更新日: 2021.08.10 その他相続

戸籍謄本ってどんなときに必要になるの?

執筆者 : 黒木達也 / 監修 : 中嶋正廣

戸籍謄本ってどんなときに必要になるの?
日常生活では「戸籍謄本」や「戸籍抄本」が必要になることはあまりありませんが、人生に何度か、身分を証明するために、この公的書類のお世話になる機会があります。
 
それは相続発生の際や、結婚届の提出する際、年金の受給手続きをする際などです。
 
多くの場合、本人の現在の状態がわかる戸籍抄本や住民票で済むことが多いのですが、特に相続時については、複数の戸籍を集める必要があります。

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黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

戸籍は重要事項記載の公的文書

戸籍には、(1)本人の氏名、(2)本籍地、(3)生年月日、(4)出生地、(5)実父母の氏名・続柄、(6)配偶者の氏名、(7)婚姻日、(8)子の氏名、(9)養子縁組の内容、(10)除籍者の氏名、などが記載されており、親子関係、夫婦関係、日本国籍保有といった内容を証明する日本特有の公的文書です。
 
現在の戸籍は、夫婦とその子ども単位で構成され、子どもが結婚・独立すると、親の戸籍とは離れ、新規に別の戸籍がつくられます。
 
戸籍は本籍を登録した市区町村で管理され、証明もそこが発行します。子どもが生まれると、子どもの名前を親が届け、本籍地の役所の戸籍に記載・登録されます。その際、出生地が別の場所であっても、親の本籍地に登録されます。
 
戸籍は2種類あります。1つは「戸籍謄本」で、夫婦や親子全員の氏名が記載された文書(全部事項証明書)です。もう1つは「戸籍抄本」で、本人だけの部分を抜粋し、他の家族関係は記載のない文書(個人事項証明書)です。用途により選択・取得します。
 
戸籍謄本や抄本を取得するには、申請者の身分を証明できる書類(マイナンバー・カード、運転免許証など)を持参し、役所に出向く必要があります。本人、配偶者、父母、子どもなど直系血族の戸籍は取得できますが、それ以外の戸籍の入手には委任状が必要です。
 
戸籍以外に、よく利用される文書に「住民票」があります。これは、現在の居住実態を証明する文書のため、例えば同居はしていない親や子どもは記載されておらず、親子関係を証明できる文書にはなりません。
 

どんなシーンで戸籍謄本が必要か

戸籍謄本が最も必要になるのが相続発生時で、関係手続きの際に複数の戸籍謄本の提出を求められます。
 
具体的には、(1)故人の預貯金・株式などの解約と名義変更、(2)故人が所有する不動産の登記と名義変更、(3)故人が加入していた死亡保険金の請求、(4)故人の受け取れる未支給年金の請求、(5)故人の名義となっている墓地の継承、などの際に必要です。その理由は、相続人の確定のために戸籍謄本が不可欠だからです。
 
相続のために故人の金融資産を解約するには、相続人の戸籍謄本と、故人の出生時からの戸籍謄本が複数必要となります。
 
また相続以外のシーンでも、役所に関係する証明を取得する際に、この戸籍謄本の提出が求められます。具体的には、(1)厚生年金や遺族年金などの受給申請、(2)本籍地以外での結婚届・離婚届の提出、(3)パスポートの発給申請、(4)公正遺言証書の作成、などの際に必要です。
 
例えば、本人の老齢年金の請求をする際には、年金事務所へ戸籍謄本を提出します。パスポートの申請に際しても、都道府県の窓口から、新規の発給時だけでなく、切り替え発給時や記載内容の変更時にも提出を求められます。
 
秘密保持が求められる個人情報のため、本人以外が勝手に入手されては困る重要な公的文書です。相続以外の申請では、申請者本人分の1通だけで済むケースが多く、家族全体が記載された戸籍謄本ではなく、本人情報だけの戸籍抄本で済むこともあります。
 

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相続時には出生までさかのぼった謄本がいる

相続が発生すると、諸手続きの際に、故人の戸籍謄本の出番が多くなります。その目的は、相続人を確定する重要な証拠だからです。
 
例えば、父親が亡くなり、母親と同居する子どもで財産相続する場合、相続人であることの証明に戸籍謄本が使われます。父親が過去に養子縁組をしていないか、音信不通の子どもがいないか、認知した子どもがいないか、などは戸籍を調べ確認します。これらの子どもがいれば、彼らにも相続権があります。
 
故人が亡くなった時点の戸籍(「現在戸籍」という)だけでは、相続人すべてを確定できません。出生時までさかのぼり、本籍地を移動していれば、すべての本籍地の戸籍謄本を集めます。
 
特に戦前生まれの人の戸籍は、古い書式で作られた手書きの戸籍(「改製原戸籍」という)です。この改製原戸籍は、現在の戸籍とは形式が大きく異なるため、大変読みづらく見慣れない人は苦労します。
 
また相続権人の何人かが亡くなっていると、死亡の事実を確認できる「除籍謄本」が必要です。必要な戸籍をそろえ相続人を確定し、相続人による遺産分割協議を行います。
 

相続財産の名義変更には手間がかかる

金融資産や不動産の相続は、解約と名義変更の手続きに手間がかかります。金融資産の解約では、確定した相続人が金融機関と交渉をします。多くの場合、故人の出生から死亡までの戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍が必要です。自分でコピーした謄本ではダメで、役所が発行した謄本の提出を求められるケースがほとんどです。
 
現在の居住地以外の戸籍は、旧本籍地の市区町村から取り寄せる必要があり、本籍地の数だけ集めます。遠方で訪問できないときは郵送手続きになります。特に戦前の改製原戸籍には作成時に文字が誤記され、登録されている戸籍謄本さえあります。
 
この相続人の確定を終えてはじめて金融資産の解約と相続人への名義変更が可能になります。作業も煩雑なため、税理士や司法書士など専門家に依頼するのも1つの選択です。
 
不動産の継承に関しても、故人の戸籍を集めの作業は金融資産の解約時と同じですが、登記所での登記情報の変更手続きが加わります。戸籍集めに加えて、登記情報など提出書類に不備がないかの作業もあるため、専門家に依頼することが多いと思われます。不動産登記の際、故人の住所移動履歴のわかる「戸籍の付票」が求められることも多く、相続人自身の戸籍謄本も当然必要になります。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。