更新日: 2021.11.19 贈与

見直しがされている「暦年贈与」。定期贈与との違いや注意点は?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 高橋庸夫

見直しがされている「暦年贈与」。定期贈与との違いや注意点は?
数多くある相続税対策のなかでも、王道と言える「暦年贈与」ですが、見直しがうわさされているのを知っていますか。
 
本記事では、暦年贈与とは何か、暦年贈与の注意点や定期贈与との違いなどを詳しく解説します。暦年贈与の見直しの方向性も解説していますので、生前贈与を考えている人はぜひ参考にしてください。
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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

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サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

暦年贈与とは

贈与税には、年間110万円の基礎控除が設けられています。この基礎控除をうまく利用して、生前贈与を行う方法を「暦年贈与」と言います。
 
暦年贈与は、1人につき基礎控除が110万円なので、仮に子ども3人に暦年贈与を行う場合、合計で330万円までなら贈与税はかかりません。
 

暦年贈与と定期贈与の違い

暦年贈与とよく間違えやすい生前贈与に「定期贈与」があります。定期贈与とは、定期的に生前贈与することを、あらかじめ決めている贈与のことであり、一定期間・一定の贈与を行います。
 
仮に、15年間で毎年100万円の贈与が「あらかじめ決められている」のであれば、それは定期贈与だと判断される可能性があります。この場合、合計額の1500万円に対して贈与税がかかります。
 
しかし、定期贈与ではなく暦年贈与なら、毎年贈与する100万円は110万円の基礎控除額内のため、贈与税はかかりません。このように、暦年贈与か定期贈与かで、かかる贈与税が大きく変わるため注意が必要です。
 

暦年贈与の注意点

暦年贈与と定期贈与は似ているため、生前贈与する場合は注意が必要です。そこで、この見出しでは定期贈与だと疑われたときに、しっかりと暦年贈与であることを証明するための方法を解説します。
 

贈与契約書を作成する

税務署に贈与を疑われたときに、本当に贈与が行われたことを証明するためにも、贈与契約書を作成しておきましょう。税務調査が入ったときに、贈与の事実を証明できるので、定期贈与対策に役立ちます。
 
贈与契約書に、決められたフォーマットはありませんが、下記で挙げる項目は必ず記載してください。

●贈与者の氏名、住所
●受贈者の氏名、住所
●贈与契約日
●贈与財産の種目や内容、金額などの情報
●贈与の方法

贈与契約書について分からないことがあれば、専門家に相談をおすすめします。
 

贈与して、贈与税の申告をする

贈与税を申告して納付すれば、贈与したことの証明になるため、基礎控除額以上の贈与を受けるのも1つの手です。仮に111万円の贈与を受けた場合、贈与税は1000円です。
 
・111万円-110万円(基礎控除額)× 10%(税率)= 1000円
 
贈与税の申告や納付の手間は発生しますが、相続税対策として有効な手段だと言えるでしょう。
 

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暦年贈与は見直しが検討されている?

与党の令和3年度税制改正大綱から、暦年贈与廃止の可能性が取り沙汰されています。
 
見直しの方向性として、下記で挙げる2つの方法が考えられます。

●暦年贈与を廃止し、相続時精算課税制度のみを残す
●暦年課税を存続させるが、相続税に近づける

暦年贈与を廃止するのは、国民の影響が大きいと考えられており、可能性としては相続税に近づける方法が現実的と言われています。将来的には、「生前贈与加算」を相続開始前3年以内ではなく、10年や15年以内に拡大されるかもしれません。
 

見直しがすぐに実施されることはない

暦年贈与の見直しが仮に決まったとしても、すぐに実施される可能性は低いと言えます。経過措置を設けて、一定期間が過ぎたあとから実施されるでしょう。
 

暦年贈与は正しく行うことが大切

暦年贈与は、定期贈与や名義預金などと間違われないためにも、生前贈与する人が正しい知識を持つことが大切です。税務調査が万が一入ったときのために、贈与契約書を作成するなど、できる対策はしっかりと立てておきましょう。
 
暦年贈与は、今後廃止の可能性があると話題になっています。仮に見直しがされたとしても、すぐに実施される可能性は低いかもしれませんが、今後見直しがあるかもしれないことは、きちんと念頭に置いておきましょう。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:高橋庸夫
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