更新日: 2020.04.06 遺言書

民法改正で自筆証書遺言が作成しやすくなったと言われているが本当なの?

民法改正で自筆証書遺言が作成しやすくなったと言われているが本当なの?
約40年ぶりに民法が改正され、自筆証書遺言の作成がしやすくなったと言われていますが、
本当にそうでしょうか?
 
仕事柄、遺言の相談を受けることが多いのですが、自筆証書遺言はトラブルが多いと感じています。また、不備も多く、それが今回の民法改正でかなり解消されると言われていますが、どうなのでしょう。
 
気になる点をまとめました。
 
一橋香織

執筆者:一橋香織(ひとつばし かおり)

相続診断士事務所

笑顔相続サロン代表、全国相続診断士会会長、東京相続診断士会会長
アフィリエイティッドファイナンシャルプランナー【AFP】、2級ファイナンシャルプランニング技能士【国家資格】 、相続診断士、終活カウンセラー上級、家族信託コーディネーター
外資系金融機関を経てFPに転身。頼れるマネードクターとしてこれまで2000件以上の 相続・お金の悩みを解決した実績を持つ。講演・メディア出演(朝日テレビ「たけしのTVタックル」TBSテレビ「Nスタ」「ビビット」など)多数。
日本初のシステムノート型システムダイアリー㈱の『エンディングノート』監修。著書「家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい」PHP出版はアマゾン相続部門1位・丸善本店ビジネス部門で1位を獲得する。近著『終活・相続の便利帳』枻出版社。笑顔相続を普及するため専門家を育成する『笑顔相続塾』を主宰。連絡先:https://egao-souzoku.com/

代筆可、パソコン可とは言うものの

今回の改正(平成31年1月13日施行、自筆証書遺言の要件緩和のみ)で、財産目録部分はパソコンで作成、あるいは代筆も可能となります。
 
財産に不動産が多い方は、全文自筆で正確に書くのはなかなか大変です。財産目録をパソコンで作成、あるいは誰かに代筆してもらえるなら助かると考える方も多いでしょう。
 
ただ、ご自身がパソコンは苦手で財産目録が作成できない場合、誰に代わりに作成してもらいますか?
 
ご家族でしょうか?その場合、財産の内容を全て知られてしまいます。
 
もちろん、それが何の問題もないという方はいいのですが、内容を知って、「この財産は誰に渡すつもりなのか?」「私はこの財産が欲しい」などと、財産の分割割合について手伝った家族から注文がついたり、事前に財産の内容を知ることによって、もめ事の種になるかもしれません。
 
家族に頼んだ場合には上記のような問題が想定されますが、専門家に依頼した場合は作成料がかかることになると思います。どうせ、中途半端に報酬がかかるのなら、最初から公正証書遺言にしておけばよかった、ということになるかもしれません。
 

自筆証書遺言の保管制度の落とし穴

この度の改正で、自筆証書遺言を法務局で保管するという制度も始まります(こちらの制度は平成32年7月10日施行)。
 
自筆証書遺言は紛失や改ざん・隠匿などの問題が起こる可能性があるほか、自筆証書遺言を発見した場合には、家庭裁判所での検認を必要とします。それが、法務局で保管されることにより、紛失の心配や改ざん・隠匿の問題も解消されますし、検認も不要となります。
 
ここまでは、非常にいい点ばかりが目立ちますが、遺言者が必ず出頭して保管を申請しなければならない点が気になります。
簡単に言ってしまうと、第三者に委任も委託もできないため、入院中や身体が不自由だったとしても自ら法務局に出向く必要があるのです。
 
公正証書遺言であれば、身体が不自由であっても、たとえ入院中でも、公証人が出張をして作成可能です。しかし、何があっても遺言者が出向くということは、高齢になるとなかなかハードルが高いケースも出てくると思います。
 

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いずれもメリット・デメリットがあり、自分に合った方法の選択を

このような説明をすると何が何でも公正証書遺言を勧めていると思う人もいるでしょうけれど、どのような制度にもメリットとデメリットがあります。
 
考え方・立場・状況によってもメリット・デメリットは違ってきます。要は、自分にとって何が正しいか、どうするのが正解なのかをきちんと把握して、選択すればいいのではないかということです。
 
制度というものは使い方次第だと思います。メリット・デメリットを理解しなければ選ぶことも難しいので、しっかりと制度の内容を精査してご自身にとってのベストな遺言方式を選んでください。
 
出典
法務省 法務局における遺言書の保管等に関する法律について
法務省 自筆証書遺言に関する見直し
 
執筆者:一橋香織(ひとつばし かおり)
相続診断士事務所
 

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