戸籍に関して知っておくべきこと
配信日: 2021.05.21
ここでは、わが国の戸籍制度の変遷と戸籍に関する基礎的な知識について確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
戸籍の改製
わが国の戸籍制度にはこれまでさまざまな変遷がありますが、戸籍を新しい様式や書き方に合わせて書き換えすることを、戸籍の「改製」といいます。それによって使われなくなった古い様式の戸籍を「改製原戸籍」(「かいせいはらこせき」または「かいせいげんこせき」)といいます。
現状で覚えておきたい改製のタイミングは、昭和32年改製と平成6年改製の2回です。昭和32年改製では、それまで「家」を単位とする戸主(こしゅ)中心の戸籍から、現行の夫婦と未婚の子どもを単位とする戸籍に書き換えられました。そして、この昭和32年改製で書き換える前の戸籍を「昭和改製原戸籍」といいます。
平成6年改製では、それまでは和紙などに記載して保管されていた戸籍のコンピューター化(戸籍事務のコンピューター処理)がようやく進められるようになりました。
また、コンピューター化のタイミングで戸籍が縦書きから横書きに変わり、さらに記載方法も文書形式から項目形式に変わることで分かりやすくなりました。この平成6年改製で書き換える前の戸籍を「平成改原戸籍」といいます。
戸籍の種類
戸籍には、現在戸籍、除籍、改製原戸籍の3種類があります。自分がどのような手続きで、どの種類の戸籍を必要とするのかによって、請求する戸籍が違います。まずは、この3種類の戸籍の内容について確認してみましょう。
(1)現在戸籍
現在戸籍は、原則、筆頭者とその配偶者、未婚の子によって構成されます。つまり、その戸籍に在籍している人がいて、現在使用中の戸籍のことをいいます。また、戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)は、自分だけでなく同じ戸籍にある人(家族)の名前や身分事項の異動(出生、結婚、離婚、死亡など)が記載されているものです。
一方、戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)は、戸籍の中から自分の分など一部を抜き出し、その一部だけを証明するために使用されます。
(2)除籍
戸籍に記載されている人が一定の条件に該当した場合、戸籍から除かれることになります。
例えば、筆頭者の夫と離婚した妻や婚姻した子ども、あるいは転籍することなどで、これまでの戸籍から除かれ、別の現在戸籍に移ることになります。つまり、人は生存している限り、いずれかの戸籍に記載されることになります。
そして、戸籍から人が除かれて誰もいなくなって閉鎖された戸籍のことを除籍といいます。
例えば、相続の際に被相続人の死亡を証明するために、その事実が記載された「除籍謄本」が必要となる場合があります。ちなみに、戸籍の保存期間は、除籍となった翌年から150年間と定められています。
(3)改製原戸籍
相続の手続きでは、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」が必要となることがあります。
これによって、被相続人が誰と誰の間にいつ生まれた子であり、兄弟が何人いるのか、いつ誰と結婚したのか、子どもが何人いるのか、いつ亡くなったのかなどが確認できます。つまり、被相続人の養子や隠し子などの存在を含め、全ての相続人を確認するためです。
もちろん、被相続人の年齢や戸籍の変遷などにもよりますが、相続の手続きで一生分の戸籍を入手するためには「昭和改製原戸籍」や「平成改製原戸籍」が必要となります。
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戸籍の入手方法
戸籍謄本の入手は、本籍地のある市区町村役場に請求します。往々にして、住民票のある住所と本籍地が異なる場合がありますので注意が必要です。また、戸籍謄本の取得には一律で費用が掛かりますが、戸籍全部事項証明書の場合は1通450円、除籍謄本と改製原戸籍の場合は1通750円となります。
前述のとおり、被相続人の出生から死亡まで複数通の戸籍謄本を入手する場合には意外に費用が掛かります。一生分の戸籍を過去にさかのぼって追いかける必要があるときは、手間(時間)と費用が掛かることを想定しましょう。
まとめ
相続手続きの際に利用できる「法定相続情報証明制度」が、平成29年5月29日から全国の登記所(法務局)で開始されています。この制度は、被相続人の戸籍謄本などの一式と相続関係を一覧にした法定相続情報一覧図を法務局に提出することで、登記官が認証文を付してくれる制度です。
それ以降は、法定相続情報一覧図の写しを相続手続きに利用することができるため、戸籍謄本などの束を何度も提出する必要がなくなります。相続手続きの簡素化にもつながる制度ですので、ぜひ参考としてください。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー