更新日: 2022.02.09 葬儀

父の死後、口座が凍結される前に葬儀費用を引き出しても問題ない?

執筆者 : 新井智美

父の死後、口座が凍結される前に葬儀費用を引き出しても問題ない?
人が亡くなった後、その人の金融機関の口座が凍結されてしまうことはよく知られています。では、凍結される前に葬儀費用を引き出しても問題はないのでしょうか?
 
今回は口座が凍結される前に預金を引き出す際の注意点について解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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口座が凍結されるとどうなる?

人が亡くなった後、金融機関がその事実を知った際には、その人の口座は凍結されます。凍結されると、預金の引き出しや入金などの一切の取引ができなくなります。したがって、葬儀に必要な費用などは口座が凍結される前に引き出しておきたいと考える方もいるでしょう。
 
なぜなら凍結されると、遺産分割協議が終わり、金融機関に凍結解除の手続きを行うまで、引き出すことはできなくなるため、費用を一時的に肩代わりするなどの方法をとらなければなりません。
 

口座が凍結される前に引き出す際の注意点

人が亡くなったからといって、その日のうちに口座が凍結されるわけではありません。口座が凍結されるのは、金融機関がその人が亡くなったことを知った時点です。
 
通常は相続人からの報告で知ることになりますが、なかにはニュースや新聞などで知ることもあるでしょう。その際には相続人からの報告を待つことなく、口座が凍結されることもあります。
 

■単純承認したとみなされる

口座が凍結する前にお金を引き出した場合、その人は亡くなった人の相続において、単純承認したとみなされます。単純承認とは、その相続においてすべての財産を相続することを意味します。
 
もちろん、人によっては借金を残して亡くなるケースもあります。そのような借金も当然相続財産に含まれ、残された人が相続した割合でその借金を返済しなければなりません。そのような借金があるならば、そもそも相続を放棄しようと考える人もいるかもしれません。
 
相続の放棄には、相続の権利すべてを放棄する相続放棄と、借金を除いた正の財産のみを相続する限定承認があります。どちらも、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要がありますが、相続放棄は1人で申し立てが可能です。
 
しかし、限定承認の場合は、他の相続人全員の合意が必要となる点に注意してください。
 

■引き出したお金の使途を明確にしておく

葬儀費用の目的で引き出したのなら、他の相続人が後でわかるようにその費用をいつ、だれに支払ったかという証明になるもの(請求書や領収書など)を残しておきましょう。
 
そうしないと、他にも私的な用途に使ったのではないかと考え、遺産分割協議の際にもめる原因となります。亡くなった後に必要な生活費を引き出した際も同様です。必ずどのような目的でどのくらい支払ったかをわかるようにしておくことが大切です。
 

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口座が凍結された後でも葬儀費用は引き出すことができる

前述のような問題解決のため、現在では口座が凍結された後でも一定の目的の範囲内であれば引き出しができる制度が用意されています。それが遺産分割前の相続預金の払戻し制度です。
 

■遺産分割前の相続預金の払戻し制度

2019年7月1日より施行された制度で、口座が凍結された後でも、必要な手続きを行うことで預金を引き出すことができます。この手続きには、家庭裁判所の判断が必要な場合と、不要な場合の2つがあります。
 

■家庭裁判所の判断が不要な場合

各相続人は口座ごとに「相続開始時の預金額×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続分」を限度に引き出すことができます。ただし、1つの金融機関で150万円が限度とされています。本店や支店も合わせての額ですので、1つの支店の口座ではない点に注意してください。
 

■家庭裁判所の判断が必要な場合

家庭裁判所の判断が必要となるケースは、引き出す時点において家庭裁判所に遺産の分割の審判や調停が申し立てられている場合です。そのような状態であれば、家庭裁判所の判断なしに預金を引き出すことはできません。また、引き出せる額は家庭裁判所が認めた額です。
 

まとめ

口座が凍結される前に葬儀費用を引き出しても問題はありません。ただし、その時点で相続について単純承認したとみなされることには注意してください。もしも、相続放棄を行おうと思っている場合は、安易に口座凍結前だったとしても引き出すことは避けましょう。
 
また、引き出すにあたって、できれば相続人全員の合意を事前にとっておくと、後々遺産分割協議でもめずにすむでしょう。
 
ただし、事前に全員の合意があったとしても、その合意内容に基づいて利用したことをきちんと証明できるように、引き出した費用の使用状況がわかるものを保管しておきましょう。
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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