仏壇から亡き母の遺言状が出てきた。その場で開封してしまったらどうなるの?
配信日: 2022.01.22
今回は、遺言状を見つけた際に、その場で開封してしまうとどうなってしまうのかを見ていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
遺言状は検認前に開封してはいけない
遺言状が見つかったとき、中身が気になったとしても絶対にその場で開封してはいけません。なぜなら、遺言状の保管者ならびに発見者は遺言をした人の死亡を知ったとき、開封前に遅滞なく遺言をした人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ遺言状を提出して、検認手続きを受けなければならないとされているからです。
つまり、遺品整理の途中で仏壇から出てきた遺言状は、まずは家庭裁判所へ提出して検認を受けてからの開封となります。稀に封がされていない封筒に入っていたり、封筒などに入っておらず遺言状自体が裸のまま保管されていることもあります。そういった場合でも検認は必要です。
ここでいう検認とは、遺言状の有効無効を判断するというものではなく、遺言状の存在と内容を相続人たちに知らせ、遺言の状態を確認し、偽造や変造を防止するための手続きです。検認を受けたからこの遺言状は絶対に有効である、と判断されるわけではないことにご注意ください。
なお、公正証書遺言や、自筆証書遺言保管制度によって法務局に保管されている遺言は検認が不要です。
検認前の遺言状を開封してしまうとどうなる?
検認前に遺言状を開封してしまっても、基本的には遺言状自体に影響はありません。しかし、開封してしまった本人は5万円以下の過料が科される恐れもあります。
ただし、故意でない場合は家庭裁判所に速やかに連絡し、相談の上、手続きすることで不問となる可能性もあります。万が一開封してしまった場合は、速やかに家庭裁判所へ相談してください。
また、開封されたとしても遺言状自体は有効であり、検認前に遺言状が開封されたことを理由に遺言状が無効となることは通常ありません。
しかし、開封した遺言状を隠したり捨てたりした場合や、開封した目的が隠したり捨てたり、書き換えたりするような意図があった、あるいはそう見なされた場合は相続欠格に該当して相続人となる資格を失う恐れがあります。
なお、仮に上記のような事態にならなくても、相続人の間で開封者が遺言を偽造したりしたのではないかなど不信感が生まれ、相続争いに発展する場合もあります。
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検認の手続きはどう行う?
検認を受けるための申請手続きは遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、検認を受ける遺言状と申請書、相続人全員の戸籍や亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などを添付して行います。
この際、費用が発生します。遺言1通につき収入印紙800円と郵便切手(郵便切手の金額は申立先の家庭裁判所にご確認ください)が必要になります。
遺言状のその場での開封は基本NG
遺言状は公正証書遺言や法務局に保管されているものを除き、その場での開封はNGです。遺言状の開封は原則検認を受けた後になります。勝手に開封してしまうと、相続争いの原因となったり、開封者に過料が科されてしまう恐れがあります。
遺品整理で仏壇の中など思わぬ場所から突然遺言状が見つかったとき、中身が気になってしまってもまずは落ち着き、家庭裁判所へ検認を受けるための手続きを進めるようにしてください。
出典
裁判所 遺言書の検認
執筆者:柘植輝
行政書士