更新日: 2021.11.11 その他相続

不要な土地を国に返還することができる制度とは?

不要な土地を国に返還することができる制度とは?
少子高齢化、核家族化などの進行により、いわゆる「所有者不明土地」の増加が深刻な問題となっています。その対策として民法および不動産登記法が改正され、今後、相続登記が義務化されることになります。この改正と併せて、2021年4月に「相続土地国庫帰属法」という法律が新たに成立しました。
 
ここでは、相続登記義務化と相続土地国庫帰属法の概要について確認してみたいと思います。
高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

所有者不明土地の増加対策として相続登記を義務化

相続登記が義務化される背景には、特に地方における所有者不明土地の増加が挙げられます。所有者不明土地とは、相続などで取得した土地を登記しないまま放置したことで所有者がすぐに分からない土地や、所有者は分かったとしても所在が不明で連絡がつかない土地のことをいいます。
 
これらへの対応として、法改正により相続登記が義務化されることとなりました。その概要は以下のとおりです。

(1)相続登記の義務化
(2)相続人申告登記(仮称)の創設
(3)所有権の登記名義人の氏名、住所の変更の登記の義務付け

新設される上記(2)相続人申告登記とは、速やかに相続登記ができない場合に相続人であることを申告することで、期限内の相続登記の義務を免れることができる制度です。
 
今回の改正のポイントは、相続の開始があったことを知り、かつ、土地の所有権を取得したことを知った日から3年以内に正当な理由がなく相続登記しなかった場合、10万円以下の過料となることです。また、相続登記が義務化される対象として、すでに相続が発生しているケースについても含まれます。
 

相続土地国庫帰属法とは?

相続登記の義務化と併せ、土地の有効活用を促す対策として、2021年4月に「相続土地国庫帰属法」が新たに成立しました。この法律では一定の条件を満たすことで、相続で取得した土地の所有権を国庫に帰属させることができるようになります。
 
つまり、相続や遺贈により取得した土地について、これといった使い道がなく、所有のための負担だけが発生するなどの理由から手放したいと思っている場合に、国に国有地として返還できる制度です。
 

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相続土地国庫帰属法の制限

この制度を利用する場合には、相続または遺贈によって土地の所有権を取得した人が、法務大臣(各法務局が窓口)に申請し、承認を得る必要があります。申請できる人は相続人などに限られ、売買などで土地を取得した人は対象となりません。
 
また、土地に関するさまざまな要件も定められています。主な要件は以下のとおりです。

(1)建物がある土地ではないこと(更地であること)
(2)抵当権などの担保権や使用および収益を目的とする権利が設定された土地ではないこと
(3)境界が不明であったり、所有権の存否や範囲などで争いがある土地ではないこと
(4)特定有害物質で汚染されている土地、除去が必要なものがある土地ではないこと
(5)管理や処分するために過分な費用や労力がかかる土地ではないこと
など

 

制度を利用するための費用は?

詳細については今後公表されるため、現時点(2021年11月10日時点)では明らかにはなっていませんが、申請には審査手数料が必要となる予定です。また、審査を受けて承認された場合、10年分の土地管理費用相当額として負担金を納入することになります。
 
負担金の算定は、地目や面積、周辺環境などの実情に応じて行われますが、参考として現状での国有地の10年分の標準的な管理費用は、市街地の宅地(200平方メートル)で約80万円、原野については約20万円となっています。
 

まとめ

今後も高齢化が進展し、相続によってすぐには利用できない土地を取得してしまい、売ろうにも買い手が付かないなど対応に困ってしまうケースも多くなってくることが想定されます。また、土地をただ所有しているだけでも固定資産税などの負担が発生します。
 
相続登記の義務化は2024年頃に施行予定、相続土地国庫帰属法は2023年頃に施行予定となっています。施行までには期間がありますが、ご自身が過去に相続した土地を含めて、登記記録の記載事項が現状の権利関係と合致しているか、今のうちに確認しておくことをお勧めします。
 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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