更新日: 2021.05.11 相続

葬儀費用、誰の負担になる?

葬儀費用、誰の負担になる?
相続が発生した際に、真っ先に執り行わなければならないことの1つとして、葬儀があります。葬儀を行ったらその費用が発生しますが、それは誰の負担となるのでしょうか。故人から相続する財産から支払って良いのでしょうか。法の原則と実務について、確認していきます。
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佐々木達憲

執筆者:

執筆者:佐々木達憲(ささき たつのり)

京都市役所前法律事務所弁護士

相続・事業承継を中心とした企業支援と交通事故が主要対応領域。弁護士としての法律相談への対応だけでなく、個人投資家兼FPとして、特に米国株投資を中心とした資産運用に関するアドバイスもご提供。京都を中心する関西圏に加え、毎月沖縄へも通っており、沖縄特有の案件も数多く手掛けている。

佐々木達憲

執筆者:

執筆者:佐々木達憲(ささき たつのり)

京都市役所前法律事務所弁護士

相続・事業承継を中心とした企業支援と交通事故が主要対応領域。弁護士としての法律相談への対応だけでなく、個人投資家兼FPとして、特に米国株投資を中心とした資産運用に関するアドバイスもご提供。京都を中心する関西圏に加え、毎月沖縄へも通っており、沖縄特有の案件も数多く手掛けている。

実は明確な決まりはない、しかし裁判所の実務はほぼ確立している

意外に思われるかもしれませんが、実は葬儀費用の負担者について、法令で明確な定めは存在していません。また、裁判所の過去の判例でも、統一見解までは示されていないという現状にあります。
 
もっとも、現実的には葬儀費用の負担者について争いとなった場合、「喪主負担」であるとされることが、最も一般的であるといえます。
 
これはつまり、故人の葬儀費用については喪主が個人的に自分の財産の中から負担をする必要があるもので、故人から受け継いだ遺産の中から支払ってはいけないということです。
 
そのため、葬儀費用を負担した喪主は、その他の相続人に対して、遺産の中から自身が負担した葬儀費用の金額を差し引いた残額を遺産分割の対象とすることを求めても、その他の相続人に拒否された場合には、認められないという結果となります。
 

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あまりに人の世の常識に合わない~法改正をするべき~

(1)世の中の一般常識的感覚と裁判所のズレ

葬儀費用が喪主の個人負担であり、相続財産から差し引いてはならないというのは、世の中の人の常識的観点からはかけ離れているように思います。実際に、筆者が弁護士として遺産分割の仕事に関わっていると、この点が問題となり紛争の原因となっているケースは多々あります。
 
良かれと思って葬儀費用を立て替えたつもりでいたのに、その金額を相続財産から差し引いての遺産分割は認められないということになり、「そんなのはおかしい」という不満を述べる方が、非常に多いのです。
 

(2)立法府と裁判所のズレ

実は、法律を定めている立法府の見解としては、葬儀費用を相続財産から捻出することを想定しているのではないかと思われる動きもあります。令和元年7月1日からの法改正により、相続時の預貯金の仮払いというものが認められることになりました。
 
遺産分割がまだ成立していなかったとしても、法定の相続人が一定の金額まで金融機関から被相続人名義の預金を引き出しできる、という法改正なのですが、この法改正の趣旨として、葬儀費用等臨時的な支出に対応できるようにすること、というのが挙げられています。
 
ということは、法律を作っている立法府側の見解としては、相続財産の中から葬儀費用の支払いに充てることを認めていることになるのではないでしょうか。しかし、裁判所の見解は変わらず、葬儀費用を相続財産から支出してはならず、喪主の個人負担とする、というものから動きません。
 

(3)法改正が“争族”をなくす

「葬儀費用を出した者負けではないか」と口にする方がいらっしゃるくらい、葬儀費用を相続財産から支出できないという結論に対しては、不満に思う方がいらっしゃいます。そうした不満は、不公平感から生じているものであり、やはり相続人間の紛争を激化する1つの要因となっています。
 
こうした不公平感が生じるのを防ぎ、“争族”の激化を食い止めるためには、世の中の常識的感覚に合わせ、葬儀費用を相続財産から支出することを認めるよう、きちんと法律で定めるべきだと思います。
 

「笑顔相続」の実現

本来であれば、喪主が1人で負担をするのではなく、葬儀費用の負担について相続人間で納得のできる合意を整えておくことが、一番です。そうやって、争うことなく次世代への継承を紡いでいく、「笑顔相続」の実現が普及していくことを、願ってやみません。
 
執筆者:佐々木達憲
京都市役所前法律事務所弁護士