更新日: 2021.04.21 遺言書

自筆証書遺言のトラブル、どうやって防ぐ?

自筆証書遺言のトラブル、どうやって防ぐ?
遺言書は、財産を持つ本人の意思を死後明確にするほぼ唯一の方法です。特に自筆証書遺言の場合、本人が思い立ったらすぐ書けるという手軽さがある反面、死後に相続人に見つけてもらえないなどといったデメリットもあります。
 
主なデメリットを解消できるのが「自筆証書遺言書保管制度」です。
波多間純子

執筆者:波多間純子(はだまじゅんこ)

㈱bloom代表。ファイナンシャル・プランナー(CFP(R)),キャリアコンサルタント
 
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なぜ遺言書が必要か

そもそも、亡くなった本人が死後、自分の意思を表明することはできません。財産の分配も同じです。そこで、有効なのが「遺言書」。生前に死後の財産の処分方法を書くことで、最後の意思表示ができます。
 
遺言書は、被相続人本人の死亡と同時に効力が発生する法律行為です。遺言書により、相続財産を被相続人本人の自由に処分できます(ただし、法定相続人等に財産の一定割合を保証する遺留分という制度があります)。
 
そして、自筆証書遺言とはその名のとおり「自筆で書く遺言書」です。自筆証書遺言は紙とペンがあれば書くことができ、自分だけで完結することができる簡便さや自由度が高いことがメリットですが、一方でその遺言が死後実行されるためには下記のような点をクリアしないといけません。
 

(1)遺言書の管理
(2)家庭裁判所による検認
(3)内容に不備がないこと

 

「自筆証書遺言保管制度」とは

「自筆証書遺言保管制度」とは、法務局が遺言書を保管する制度で、令和2年7月からスタートしました。被相続人が亡くなった後は、法務局から相続人に遺言書が保管されていることを通知してくれます。
 
自筆証書遺言保管制度を利用するための具体的な流れは、以下のとおりです。
 
<申請手続き>
被相続人は自筆証書遺言を作成した後、住所地や本籍地の法務局(遺言書保管所)に申請をします。申請後は保管証を受け取り手続きは終わりです。その際に申請手数料3900円を払います。
 
<存命中>
被相続人は、遺言書の閲覧を請求することで、保管している遺言書の内容をいつでも確認できます。また、所定の手続きを踏むことで、保管している遺言書を撤回もできます。
 
<死後>
本人死後は、代表の相続人が法務局に遺言書が預けられていることを確認後、遺言書の内容を閲覧できます。代表の相続人が遺言書を閲覧したら、法務局の遺言保管官は他の相続人等に対し、遺言書を保管している旨を通知します。
 
このように保管制度を利用することによって、(1)の相続人に発見されないリスクや、遺言書の内容を改ざんされるリスクを回避することができ、(2)の家庭裁判所による検認の手続きも不要です。
 
遺言書は、被相続人本人が公証人役場に出向き口述で遺言内容を伝え、公証人が筆記して作成する「公正証書遺言」という方法もありますが、自筆証書遺言保管制度は、公正証書遺言制度に比べても費用面や手間の面で優れています。
 

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「自筆証書遺言保管制度」の利用の注意

とはいえ「自筆証書遺言保管制度」は万全ではありません。一番注意しなくてはいけないことが、この制度は遺言書の「内容の有効性」を保証するものではないということです。
 
つまり、遺言書の書き方に不備があったり、内容が民法に抵触したりするなどして、遺言書自体が無効になり、遺言書の内容が実行されない可能性があります。
 
さらに、法務局では遺言書の内容についてアドバイスすることはありませんから、作成する段階で有効な遺言書を書く必要があります。
 

「自筆証書遺言保管制度」はこんな人に向いている

自筆で遺言書を書く場合、内容がシンプルである、以下のような人に向いています。
 
〇比較的手軽に自分の意思を表したい方
〇相続資産が自宅と金融資産だけといった資産の種類が少なめ
〇相続資産の評価額が相続税のかからない範囲

 
こうしたケースであれば、制度利用のメリットが大きいです。
 
反対に、
 
〇資産種類が多く、複雑
〇相続人が多い
〇相続財産が相続税の対象

 
などの場合、遺言書の内容も煩雑になるため、その分書き漏れやミスが生まれやすくなります。こうしたケースでは、作成する段階で専門家に依頼するのが無難です。
 

「自筆証書遺言保管制度」は遺言書作成のハードルが下がる

遺言書は、元気なときは「まだ作成する時期ではない」と感じるかもしれませんが、必要だと思ったときは状況によって作成が難しくなるかもしれません。しかし、遺言書が相続のトラブルを避ける一番有効な手段であることには変わりありません。
 
「自筆証書遺言保管制度」により、遺言書の作成から実行までのハードルが下がったのではないでしょうか。自分の思いを伝えるために遺言書を残ることを検討しましょう。
 
執筆者:波多間純子
㈱bloom代表。ファイナンシャル・プランナー(CFP(R)),キャリアコンサルタント

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