更新日: 2021.04.14 その他相続

相続登記義務化迫る。共有としないために何をすべきか。

執筆者 : 宿輪德幸

相続登記義務化迫る。共有としないために何をすべきか。
所有者不明土地により、公共工事や災害復興にも支障が出ていることが大きな問題となっています。最大の原因である相続登記の不備を無くすため、政府は相続登記を義務とする関連法の改正案を2021年3月5日の閣議で決定しました。
 
遺産を有効活用するためには、どうすればいいのでしょうか。

宿輪德幸

執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)

CFP(R)認定者、行政書士

宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
また、離れて住む親御さんの認知症対策、相続対策をご心配の方のために、Web会議室を設置。
資料を画面共有しながら納得がいくまでの面談で、納得のGOALを目指します。
地域の皆様のかかりつけ法律家を目指し奮闘中!!
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相続登記で共有は避けたい

共有不動産は、所有者単独の不動産と比べて処分が難しい財産です。共有不動産を売るとき、共有者全員の合意がなければ、合意しない人の持ち分は売却できません。購入しても、赤の他人と共有になるような条件では、通常の売買は極めて困難です。
 
単独所有であれば、当然1人の判断で処分ができますので、換価などがしやすく財産としての有効活用が可能となります。しかし、不動産以外の財産が少ない場合には、不動産を取得した相続人と他相続人の取得財産が不公平になってしまいます。
 

代償分割

不動産を相続人の1人が取得し、他の相続人に遺産分割の割合に見合う財産を自分の財産で支払うことにより不動産は単独所有となりますので、上記のような状況は発生しません。
 
ただし、不動産を取得する相続人が、代償として支払うだけの財産を持っていることが条件になります。
 

例1)

父の遺産:不動産のみ(時価1億円、相続税評価額8000万円)
相続人:長男・長女
法定相続分(2分の1ずつ)で分割する。長男が不動産を取得し、長女に代償金5000万円を支払う。
   
注意点)
時価額1億円の2分の1に当たる5000万円を支払う。
相続税課税評価額は8000万円で、その2分の1は4000万円。
相続税については、それぞれ4000万円ずつ取得したものとして課税される。

 

例2)

上記の例で、代償として長男が所有する不動産を長女に交付した場合
 
注意点)
代償分割の債務の履行のための資産の移転となり、4000万円でその不動産を譲渡したことになります。そのため、譲渡所得に対して譲渡所得税が発生します。
 
5年を超えて所有していた不動産で取得費が1000万円だった場合、
長期譲渡所得=4000万円-1000万円=3000万円
所得税+住民税=3000万円×20.315%=609万4500円

 
不動産交付の場合には、代償金を準備する必要はありませんが、譲渡所得に対する納税資金を準備しなければなりません。長女は、4000万円で不動産を取得したことになります。
 

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換価分割

不動産は、所有するだけでも固定資産税などが掛かりますので、活用できなければ負担になってしまいます。遺産の不動産を使いたい相続人がいない場合には、お金に換えて分割することも選択肢になります。
 
注意点)
共同相続人が相続した不動産を未分割(共有)のまま売却することになるので、その譲渡所得は各相続人に発生します。また、売却にあたっては、共同相続人全員の協力が必要です。
 

民事信託で換価分割

換価分割では共有状態で売却しますので、前述したように意思決定など難しいことがあります。例えば相続人が高齢である場合など、万が一、売却できる前に相続人の1人が認知症で意思能力がなくなってしまうと、売却ができなくなります。
 
不動産を信託財産として、売却することを目的に信託を組成することも選択肢の1つです。売却の意思決定は、受託者が単独でできますので、いい条件があればスムーズに売却が可能です。不動産は急いで売ろうとすると、安くなってしまうこともあります。適正な価格で売却するためには、ある程度の期間がかかっても大丈夫なように準備しておくと安心です。
 

※筆者作成
 
また、売却ではなく、賃貸経営として収益を受益者が受け取るということも可能です。
 
夫婦などで、税金対策などのために一定期間の共有登記をするということはありますが、不動産の有効活用のためには、単独所有とするのが基本です。安易な法定相続分による相続登記は、問題の先送りでしかありません。
 
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士

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