更新日: 2019.01.10 贈与
遺産分割の協議が長引くとデメリットが増える
監修:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
相続税の申告期限は10ヵ月以内
法律上は遺産相続を確定させる期限は定めてはいませんが、相続税の申告は、相続が発生してから10ヵ月以内と決められています。もし遺産相続に関して、どのように分割するかは確定していなくても、とりあえず相続税の申告は済ませる必要があります。期間内に申告を済ませた後で、相続人の合意により分割方法を確定させ、修正申告または更生の請求を行うことになります。
分割の内容が確定しないと次のような不利な条件が課せられますので、出来る限り、期限内に、遺産分割の内容を確定し、それに沿って相続税の申告をすることをお勧めします。具体的に不利な条件とは、(1)配偶者の軽減税額が適用されない、(2)小規模宅地の評価減の特例が適用されない、(3)納税の際に物納が認められない、(4)農地の納税猶予の特例が受けられない、といった4点です。
ケースによっては相続税額が大きく変わることになりますので、注意したいものです。
デメリット(1) 配偶者の軽減税額がなくなる
配偶者については、相続人とともに財産形成を行ってきたとの立場から、子や孫さらに兄弟たちと比較して有利な税額の軽減があります。それは、相続額が法定相続分(通常は2分の1)、もしくは1億6千万円のどちらか高い金額以下の場合には、相続税がかからないという制度です。
仮に4億円の遺産を相続する場合、法定相続分に当たる2億円まで、相続税はかかりません。もし子が2人おり残り2億円を半分ずつ相続すると、子については通常の相続税額が適用され、かなりの相続税を支払うことになります。この制度では子や孫に比べて、配偶者が優遇されていることが理解できます。ただし、相続税額が全額で5千万円に満たない場合は、通常の税額との差はわずかで、あまり影響しないかもしれません。
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デメリット(2) 小規模宅地等の評価減が受けられない
この制度は本来の居住用または事業用の土地について、評価額をそのまま適用して相続税を計算すると多額になり、実際に遺族が利用できなくなるため、一定限度内の土地に対して評価減の特例により、継続使用ができるように優遇する制度です。このため、相続する土地が330㎡以下の居住用の宅地であれば、実際の評価額の20%分の評価で相続税が計算される仕組みです。
この課税率であれば、子や孫が土地を売却せずに相続し継続使用が、十分可能になります。
事業用の土地に関しても、宅地に準じて特例があります。これらの評価減の特例が受けられるかどうかは、相続する遺産の中に土地が含まれているかで大きく異なります。もし親の土地の相続で、子ども同士で揉め結論が出るのが遅れると、この特例が適用されませんので、とくに親の宅地を相続する際には注意が必要になります。
デメリット(3) 納税時に物納が出来なくなる
相続税を納める際に、一定の条件を満たしていれば、現金でなく、不動産や有価証券で物納することも可能です。実際に現金・預貯金はごくわずかで、土地などの不動産を中心に相続をした場合、相続した不動産の一部を物納することで、相続税の支払いに充当することができます。
しかし、期限内に分割が確定しないと物納はできなくなり、現金で相続税を支払う必要があります。主たる相続財産が不動産となると、現金・預貯金が少ない場合は、非常に大変です。不動産は思った通りの金額で、すぐに売却出来ませんので、物納で相続税を支払うと考えている場合は、期限内に分割協議を終える必要があります。
デメリット(4) 農地の納税猶予が受けられない
農業の用に供されていた農地を相続する場合、継続して農業を継続するという条件を満たしていれば、相続税の納入時期が猶予される制度があります。相続財産が広大な農地だけとなれば、農地の売却などが場合によって必要になるため、農地の減少や農産物の生産減につながりかねません。
そのため、農業振興の目的もあり、この制度が設けられていますが、分割協議が確定しないと、この特例を受けることが出来なくなってしまいます。
分割協議の遅れによる納税申告
相続税の申告期限に間に合わない場合、取り敢えず民法で規定する取得財産と承認債務を計算し、相続税の申告と納税をします。その後に分割協議をして相続額を正式に決めた後に、改めて納税額が確定します。
もし最初の申告額よりも、実際の相続税納付額が多くなる場合は「修正申告書」を提出し、追加の金額を納めます。逆に最初の申告額よりも納付額が少ない場合は「更生の手続き」をすることで、最初に支払った額との差額を返還してもらいます。どちらにせよ手間もかかりますし、不利な条件も加わります。期限内に遺産分割の話は決着させるにこしたことはありません。
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職