更新日: 2021.10.25 贈与

「おしどり贈与」はメリットばかりではない?どんな点に注意するべき?

「おしどり贈与」はメリットばかりではない?どんな点に注意するべき?
贈与税には「おしどり贈与」と呼ばれる婚姻期間の長い配偶者間での優遇措置があります。おしどり贈与とはどのような制度であるのか、メリット意外にも注意すべき点があるのか確認していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

おしどり贈与とは

おしどり贈与とは、正式な名前を「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」といいます。これは婚姻期間が20年以上ある夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与について、贈与税の基礎控除である110万円に加えて2000万円の非課税枠が追加され、合計で2110万円まで非課税となる制度です。
 
この特例を利用することで、通常の贈与に比べてはるかに低い負担で配偶者に不動産や金銭を贈与することができるのです。おしどり贈与には、節税となるほか、事前に財産を移転させることで相続トラブルを防止するなどのメリットがあります。
 

おしどり贈与の注意点

それでは、実際におしどり贈与をするに当たっての注意点について見ていきます。
 

同一配偶者間では1回のみ

贈与税の非課税枠110万円は毎年利用することができます。一方で、このおしどり贈与は同一配偶者間において1回しか行うことができません。
 
おしどり贈与をする際は1回きりだということを踏まえ、家の買い換えや建て替えについて考慮したタイミングで行う必要があります。
 

贈与税の申告手続きが必要

おしどり贈与の適用を受けるには住所地を管轄する税務署へ、下記の書類を添付して贈与税の申告をしなければなりません。
 

(1) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本または抄本
(2) 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
(3) 居住用不動産の登記事項証明書など居住用の不動産を取得したことを証するもの

 
また、金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、上記の書類のほかに、その居住用不動産を評価するための書類(固定資産評価証明書)などが必要となります。
 
手続きをしないままではおしどり贈与とはならないため、おしどり贈与をする際は手続きが必要であること覚えておいてください。
 

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相続税の配偶者控除で十分なことも

相続税対策を目的としておしどり贈与を利用する場合は、よく考える必要があります。なぜなら、相続税には配偶者控除といって、亡くなった方の配偶者が相続した財産については居住用不動産などに限らず、下記のいずれか多い金額までは相続税がかからないという優遇制度があるからです。
 

(1)1億6000万円
(2)配偶者の法定相続分相当額

 
さらに、おしどり贈与はあくまでも贈与であるため、不動産を取得した際には不動産取得税が発生します。それに対して相続によって不動産を取得した場合、不動産取得税はかかりません。それだけでなく、不動産の登記の際にかかる登録免許税は贈与で2%、相続なら0.4%と税金面で大きな差がつきます。
 
そのため、おしどり贈与をする目的が将来の相続税対策という面が強いのであれば、わざわざ無理におしどり贈与をする必要はなく、相続税の配偶者控除で十分だということがあります。
 

おしどり贈与はメリットばかりではない、慎重に考えること

おしどり贈与は贈与税を大きく節税することができる優れた節税対策です。しかし、その他の税金面や手続きについて理解しておかないと、手間も税金も増えてしまい、相続税の配偶者控除で十分だったということもあります。
 
おしどり贈与について考えているのであれば、専門家に相談するなどして仕組みをしっかりと理解し、慎重な選択をするようにしてください。
 
出典
国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
国税庁 No.4455 配偶者控除の対象となる居住用不動産の範囲

国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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