更新日: 2022.01.17 相続

父の死後、口座が凍結される前に葬儀費用を引き出しても問題ない?

執筆者 : 柘植輝

父の死後、口座が凍結される前に葬儀費用を引き出しても問題ない?
葬儀の費用は内容によって異なるものの、高額であるため、突然発生した場合は自前ですぐに用意できないこともあるでしょう。
 
そんなとき、亡くなった方の銀行口座が凍結される前に葬儀費用分を引き出しても問題ないのでしょうか。父親が亡くなった方を例に、この問題について考えてみます。
 
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

亡くなった方の口座は凍結される

銀行は口座の名義人が亡くなったことを知ったら、原則として遺産分割が終わるまで、その口座を一時凍結します。そのため父親が亡くなった場合、遺産分割が終わるまで父親名義の口座からは原則、お金は引き出せないことになります。
 
しかし、銀行が父親の死亡を知るまでは口座は凍結されないため、本人のキャッシュカードと暗証番号を使用すれば、事実上、お金を引き出すことは可能です。
 

凍結前にお金を引き出すと問題になることがある

口座が凍結されていないからといって、実際にそこからお金を引き出すことはさまざまなトラブルの原因となり得ます。具体的にどんな問題があるのか、いくつか例を見ていきます。
 

相続人同士で不信感が生まれて相続争いの原因に

葬儀費用のためとはいえ、相続人のうちの誰かが相続財産である父親の口座内のお金に手をつければ「他の用途に使ったのではないか」など、相続人の間で不信感が生まれてしまうことも考えられます。
 
その結果として遺産分割がうまくいかなくなるなど、相続争いに至る原因にもなりかねません。
 

相続放棄や限定承認ができなくなる可能性がある

亡くなった父親の口座から相続財産の対象となる預貯金を引き出したとしても、それをもって直ちに相続の意思があると見なされるわけではありませんが、状況次第ではそうとも限りません。
 
引き出した金額が必要最低限で、かつ、全額をすぐに父親の葬儀費用として使った場合はともかく、後で戻せばいいと考え、いったん私用で消費してしまうと相続の意思ありと見なされ、相続放棄などができなくなる恐れがあるからです。
 
相続放棄(相続人としての地位を破棄すること)や限定承認(プラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続すること)ができなくなると、単純承認したと見なされて通常どおり相続人となるため、亡くなった方のお金や土地などプラスの財差はもちろん、借金などの負債や義務といったマイナスの財産も全て引き継ぐことになります。
 

葬儀費用に必要なお金はどう確保すればいい?

葬儀費用に必要なお金が手元にないという場合、最初に検討したいのは、遺産分割前の相続預金の払戻制度です。
 
この制度を利用すると、遺産分割前でも相続人単独で葬儀費用として、亡くなった父親の口座から一定額の払い戻しを受けることができます。
 
払い戻しを受けるには金融機関での手続きが必要です。ただし、亡くなった方の除籍謄本や相続人全員の戸籍謄本などの書類を提出するほか、場合によっては家庭裁判所の判断が必要となることもあります。詳細については口座がある金融機関の支店へご相談ください。
 
もう一つの方法は、遺産分割を終わらせてしまうことです。相続放棄や限定承認をしない場合、遺産分割が終われば問題なく相続財産を引き出せるため、葬儀費用に充てることはもちろん、個人の支出にも対応できます。
 
葬儀まで時間があり、相続人同士が近くにいて人間関係も良好など、遺産分割が容易に行える場合はこちらをおすすめします。
 

凍結前の口座から葬儀費用を引き出すのは極力避ける

父親の死後、葬儀費用に必要だからと凍結前の口座から安易にお金を引き出してしまうと、相続人の間でトラブルの原因となったり、相続放棄などができなくなってしまう可能性があります。
 
不要なトラブルを避けるためにも、葬儀費用が必要となった場合、相続人同士で協力して立て替えておくか、預金払戻制度を利用する、あるいは遺産分割を終えてしまうなどして確保するようにしてください。
 
出典
一般社団法人全国銀行協会 ご存知ですか? 遺産分割前の相続預金の払戻制度
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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