子のいない夫婦は配偶者に全ての財産を残せる? 知っておきたい法定相続人の確認方法
配信日: 2021.11.29
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
相続人となれるのは法定相続人である人
法律上、相続人となれる方は決められてます。相続の発生時、法律によって定められた相続人となる方を法定相続人といいます。
法定相続人には順位があり、配偶者は必ず相続人となりますが、直系卑属(子や孫で亡くなった方に血縁関係が近い方)、直系尊属(父母、祖父母で亡くなった方に血縁関係が近い方)、兄弟姉妹(亡くなっていればおい、めい)の順に相続権が移っていきます。同順位の方が複数人いる場合は、その全員が法定相続人になります。
相続順位 | |
---|---|
常に相続人となる | 配偶者 |
第1順位 | 直系卑属(子、子が亡くなっていれば孫、孫も亡くなっていればひ孫) |
第2順位 | 父母(亡くなっていれば祖父母) |
第3順位 | 兄弟姉妹(亡くなっていればおい、めい) |
※筆者作成
配偶者に全ての財産を残せるかは遺留分権利者の存在次第
子のいない夫婦の相続で、配偶者に全ての財産を残すこと自体は不可能ではありませんが、それに当たっては遺留分が問題となります。
遺留分とは法定相続人のうち、兄弟姉妹以外の相続人(上記表の第2順位以上の人)に認められた最低限の相続分のことです。言い換えれば、兄弟姉妹(おい・めい含む)以外の相続人が存在する場合、配偶者に全ての財産を残せない可能性があるということです。
遺留分は亡くなった方の意思や遺言よりも優先されるため「配偶者に全財産を残したい」と遺言書を作ったとしても、遺留分を有する方(遺留分権利者)が遺留分による相続分を主張すれば、相続財産を相続した配偶者は遺留分相当額の金銭を支払わなければならないからです。
しかし、遺留分は行使されなければ支払い義務は生じないため、遺留分を有する相続人がいたとしても、その方の理解が得られるのであれば、配偶者に全ての財産を残すというのも可能でしょう。
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法定相続人の存在はどう確認する?
配偶者へ財産をより多く残そうと考えたら、まずは法定相続人を確定させることが重要です。
子のいない夫婦の場合、父母や祖父母のほか、兄弟姉妹やおい・めいまで相続人となる可能性があるため、疎遠で意外な人が相続人となる場合も考えられます。また、再婚している場合で前配偶者との間に子がいれば、その子や孫も相続人となることもあります。
相続が発生した際、法定相続人になるであろう方は、出生から現在までの連続した戸籍謄本を取り寄せることで確認することができます。
その戸籍謄本にある家族の記載内容を整理して、現在時点で相続人となるであろう方を確認します。この作業は、実際に相続が発生した時点で行う手続きでもあります。
ただ、親兄弟や前配偶者との間の子など、血縁の近い方の所在を全く確認できないという特殊な状況でない限り、相続の開始前であればここまでの手続きは必要なく、自分が把握している範囲で相続人を確定させていく、あるいは親や兄弟へ近況を直接聞いてみるなどして確認する程度でも十分でしょう。
子のいない夫婦でも配偶者に全ての財産を残せるとは限らない
子のいない夫婦であっても配偶者の他に遺留分を有する法定相続人が存在する場合、全財産を配偶者に残せないこともあります。
もし、全財産を平穏に配偶者へ残したい場合は、相続人となり得る方を確認し、その方に事情を説明するなど理解を求める必要があるでしょう。
執筆者:柘植輝
行政書士