更新日: 2021.10.18 その他相続

子どもがいない夫婦の相続問題。妻の相続分を減らさないための対策とは?

執筆者 : 柘植輝

子どもがいない夫婦の相続問題。妻の相続分を減らさないための対策とは?
子どもがいない夫婦では、いかにして配偶者に相続財産を残すか悩まれる方もいます。配偶者のことを案じ、少しでも多くの相続財産をと考えるのは不思議なことではありません。
 
そこで今回は、子どもがいない夫婦の相続を例に、夫が自分の死後、妻の相続分を減らさないためにできる対策について考えてみます。

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柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

まずは法定相続分と遺留分について確認

子どもがいない場合、配偶者である妻が受け取れる遺産は法定相続分(法律で定められた相続分)で3分の2、または4分の3です。
 

    

法定相続分
順位 該当者 該当者の法定相続分 妻の相続分
1位 直系卑属(子や孫、ひ孫から近い順) 2分の1 2分の1
2位 直系尊属(父母、祖父母から近い順) 3分の1 3分の2
3位 兄弟姉妹(兄弟姉妹、おい・めいから近い順) 4分の1 4分の3

※筆者作成
 
法定相続分は、あくまでも遺言や遺産分割によって相続分を定めない場合の相続分です。そのため、遺言などによってこれよりも多い金額を相続させることもできます。
 
しかし、父母や祖父母には最低限保障された相続分である遺留分という規定があり、遺留分を主張されれば、3分の1は父母ないし祖父母に遺産が移ります(兄弟姉妹には遺留分はありません)
 

    

遺留分
相続人の構成 遺留分の割合
直系尊属のみが相続人 3分の1
それ以外の場合 2分の1

※筆者作成
 
なお、遺留分は行使されない限り効力を生じないため、遺留分を超える相続分を遺言などで定めてもそれは無効とはされません。遺留分が行使された場合は、遺留分相当額について財産を相続した方が行使した方に金銭で支払いをするといった流れになります。
 

法定相続分よりも妻へ多く財産を残すには?

子どもがいない夫婦の場合、法定相続分に従えば少なくとも3分の2は妻に財産が移ることになります。それ以上を望む場合、遺言書を作成して相続分を指定することが一番手軽な方法です。
 
しかし、法定相続分を超えた相続分の指定は、相続が荒れる原因にもなりかねません。法定相続分を超えて妻へ財産を残したい場合には、次のような流れで準備をしておくと、より円滑な相続とすることができます。
 

遺言書を作成する

まずは相続分を指定した遺言書を作成します。遺言で決めた相続分は法定相続分に優先します。
 
遺言書の内容としては「相続財産は妻に全て相続させる」といったものや、「遺留分を除いた部分について妻に相続させる」などが考えられますが、こうすることで法定相続分よりも多く妻に財産を残すことができます。
 
妻に1円でも多くというのであれば「全て」としてもよいのですが、相続人の中にはそれでは納得しないという方がいるかもしれません。その点考えると、遺言での相続分の指定は法定相続分以上、遺留分未満にしておくのが無難です。
 

相続人となり得る方へ話をしておくこと

遺言書の作成に次いで行っておきたいのは、相続人となり得る兄弟姉妹や父母、祖父母に遺言の内容を生前に話しておくことです。相続財産について「妻にできるだけ多く」と遺言があったとしても、夫の親や兄弟からすれば、他人である妻へ財産の大部分がいきなり渡ることに納得がいかない可能性もあるからです。
 
特に夫の死後、妻には遺族との関係を良好に保っていてほしいと考える場合や、妻に余計な負担をかけたくない、相続争いは起きてほしくないというのであれば、この点はなおさら重要になります。
 
仮に法定相続分どおりに相続させる場合であっても、遺族となる方へ事前に相続の内容について話をしておくことで、妻が相続トラブルに巻き込まれる可能性を減らせるかもしれません。特に相続人となり得る方へは、できる限り話をつけておきたいところです。
 

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妻の相続分を増やすなら遺言書の作成など念入りな準備を

子どもがいない夫婦で、夫が少しでも妻の相続分を増やしたいと思うのであれば、遺言書で相続分を指定することが一番です。場合によっては、遺産を全て妻へ相続させることも不可能ではありません。
 
しかし、あまりにも妻に偏った遺産相続としてしまうと、子どもがいない分、妻と他の遺族の関係が希薄であることも考えられることから、反発によって相続問題が生じる恐れもあります。こうしたケースにも備えて遺言書を作成しておくとともに、生前に親や兄弟へ説明をしておき、理解を得ておくことも忘れないでください。
 
執筆者:柘植輝
行政書士