相続対策は「プラスの遺産」だけでなく「マイナスの遺産」にも注意しよう!
配信日: 2021.10.11
相続対策において軽視されがちな、マイナスの遺産の注意点について確認していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
マイナスの遺産に対する相続対策が必要な理由
マイナスの遺産の相続対策が必要な理由について、端的に説明してしまえば、相続人の負担を減らすためです。
相続人にとってマイナスとなる遺産の存在は、思った以上に大きなものになります。特に相続人の方が知り得もしなかった、いわば隠れた負債などが相続の場で発覚、それも相続手続きがひととおり終わった後となれば、心理的な面も含めた負担はマイナスの金額以上に大きい場合もあるでしょう。
それでは、マイナスの遺産がどのように相続人たちの負担となっていくのか、具体的に見ていきます。
マイナスの遺産は見つかりづらい
マイナスの遺産は、意外にも見つかりづらいのが現実です。金融機関からの郵便物など、一目で分かるようなものを相続人がすぐに見つけられるとは限りませんし、契約書などを紛失してしまっていると相続人が債務などマイナスの遺産を調査するのが困難になり、なかなか見つからないということもあり得るからです。
特に、借金などの存在を家族に知られないために隠していた場合、相続人の方がマイナスの遺産を見つけるために専門家に依頼して、調査に時間と費用をかけざるを得なくなるなど、相当苦労することが想定されます。
また、調査時には見つからなかったが、相続手続きの終了後、時間がたってから発覚したという場合、相続放棄をすることもできず、負担が重くのしかかるということも可能性としては十分に考えられます。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
マイナスの遺産は遺産分割の内容を債権者に主張できないことがある
マイナスの遺産はプラスの遺産と異なり、債権が存在することとの関係上、遺産分割の内容について債権者が同意しない限り、その内容を債権者に主張することができません。なぜなら、マイナスの遺産は遺産分割の対象とならず、基本的に法定相続分に沿って分割されるからです。
つまり、遺産分割で「ある1人の相続人が遺産を多く受け取る代わりに、債務を全額返済する」という内容を取り決めても、債権者が他の相続人に法定相続分での返済を求めた場合、それに応じなければならないということになります。
もちろん、遺産分割をした相続人同士の間での債務の負担割合の合意は有効なのですが、債権者には対抗できないため、相続人の間で相続争いが起きる原因となりかねないのです。
相続をどうするか、考える時間が減る
相続には亡くなった方のプラスとマイナスの全ての遺産をまとめて引き継ぐ単純承認と、相続を一切しない相続放棄、プラスの遺産の範囲でマイナスの財産を引き継ぐ限定承認があります。
これら相続の方法は、相続開始を知ってから原則3ヶ月以内に決めなければならない上、一度決定すると、そう簡単には変更ができません。マイナスの遺産の存在が発覚するのが遅れてしまうと、驚きや焦りなどから冷静な判断ができないこともあります。
相続対策はマイナスの遺産にも注意
相続において、時にマイナスの遺産は、プラスの遺産以上に相続人に大きな影響を与えることがあります。相続対策といえば、プラスの遺産に関することに注目が集まりがちですが、マイナスの遺産についても同様に対策を講じてこそ、より万全なものになるということを忘れないでください。
執筆者:柘植輝
行政書士