更新日: 2021.07.12 その他相続

遺留分制度の見直して何が変わる? 遺留分侵害額請求権について

遺留分制度の見直して何が変わる? 遺留分侵害額請求権について
約40年ぶりに民法の相続法改正が行われたのは、3年前の2019年になります。配偶者居住権の創設や特別寄与料制度の新設などがありましたが、その中に遺留分制度の見直しも含まれています。この記事では、遺留分制度の見直しについて解説したいと思います。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

遺留分とは?

遺留分とは何でしょうか?下表をご覧ください。法定相続人とは、民法で定められた相続人のことをいい、次のとおり分類されます。
 

配偶者 常に相続人となる
第一順位 子
第二順位 父母等の直系尊属
第三順位 兄弟姉妹

 
相続人が1人しかいない場合は、その人が相続財産の全てを相続しますが、順位の異なる相続人がいる場合は、相続順位の高い相続人と配偶者が下表の比率に従って相続財産を分け合うことになり、法定相続分が決まります。
 
例えば、第1順位と第2順位の相続人がいても、相続権は配偶者と第1順位の相続人に与えられ、より低い順位である第2順位の相続人には相続権はありません。
 
また、それぞれの相続順位に複数の相続人がいる場合は、その相続順位の法定相続分を、その相続順位の相続人の数で割った割合が、それぞれの相続人の法定相続分となります。
 
一方、実際の相続財産は法定相続分に従って分ける必要はなく、被相続人の遺言によって実際の相続分を決めることができます。ただし、被相続人の相続財産のうち、法律で保障された相続人が最低限もらえる一定の割合が決まっており、それを遺留分といいます。
 
例えば、配偶者と長男がいる被相続人が遺言で全財産を長男に譲ると書いても、配偶者は遺留分を受け取る権利があります。遺留分は、相続人が相続財産に対して持つ最低限の権利ともいうことができます。
 
下表に見られるように、遺留分は法定相続分の1/2となっています。配偶者と相続順位の異なる相続人がいる場合は、原則として、それぞれの法定相続分の1/2が遺留分となっています。同一順位の法定相続人が複数いる場合は、法定相続分の計算と同様、その順位の遺留分を人数で割ったものが、実際の遺留分になります。
 
ただし、例外的に兄弟姉妹には遺留分がありません。
 

※筆者作成
 

遺留分制度の見直し

相続法の改正で遺留分制度の見直しが行われ、2019年7月1日に施行されました。従来、遺留分減殺請求権と呼ばれていたものが遺留分侵害額請求権と名前を変えましたが、変わったのはもちろん名前だけではありません。
 
従来の遺留分減殺請求権では、原則として現物請求しか認められていませんでした。遺産の大部分が不動産で、現金資産がほとんどない場合、遺留分を請求すると住居を共同名義とせざるを得ないなどの不都合が生じていました。
 
この不都合を解消するため、新制度では、遺留分の遺留分請求者は遺留分侵害額に相当する金銭を請求することができるようになりました。それと同時に遺留分侵害額を支払う立場にあるものは、侵害額の支払い猶予を裁判所に請求することもできるようになりました。
 
遺留分を金銭に置き換えることができるようになったので、遺留分請求者の必要性に応える制度になったということができます。
 

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遺留分侵害額請求の例

具体的にどのように変わったのかを、サンプルを挙げて説明してみましょう。
 

相続人:配偶者、長男
相続財産:
居住用不動産 8000万円
預貯金 2000万円
計 1億円

 
被相続人である夫が、相続財産を配偶者に全額与えるという遺言を残した場合で、長男から配偶者に対して遺留分についての請求があったとき:
長男の遺留分 1億円×1/2(法定相続分)×1/2(遺留分)=2500万円
 

●旧制度:遺留分減殺請求権

居住用不動産を配偶者と長男の共同名義にする。
 

相続財産:

配偶者 居住用不動産 7500万円相当分
長男 居住用不動産 500万円相当分、預貯金 2000万円

 

●新制度:遺留分侵害額請求権

配偶者は自分自身で現金500万円を所持していれば、長男にその500万円を支払うことで、居住用不動産を全て自己所有にすることができる。
 

相続財産:

配偶者 居住用不動産 8000万円
長男 預貯金 2000万円
配偶者から長男へ現金500万円支払い

 

まとめ

この記事では、旧制度と新制度の違いと新制度のメリットを見てきました。2019年に改正された相続法は、2019年から2021年にかけて徐々に施行されていますが、従来の法律上の不具合である点を実情に即して使いやすくした改正が多いといえると思います。
 
参考
法務省 相続に関するルールが大きく変わります 平成31年(2019年)1月13日から段階的に施行されます。
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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