景

初任給引き上げの背景には、若手人材の確保が挙げられます。少子高齢化に伴い、次代を担う若手職員の数は減っています。近年は転職で会社を離れる人も多く「優秀な人材を会社にとどめること」ができないと悩んでいる企業が多いようです。
 
一般財団労務行政研究所の調査によれば、東証プライム上場企業157社のうち、70.7%の企業が2023年度に全学歴で初任給を引き上げました(図表1)。2022年度は41.8%、2021年度は17.8%であり、多くの企業が初任給引き上げに踏み切っているといえます。
 
図表1

図表1

一般財団労務行政研究所 2023 年度 新入社員の初任給調査 をもとに筆者作成
 
また、ファッション企業の「TOKYO BASE」では、2024年3月に初任給を一律40万円に引き上げると発表しました。人材確保のために、今後も多くの企業が初任給の引き上げを実施すると考えられます。
 

既存社員からは不満も

初任給の引き上げで、これから社会に出る学生は期待が膨らむ一方でしょう。しかし、すでに2~3年の経験を積んでいる若手社員からは不満も噴出しています。SNSでは「ベテランの不満と離職を招く悪手」「激務をこなしている5~9年目あたりが新入社員と給与が変わらないことに憤慨しごそっと辞めている」といった意見が散見されました。
 
特に、昨年や一昨年は新型コロナウイルスのまん延により多くの企業が賞与カットなどを行わざるを得ず、初任給を引き上げるのは厳しい状況でした。そうした年に就職した人にとっては「仕事を頑張っても給料が上がらないなんて」「正直やってられない」といった声が出てくるのも当然でしょう。
 
新卒社員と若手社員の「給料逆転現象」は、結果的に社員のモチベーション低下や人材流出のリスクが高まります。企業は給与体系の見直しが必須でしょう。
 

先輩・後輩の「給与逆転現象」はどう対策する?

新卒社員と若手社員の給与のねじれは、企業は既存社員の給料額アップで対策する必要があります。前記のTOKYO BASEの初任給アップに関するプレスリリースでは、新卒者の給料上昇に加えて「全従業員を対象としたベースアップ」を実施するとも公表しています。
 
TOKYO BASEでは2024年2月期から全社員の給料が40万円以上になるよう給料を調整。新卒社員と同じように大幅な給与アップで不公平感をなくしたのです。
 
労働組合の中央組織である連合の集計でも、4月4日公表の春闘回答速報では、組合の見込み賃上げ率は5.24%と前年の3.70%に比べて大幅に上昇しています。既存社員の給料額アップにも十分期待が持てるといえます。
 
また、企業としては思い切って職種ごとに給料を設定するのもよいでしょう。いわゆる「ジョブ型雇用」への転換です。ただし、職種別に給料を決めることで「これまでに比べて給料が減った」「給料が上がらないことにプレッシャーを感じる」といったデメリットも発生します。全社員の理解を得たうえで給与体系を見直すのが重要です。
 

全社員に「賃上げ」効果の波及を

好調な日経平均株価や利上げなどにより、ついに「賃金アップ」の環境が整いはじめました。今年の新卒社員の給料額を聞いて、がくぜんとしてしまう若手社員も多くいるでしょう。すでに会社で活躍している若手社員のモチベーション維持や転職を防ぐには、新卒社員と同等かそれ以上の給料アップが必須です。
 
若手社員の人も、数ヶ月後にはもらえる給料が増えているかもしれません。もし「賃金据え置き」や「新卒社員との給与逆転が解消されない」といったように状況が好転しないのであれば、転職も視野に入れる必要があるでしょう。
 

出典

一般財団労務行政研究所 2023 年度 新入社員の初任給調査
日本労働組合総連合会 2024 春季生活闘争の第3回回答集計
 
執筆者:石上ユウキ
FP2級、AFP

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