親の遺言によって不公平な相続に。「遺留分」は取り戻せる?
配信日: 2021.09.25
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
遺言書とは
まずは遺言書について見ていきましょう。遺言書は亡くなった方の意思を示した、法的効力を持つ書面になります。誰が、どの財産を、どれだけ相続するのか、また遺産分割の禁止、相続人以外の第三者への財産の遺贈、相続人の廃除など、遺言書に記載しておくことで財産の処分の方法や相続に関することを幅広く指定できます。
遺言書に無効となる事由などがない限り、基本的には遺言として記載された内容に従って相続を進めていくことになります。
遺留分とは
続いて、遺留分について確認していきます。遺留分とは、亡くなった方の兄弟姉妹以外の一定範囲の相続人に最低限保証されている相続分のことです。
ただし、遺留分は自動的に適用されることはないため、遺言などにより受け取れなくなった遺留分を取り戻すには遺留分侵害額の請求をする必要があります。
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不公平な遺言書から遺留分を取り戻すことができるか?
遺言書と遺留分の基礎知識を身に付けたところで、事例に当てはめて考えてみましょう。
例えば親が亡くなり、相続人は兄と弟の2人のみという相続で、「財産は全額、兄に相続させる」という不公平な遺言書が見つかった場合はどうでしょうか。
答えは「遺留分侵害額の請求をすれば、弟は遺留分を取り戻すことができる」となります。理由は単純で、遺留分は残された遺族のために規定された最低限保障されている相続分であり、遺留分の規定は遺言書よりも優先されるからです。
遺留分は直系尊属以外が相続人である場合、相続財産の2分の1に自身の法定相続分(今回は兄弟なので2分の1)をかけた割合と定められているため、弟が兄から取り戻せる遺留分は相続財産のうち4分の1となります。
何にせよ、遺言書の内容と遺留分が矛盾していた場合、遺留分の規定が優先されると覚えておけば間違いありません。
ただ、このように遺留分を侵害する遺言書であっても法的に有効であり、遺留分を主張されても遺言書が無効になるわけではないこと、遺留分は遺留分侵害額の請求をしなければ取得できないことも覚えておいてください。
なお、遺留分侵害額の請求の方法については定められていないため、口頭であろうと文書であろうと、請求をする旨を伝えるだけで有効に権利を行使したものと見なされます。
とはいえ、現実的には言った言わないの問題を回避するために内容証明郵便など、行使した日時や内容が明確になる方法での請求をおすすめします。
相続手続きが終わった後でも遺留分は取り戻せるか
先の事例において、例えば兄が「もう相続手続きは全て終わったから遺留分は返せない」と言ってきた場合はどうなるのでしょうか。
このケースでは、「本人が納得して遺産分割した状況ではなく、かつ、早めに遺留分侵害額の請求をすれば遺留分は取り戻せる」となります。
遺留分は遺産分割協議をして、遺留分を侵害されていた人が納得して相続分を決めた場合は主張できないものの、今回は本人の意思とは関係なく遺留分が侵害され、相続手続きが終わっていただけなので、遺留分侵害額の請求によって遺留分を取り戻すことができます。
ただし、遺留分侵害額の請求には期限が定められています。相続の開始から10年、または、相続の開始と遺留分を侵害する相続や遺贈、贈与があったことを知った日から1年のどちらか早い方で遺留分侵害額の請求権は時効により消滅します。
不公平な遺言書があっても遺留分は取り戻せる
遺言書が不公平な内容となっており、自身の遺留分が侵害されている場合であっても、優先されるのは遺言書ではなく遺留分の規定です。遺留分侵害額の請求権が消滅してしまう前に、速やかに遺留分の主張をするようにしてください。
執筆者:柘植輝
行政書士