「給与デジタル払い」が一部でスタート。企業や従業員にとって、どのような「メリット」があるの?
配信日: 2024.12.11
そこで今回は、給与デジタル払いが導入された背景や導入する際の注意点を解説します。企業側と従業員側でのメリット・デメリットもご紹介しているため、参考にしてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
給与デジタル払いが導入された背景
給与デジタル払いが導入された背景には、キャッシュレス決済の利用率の増加が関係しているようです。経済産業省が公表している過去5年間のキャッシュレス決済比率の推移は、表1の通りです。
表1
年代 | 割合 |
---|---|
2019年 | 26.8% |
2020年 | 29.7% |
2021年 | 32.5% |
2022年 | 36.0% |
2023年 | 39.3% |
※経済産業省「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」を基に筆者作成
表1から毎年キャッシュレス決済の割合が増えていることが分かります。また、キャッシュレス決済の内訳を見ると、クレジットカード支払いが最も多く、次いでコード決済、電子マネーとなっています。
このような時代の流れと今後さらなるキャッシュレス化が進む可能性も踏まえて、給与デジタル払いが導入されたと考えられます。
給与デジタル払いを導入する際の注意点
給与デジタル払いを導入する際は、企業側と従業員側の双方による労使協定の締結を行う必要があります。企業側の一存や従業員側の希望だけで自由に選択できるわけではない点に注意しましょう。仮に企業側が従業員の同意なしに、給与の支払い方法をデジタル払いに変更した場合、労働基準法に違反し罰則の対象となる可能性があります。
また、給与デジタル払いを導入する場合は、厚生労働省が指定した資金移動業者のみしか利用できない点も認識しておきましょう。2024年11月30日時点で80社の業者が登録されています。例えば、PayPay株式会社や楽天Edy株式会社、LINE Pay株式会社などが登録されています。
給与デジタル払いのメリット・デメリット
給与デジタル払いが導入されることで考えられる企業側と従業員のメリット・デメリットを解説します。
企業側のメリット・デメリット
企業側が給与デジタル払いを導入するメリットとしては、これまでの銀行口座からの振込手数料よりも安くなったり、多様な人材の確保がしやすくなったりする可能性がある点だといわれています。特に、銀行口座開設のハードルが高い外国人労働者の雇用にもつながる可能性があるため、人材不足などの問題を解決できるかもしれません。
一方で給与支払い方法の選択肢が増えることで、業務量の増加や管理コストの上昇が懸念されます。銀行口座振り込みを希望する従業員とデジタル払いを希望する従業員に分かれるため、その分管理する項目が増えるでしょう。また、給料の一部だけをデジタル払いにする場合は、一人で2回の振り込み手続きが必要になります。
メリットもありますが、デメリットに対応できる十分な人材やシステムが構築されていることも重要なポイントになりそうです。
従業員側のメリット・デメリット
従業員側のメリットとしては、毎回現金チャージをする必要がなくなったり、お金の管理がしやすくなったりする点だとされています。
普段からスマホアプリ決済などを頻繁に利用する方は、チャージする手間がなくなり、利便性を感じやすい可能性があるでしょう。銀行口座振り込みとデジタル払いの併用が可能な場合もあるため、生活費用や貯蓄用などの口座管理もしやすくなります。
しかし、自分が希望する資金移動業者が利用できなかったり、上限が100万円以下とされていたりする点はデメリットとなる可能性があります。
さらに、スマートフォンの紛失やアプリの不具合などによって、セキュリティ上のリスクがある点にも注意しなければいけません。詐欺や不正出金などの被害に遭わないようなセキュリティ対策が必要となるでしょう。
給与デジタル払いにより、企業側は手数料の軽減や雇用創出、従業員側はスマホアプリ決済の利便性向上やお金の管理がしやすくなる
給与デジタル払いが導入されると、企業側では銀行振り込みよりも手数料が安くなったり、多様な人材の雇用を行いやすくなったりする可能性があるでしょう。従業員側としても、毎回の現金チャージの手間がなくなり、お金の管理もしやすくなる可能性があります。
しかし、給与デジタル払いはメリットだけではありません。企業側と従業員側の双方にかかわるデメリットも考慮したうえで、企業側は導入するかどうか、従業員側はどのように利用するかを検討することが重要です。
出典
経済産業省 2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー