更新日: 2024.07.18 年収
友人が「博士号」を取得して研究職の仕事をしていますが年収は300万円だそうです。大学院まで進学したのに、なぜこの収入なのでしょうか?
しかし実際には、博士号を持っていても給与所得者の平均年収に満たない可能性があります。
本記事では、博士号の概要について解説しつつ、博士課程取得者の年収や課題についてご紹介します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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博士号とは
「博士号」とは、大学院の「博士課程」に3年以上在籍して、所定単位の修得や試験合格などにより認められる学位です。「課程博士」と呼ばれることもあります。
混同されやすいものに「修士号」があります。修士号は大学院で2年以上「修士課程(博士前期課程)」に在籍し、所定単位修得や試験合格などを経た人に与えられる学位です。つまり修士号取得者が博士号も得られるわけで、博士号取得には一般的に合計5年ほど(優秀な学生は3年ほど)大学院に在籍する必要があります。
なおこれは「区分制博士課程」の説明であり、博士課程が前期・後期に分かれていない「5年一貫制博士課程」もあります。ただし「区分制博士課程」の方が圧倒的に多いです。
別の点として、博士号には「論文博士」もありますが、こちらは提出した博士論文が審査に合格した場合に与えられるものであり、博士課程に在籍する必要はありません。
博士号を取得した方の年収
大学院で何年もの間学業に取り組んだ博士号取得者であれば、高年収を得られるように思えるかもしれません。しかし今回のケースのように、研究職についていて年収300万円しか得られないケースもあるようです。
文部科学省が博士課程修了者を対象に行った2022年の調査によると、おもな雇用先での年間所得は表1の通りです。
表1
年間所得 | 全体に対する割合(%) |
---|---|
収入なし | 1.5 |
50万円未満 | 3.8 |
50万円~100万円未満 | 4.1 |
100万円~200万円未満 | 7.8 |
200万円~300万円未満 | 9.3 |
300万円~400万円未満 | 13.5 |
400万円~500万円未満 | 14.0 |
500万円~600万円未満 | 11.8 |
600万円~700万円未満 | 7.0 |
700万円~800万円未満 | 4.8 |
800万円~900万円未満 | 3.9 |
900万円~1000万円未満 | 3.3 |
1000万円~1200万円未満 | 5.1 |
1200万円~1500万円未満 | 5.1 |
1500万以上 | 4.8 |
※文部科学省「博士人材追跡調査-第4次報告書-」を基に筆者作成
「400万円〜500万円未満」と回答した割合がもっとも多い14%で、「300万円〜400万円未満」が13.5%、「500万円〜600万円未満」が11.8%と続いています。500万円未満の年間所得を得ている人の割合は約5割です。
国税庁によると、令和4年における平均給与は458万円です。つまり過半数の博士号取得者は、平均給与と大差ないか、それよりも低い給与を得ている可能性があります。
博士課程へ進学する理由
前述の調査によると、博士課程に進学する学生の進学理由でもっとも多かった回答は「研究することに興味・関心があった(67.7%)」でした。
2位は「自分自身の能力や技能を高めることに関心があった(58.0%)」、3位は「研究したい課題や問題意識があった(53.9%)」、4位は「大学教員や研究者になるために必須だった(38.5%)」です。
1〜4位までは、研究意欲や特定の職への就職意欲に関する動機がランクインしています。一方、収入にひもづく回答としては「博士号を取れば、良い仕事や良い収入が期待できるから」という回答が24.6%で5位でした。
約4人に1人は、博士号の修得が所得のアドバンテージに結びつくと考えていたようです。
博士課程への課題
データが示すように、博士課程を修了して就職しても、必ずしも高給取りになれるとは限りません。安定した雇用や収入が得られない場合、博士課程へ挑戦する学生の数が下がっていってしまう可能性もあります。
国内の博士課程入学者数は、2003年度には1万8232人もいましたが、2019年度には1万4976人しかいませんでした。
減少理由として、「博士課程在籍中の経済支援不足」「修了者のキャリアパスの不透明さ」「不安定な雇用環境」などが挙げられています。
博士号取得者でも高所得者とは限らない
博士号を取得しても年収が高いとは限りません。むしろボリュームゾーンは年収300〜600万円であり、日本の平均給与所得と同等、もしくはそれ以下である可能性があります。
経済的なアドバンテージを求めて博士課程に進むとしても、実際に安定した収入に結びつくかは不透明なようです。
出典
文部科学省 科学技術・学術政策研究所ライブラリ 博士人材追跡調査-第4次報告書-
国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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