最終更新日:2019.02.12 公開日:2019.02.06
相続

民法改正で遺言書を書く人は増えるのかどうか

遺言書の種類

遺言書には大きく分けて普通方式と特別方式がありますが、実際に作成されている遺言書はほとんどが普通方式です。さらに普通方式のなかでも、一般的には自筆証書遺言、公正証書遺言が多く作成されています。
 
(1)自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が全文を自筆で作成します。
 
本人が単独で作成できるため、費用もほとんどかからず、気軽に作成できるメリットがあります。その反面、作成方法や訂正方法に不備があると無効になります。また、偽造、変造、紛失などの恐れもあります。
 
なお、遺言書の執行にあたっては家庭裁判所の検認の手続きが必要になります。検認とは、遺言書の偽造や変造を防止するために家庭裁判所が行う、証拠保全手続きのことです。遺言書自体の法的な有効性を確認するものではありません。
 
(2)公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場で作成する遺言書のことです。
 
作成にあたっては、遺言者が証人2名の立ち会いのもと口述した内容を公証人が筆記します。型式の不備で無効とされることもなく、原本は公証役場に保管されるので、偽造・変造や紛失の心配もありません。裁判所での検認の必要もありません。
 

日本では遺言書の作成件数は少ない。

わが国の2017年の死亡者数は134万397人でした(※1)。
 
それに対し、同年の家庭裁判所における遺言書の検認件数は1万7394件。自筆証書遺言の検認は被相続人が亡くなってから比較的早期に行われるため、検認の件数は自筆証書遺言の件数に近いと考えられます。ここから、死亡者数に対する自筆証書遺言の数は概ね1.3%だったことになります(※2)。
 
また、同年の公正証書遺言の作成件数は11万191件でした(※3)。遺言書を作成した年が死亡した年と同時とは限らないため、単純に割合を計算することはできませんが、明らかに遺言書の作成件数の割合が低いことが分かります。
 
特に、前述の通り自筆証書遺言の作成件数は少ないのですが、これは、せっかく遺言書を作成しても形式や内容の不備があると無効になってしまうこと、また、自筆による作成行為そのものが煩雑で、特に高齢の遺言者にとっては負担が大きいからと考えられます。
 
今後、死亡者数の増加にともない増加が予測される相続トラブルを防止するためには、遺言書の重要性はますます高まります。そこで、より多くの人に遺言書を作成してもらうために、今回、自筆証書遺言を、より作成しやすい方式に変更したのです。
 

自筆証書遺言の方式を緩和する改正の内容

今回の改正では、自筆証書遺言作成の方式が緩和されました。
 
改正前は全文を自筆で作成する必要がありましたが、改正により、財産目録についてはパソコンで作成することも認められることになりました。
 
また、財産目録の代わりに通帳のコピーや不動産登記事項証明書を添付することも可能になりました。これらの添付書類には必ず遺言者の署名押印をしなければならないので、偽造も防止することができます。
 
自筆証書遺言書を作成したい人にとっては、かなりの負担軽減になります。さらに2020年7月10日からは、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度も施行されます。これにより、今まで心配されていた偽造・変造や紛失の心配もなくなり、さらに家庭裁判所の検認手続きも不要となります。
 

財産が少なくても相続トラブルはある

もともと自筆証書遺言は、公正証書遺言に比べ費用もかからず手軽に作成できるメリットがありましたが、今回の改正により、さらに作成時の簡便化や保管に関する安心感も加わることになりました。
 
それでも、なかには「うちは財産も少ないので遺言書なんか書いても仕方がない」という人もいるかも知れません。
 
しかし、相続トラブルにより調停で争われた遺産の額は、1000万円以下が32.2%、1000万超5000万円以下が43.2%です。全体の4分の3以上が5000万円以下の財産での争いですから、遺産額が少ないからトラブルにならないということではありません(※4)。
 
相続トラブルの防止と残された家族の円満な将来のために、今後、自筆証書遺言を含めた遺言を作成することを検討してみてはいかがでしょうか。
 
出典
(※1)厚生労働省「平成29年人口動態統計(確定数)の概況」
(※2)裁判所「平成29年度司法統計・家事事件編」
(※3)日本公証人連合会「平成29年の遺言公正証書作成件数について」2018年3月12日
(※4)裁判所「平成28年度司法統計・家事事件編」
 
執筆者:橋本秋人(はしもと あきと)
FP、不動産コンサルタント
 
※2019/02/12 内容に一部誤りがございましたので修正させていただきました
 
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橋本秋人

執筆者:橋本秋人(はしもと あきと)

FP、不動産コンサルタント

早稲田大学商学部卒業後、大手住宅メーカーに入社。30年以上顧客の相続対策や不動産活用を担当。
 
現在はFP、不動産コンサルタントとして相談、実行支援、講師、執筆等を行っている。平成30年度日本FP協会広報センタースタッフ、メダリストクラブFP技能士受験講座講師、NPO法人ら・し・さ理事、埼玉県定期借地借家権推進機構理事

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