更新日: 2021.10.13 遺言書

「終活」を始める前に。「遺言書」と「エンディングノート」の違いとは?

「終活」を始める前に。「遺言書」と「エンディングノート」の違いとは?
「終活」を始める際に、多くの方が考える選択肢として「遺言書」と「エンディングノート」があります。元気なうちに書くことは非常に大切なことです。
 
では、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。また、書くときの注意点には何があるのでしょうか。大切な家族を困らせないために2つの違いを見ていきましょう。
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

法的な効果について

エンディングノートには、基本的には法的効力はありません。例えば、エンディングノートに葬儀のときにかけてほしい曲や飾ってほしい花を書いていたとしても、その曲や花を使用しなければならないとする法的な拘束力は相続人にはありません。
 
それに対し、遺言書は正しく書くことによって「法的効力が発生」するため、相続財産の分割の仕方などについて、遺言書の内容に沿って手続きを進めることになります。
 

記載方法は?

エンディングノートは、上記のとおり法的効力がありませんので、自由に書くことができます。最近では、市販のエンディングノートを購入することもできますし、ご自身の好きなフォームで作成するのもよいでしょう。
 
それに対し遺言書、特に自筆証書遺言は、決められた形式で記載しなければ無効になります(公正証書遺言の場合は見てもらえるので基本的に無効になる可能性は低いです)。
 

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記載する内容は?

エンディングノートは自由に書くことができますので、例えばご自身の人生を振り返ってのことやご家族へのメッセージなども記載できます。
 
また、記載時点において将来的なことでいえば、今後ありえるかもしれない延命治療のことや、先ほども書いたご自身の葬儀のこと(音楽や花、連絡してほしい友人知人、使ってほしい遺影等)など、ご自身の思いを残すものと考えていただければよいと思います。
 
それに対し、遺言書は法律で定められたことのみ記載できます。例えば、未成年後見人の指定(民法839条)、推定相続人の廃除(民法893条)、祭祀(さいし)主宰者の指定(民法897条)、相続分の指定(民法902条)、遺産分割の指定または禁止(民法908条)などです。
 
これら以外のことを記載する場合は、「付言」という形で記載します。
 

費用は?

エンディングノートは、前述のとおり市販のエンディングノートを購入するのでもよいですし、手持ちのノートに書いても、パソコンで作成しても構いませんので、作成費用は高くても数千円といったところでしょうか。
 
遺言書は、自筆証書遺言、公正証書遺言によって違ってきます。公正証書遺言では財産額等にもよりますが、数万円となります。
 

いつ中身を見るものなの?

エンディングノートは、極論すればいつでも見ることができます。なぜなら上記のとおり、延命治療のことを書いている場合もあります。また、死後すぐに見ることによって連絡してほしい方や葬儀に呼んでほしい方、希望の葬儀の方法を残された家族がすぐに確認できます。
 
それに対し、遺言書(自筆遺言証書)の場合は、家庭裁判所の検認を受けたうえで、相続人全員がそろわなければ開封できません。また、勝手に開封してしまうと過料を科される可能性もあります。
 
つまり、記載する内容に葬儀のことを書いたとしても、その希望を受け入れてもらえる可能性はかなり低くなるということです。
 

どちらを書くにしても早めの準備を

エンディングノートは、法的効力がなく自由に書けるので、どちらかといえばカジュアルな感じです。
 
コロナ禍に限らず、いつ何時何があるかは分かりません。特に友人関係でいえばスマートフォンや電子メールの普及により、以前のように電話帳や年賀状を確認してご家族が連絡するということが難しくなってきています。
 
そういった場合、エンディングノートに書いてあるだけでも連絡がしやすくなり、連絡を受けた友人たちも最期のお別れに立ち会うことができたりします。
 
また、ご自身の歩んでこられた人生を振り返るといった意味でも、若いうちから少しずつでも書いていくのもよいのではないでしょうか。
 
財産がある場合だけでなく、相続人に自分の意思を正確に伝えたい場合は、遺言書でしっかり書くことことをお勧めします。その後の「相続」が「争族」にならないよう、明確に書くことが望ましいです。
 
これら2つの違いを理解することで、内容を区別することにより、「終活」と「相続」がスムーズにいくことがご本人のためでもあり、周りの方のためでもあるのではないでしょうか。
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

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