更新日: 2022.02.08 その他相続

内縁関係の夫が亡くなった。自分に遺してくれた財産はすべて相続できる?

執筆者 : 新井智美

内縁関係の夫が亡くなった。自分に遺してくれた財産はすべて相続できる?
内縁関係にあった夫が亡くなった場合、自分に遺(のこ)された財産を相続できるのでしょうか。
 
結論からいうと、内縁関係の妻には相続権はありません。したがって、遺された財産を相続できません。ただ、事前に対策を行うことで、財産を妻に遺すことはできます。今回は内縁関係の夫婦間の相続の基本的な考えを解説するとともに、内縁関係で財産を遺すための方法についてもご紹介します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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配偶者の概念

相続でいう配偶者とは、法律上の夫婦関係にある人のことをいいます。つまり、役所に婚姻届を提出し、戸籍上も妻(夫)として記載されていることが条件です。したがって、事実婚、内縁関係、同棲などで法律上の夫婦と同じ生活を送っていたとしても、相続において配偶者として認められることはありません。
 
もし相手が亡くなった場合は、その財産はほかの法定相続人で分割することになります。
 

内縁関係の妻(夫)に財産を遺すためには?

では、内縁関係の妻(夫)に財産を遺すためには、事前にどのような対応を行っておけばよいのでしょうか。
 

■生前贈与

自身が亡くなる前に贈与することで、財産を内縁関係の配偶者に遺すことができます。ただし、暦年課税の対象となるため、非課税での贈与を考えるなら、年間110万円以下に抑える必要があるほか、定期贈与とみなされないように、きちんと契約書を交わしておく必要があります。
 

■遺言

遺言書の内容に記載することで、内縁関係の妻(夫)に遺産を相続させることができます。ただし、正式な遺言である必要があることや、ほかの相続人の遺留分を侵害しない程度にとどめておくなどの配慮が必要です。
 
また、遺言書が法的な効力を有するものでなければなりません。自分で作成する自筆証書遺言には、有効となるための要件が細かく定められています。少しでも要件を満たしていないと、その内容は無効となりますので注意してください。遺言の書き方に不安がある場合は、公証役場に赴き、公正証書遺言もしくは秘密証書遺言を作成するという方法もあります。
 

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内縁関係の妻(夫)に財産を遺す際の注意点

前述のような方法で、内縁関係の妻(夫)に財産を遺すことが可能ですが、その際には以下の点に注意しましょう。
 

■法定相続人としては扱われない

内縁関係の妻(夫)は法定相続人として扱われることはありません。したがって、相続税の計算における基礎控除額に反映することはなく、また、生命保険金などのみなし相続財産の非課税枠の計算においてもその数に入れることはできません。
 

■税額が高くなる

法定相続人以外の人が遺言などによって財産を相続した場合、相続税の2割加算の対象です。場合によっては相続税がかなりの額となり、遺された内縁関係の相手方に負担となる可能性があります。
 

■他の相続人の合意を得られない場合がある

遺言によって財産を遺したいと思っても、それが有効になるためには法定相続人全員の合意が必要です。したがって1人でも遺言書の内容に反対する人がいれば、再度相続人全員での話し合いとなります。
 
ほかの相続人との関係性が良好であれば、スムーズに話し合いが進むかもしれませんが、遺言の内容や相続人との関係性によっては合意が得られず財産を受け取れない可能性があります。
 

遺族年金は事実婚でも受給可能

遺族年金は、事実婚であることを証明すれば受給できます。遺族年金の受給要件の1つに「死亡した方によって生計を維持されていた方」とあり、それを証明することで遺族年金を受け取ることができます。年金請求手続きの際、ほかに必要とされる書類とあわせ、「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」を提出する必要があります。
 

特別縁故者とは?

また、内縁関係の妻(夫)であっても「特別縁故者」として認められることで財産を相続できるケースもあります。特別縁故者とはほかに相続人がいない場合に、亡くなった人と生計をともにしていた、もしくは介護をしていたなどといった特別な関係にあった人を指し、遺産の全部もしくは一部を受け取ることができます。
 

まとめ

内縁関係にある妻(夫)は法的な配偶者とは認められません。したがって、法定相続人とはなり得ず、遺産を相続できません。しかし、事前に生前贈与や生命保険金の受取人に設定しておくなどで財産を遺すことはできます。
 
そのほか、ケースによっては遺族年金を受け取れたり、特別縁故者になり得たりする可能性もありますので、その要件やどのような手続きが必要なのかをあらかじめ調べておきましょう。特に特別縁故者として認められる場合には、裁判所への申し立てが必要なほか、遺産を受け取った場合の相続税は2割加算の対象となる点にも注意が必要です。
 
出典
(※)e-Govポータル「民法第958条の3第1項」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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