「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の違いとは? 実親の相続ができるのは?
配信日: 2021.09.17
普通養子縁組と特別養子縁組についてみていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
普通養子縁組とは
普通養子縁組とは、実の親(生みの親)との法律上の親子関係を維持したまま、養親(養子縁組による親)との親子関係も生じる養子縁組の方法です。
普通養子縁組では、子どもの戸籍には「養子」「養女」と養子であることが分かる記載がなされます。この際、実親と養親、どちらの親とも法律上の親子関係が並立して成立します。
普通養子縁組の要件は、養親となる方が成年者であり、養子となる方が養親より年長者でなければよいなど、後述する特別養子縁組と比較して緩やかです。
普通養子縁組は子どもを迎えたい夫婦だけではなく、跡継ぎ対策や遺産相続における相続人を増やすためなど、政略的な目的で利用されることもあります。
特別養子縁組とは
特別養子縁組とは、子どもの福祉の増進を図るための制度で、普通養子縁組と異なり、養親と養子が実の親子と同じ関係になります。そのため、普通養子縁組に比べて厳格な取り扱いがなされています。
具体的には実親の同意を必要として、養子と実親との法律上の親子関係は解消し、養親となる方は夫婦で原則25歳以上(ただし夫婦の一方が25歳以上の場合、もう一方は20歳以上であれば養親となれます)、養子となるお子さんは原則15歳未満といった要件のほか、養子と養親で6ヶ月以上生活し、監護状況を鑑みた上で家庭裁判所による縁組成立の決定が必要であり、原則として離縁もできません。
また、実子として扱われるため、養子は実親の戸籍からは抜けて養親の戸籍に入ります。
戸籍には実子と同様に「長男」や「長女」などと記載され、養子であることが容易に分からないようになりますが、身分事項には「民法817条の2」といった見る人によっては特別養子と分かる記載は加えられます。
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普通養子縁組と特別養子縁組との違いは?
普通養子縁組と特別養子縁組との大きな違いは、養子の年齢に制限があることと、養子と実親との間の親子関係が存続するか否かです。細かな点は多々ありますが、主な違いについて下記の表にまとめています。
普通養子縁組 | 特別養子縁組 | |
---|---|---|
家庭裁判所の許可 | 未成年者を養子にする場合などを除き原則不要 | 必要 |
実親との関係 | 存続する | 終了する |
監護期間 | 原則なし | 6ヶ月以上 |
養親の要件 | 成年者であること | 原則25歳以上の夫婦 |
養子の要件 | 養親より年上でないこと | 原則15歳未満 |
戸籍の表示 | 養子(または養女)と記載 | 長男・長女などと記載 |
※筆者作成
普通養子縁組と特別養子縁組、実親の相続ができるのは?
普通養子縁組と特別養子縁組で、実親の相続ができるのは普通養子縁組の方です。特別養子縁組は実親について相続人となることができませんが、その理由は簡単で、普通養子縁組は実親との法的な関係が存続するのに対し、特別養子縁組は法的関係が終了するためです。
もし、普通養子縁組で養子となった方が親族にいたとしても、その方は実親の相続人になれるということを覚えておいてください。
まとめ
普通養子縁組と特別養子縁組とでは、養子縁組後の法的効果が大きく異なります。特に特別養子縁組は、実親との法律上の関係が解消されて相続人になれないのに対し、普通養子縁組は実親との関係は残しつつ養親との親子関係を作り出すため、相続人になれるという点は大きな違いです。
養子縁組という制度について考える機会があるときは、親子間の関係だけではなく、相続の問題にも一緒に考えておきたいところです。
執筆者:柘植輝
行政書士