更新日: 2021.03.24 その他相続
相続の基本 「相続放棄」、「相続欠格」、「相続廃除」
つまり、十分に準備をしていないケースや相続に関する正しい知識がない場合も多くあります。身近に信頼して相談できる方や税理士などの専門家がいる場合には、是非とも活用すべきでしょう。
ここでは、一見すると似たような用語に見える「相続放棄」、「相続欠格」、「相続廃除」という相続に関する3つの用語の違いを中心に確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
相続放棄とは?
相続放棄とは、各相続人が「自らの意思」によって、全ての財産の相続を承継しないことをいいます。つまり、本来は被相続人の財産を相続できるはずの相続人が、自分の意思で「私は一切の相続を放棄します」と宣言することです。
相続放棄をする場合には、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行います。そして、申し立てが受理されると、その方は最初から相続人でなかったものと見なされます。
また、全ての財産には現預金、有価証券、不動産などのプラス財産だけではなく、被相続人の借金などの負債であるマイナス財産も含まれます。そのため、相続放棄を選択する場合は、プラス財産よりマイナス財産があるようなケースが多いのも事実です。
相続欠格とは?
相続欠格とは、相続人が相続を自らに有利になるように違法行為を行った場合、「自動的に相続人である地位が剥奪される」ことをいいます。
違法行為として例えば、被相続人の生命を奪う行為、遺言書を脅迫により自分に有利となるよう作成させる行為、遺言書を破棄・隠匿する行為などが挙げられます。つまり、違法行為に対して、法律に基づき自動的に相続権を剥奪する制度です。
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相続廃除とは?
相続廃除とは、相続人から虐待や侮辱行為を受けた「被相続人」が、家庭裁判所に申し立てを行うことで相続人から相続権を剥奪することです。つまり、被相続人の意思と申し立てにより、特定の相続人の相続権が剥奪されることになります。なお、相続廃除は遺言によって行うことも可能です。
上記の点から3つの用語の違いは、相続しない、できないという意思決定を誰が行うかが大きなキーポイントとなります。つまり、「自らの意思=相続放棄」、「法律で自動的に=相続欠格」、「被相続人が剥奪=相続廃除」となります。
代襲相続では?
代襲相続とは被相続人が死亡したとき、本来相続人となるはずだった人が既に死亡していた場合などに、その子や孫が代わって相続することをいいます。代襲相続において3つの用語は、その取り扱いが異なる点に注意しましょう。
「相続欠格」と「相続廃除」は、法律や被相続人の意思によって、相続人が相続権を剥奪されることになります。このとき、相続人は本人の意思とは関係ない事情によって相続権が剥奪されることになります。
そのため取り扱いとしては、相続人が死亡した場合と同様に扱われます。つまり、代襲相続が発生した場合には、その相続人の子や孫が代襲相続人となります。
一方で「相続放棄」は、相続人自らの意思によって相続しないことを宣言することになるため、代襲相続は発生しません。最初から、その相続人が存在しなかったものとして取り扱われます。
相続税の計算への影響は?
相続税の計算では、3つの違いによって「法定相続人の数」に影響を及ぼします。「法定相続人の数」が相続税の計算上で使われるのは以下の3つです。
(1)相続税の基礎控除額 3000万円+(600万円×法定相続人の数)
(2)死亡保険金の非課税枠 500万円×法定相続人の数
(3)死亡退職金の非課税枠 500万円×法定相続人の数
上記3つの算式において、前述のとおり、「相続欠格」と「相続廃除」は死亡した場合と同様に扱われるため、「法定相続人の数」にカウントされません。その一方、「相続放棄」の場合は「法定相続人の数」にカウントされます。
つまり、相続人の意思によって基礎控除額や非課税枠の金額などが大きく変動することは、課税の公平性の見地から望ましくないという考えがあります。
まとめ
今回説明した「相続放棄」、「相続欠格」、「相続廃除」の3つの違いは、相続しない、できないという意思決定を誰が行うかという点です。それによって、相続税の計算上についてもそれぞれの違いがあり、税額にも影響を及ぼすことになります。
それぞれのケースでの取り扱いについて、しっかりと確認しておきましょう。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー