更新日: 2022.02.12 遺言書

仏壇から亡き母の遺言書が出てきた。その場で開封してしまったらどうなるの?

仏壇から亡き母の遺言書が出てきた。その場で開封してしまったらどうなるの?
人が亡くなった後、その人が書いた遺言書を見つけた場合、つい開封してしまうことがあるかもしれません。しかし、それは絶対やってはならないことです。
 
今回は遺言書を見つけた際の取り扱いおよび注意点について解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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遺言書を勝手に開封したら?

故人が作成した自筆証書遺言を開封するためには、検認を行わなければなりません。この検認は家庭裁判所で行われます。もしも検認を行う前に勝手に開封した場合、その人には罰則が適用される可能性があります。
 

■勝手に開封した際の罰則

民法には
 
「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする」
 
と規定されており、さらに、
「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない」
 
となっています。そして、勝手に遺言書を開封した人には、5万円以下の過料が課せられます。
 

検認の手続き

では、検認の手続きとはどのような手順を踏んで行うのでしょうか。
 

■検認の請求

遺言書を見つけた人は、遅滞なく家庭裁判所に対して検認の請求を行います。請求先の家庭裁判所は、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。検認の請求を行う際には、遺言書1通につき800円がかかります。
 

■検認のために必要な書類

検認の請求を行う際には、以下の書類が必要です。


・申立書
・亡くなった人の戸籍謄本(出生から死亡までの情報がすべてわかるもの)
・相続人全員の戸籍謄本、など

 

■検認の流れ

検認の申し立てを受けた家庭裁判所は、以下の流れで検認を行います。


1.裁判所から相続人に対して検認を行う日を通知

2.検認を行う日に相続人が家庭裁判所に赴く(その際、申し立てた人は遺言書を持参)

3.出席した相続人の立ち会いのもとで、裁判官が開封し、検認を行う

4.検認後、「検認済証明書」を受領(ずりょう)する

ちなみに検認を行う日には、必ずしも相続人全員が立ち会わなくてもよいこととなっています。ただし、申し立てた人は必ず出席しなければなりません。
 

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自筆証書遺言以外の場合は?

もし、作成された遺言書が公正証書遺言だった場合、検認の手続きは不要となるため、見つけた人が勝手に開封しても問題はありません。また、遺言書には他にも「秘密証書遺言」がありますが、こちらも開封するためには家庭裁判所の検認が必要です。
 
なぜなら、秘密証書遺言の内容は遺言書を作成した人しか分からないためです。いくら公証人の押印があるとしても、公証人はその内容についてまで知っているわけではないため、家庭裁判所の検認が必要となるのです。
 

遺言書の保管制度

前述のようなトラブルを防ぐために、2020年7月より「自筆証書遺言保管制度」がスタートしました。この制度の内容は以下のとおりです。
 

■被相続人(遺言者)が行うこと

自筆証書遺言を作成した人は、その遺言書を法務局に預けます。預ける先の法務局は自分の住んでいる場所、本籍地、もしくは自分が所有する不動産がある場所を管轄する法務局のいずれかを自分で決めることができます。
 
手数料3900円/1通を支払い、保管の申請を行います。申請の手続きが完了したら「保管証」を受け取ります。
 

■相続人が行うこと

相続が発生したら、相続人は法務局に対して「遺言書保管事実証明書の交付の請求」を行います。請求先の法務局は全国どの法務局でも構いません。
 
そして、遺言書が保管されていることが分かったら、遺言書保管所を決め「遺言書情報証明書の交付の請求」を行います。その後、遺言書保管所にて「遺言書の閲覧」を請求することで、遺言書の内容を見ることができます。
 
この制度のメリットは、遺言書の閲覧に関して家庭裁判所の検認が不要なことです。さらに、遺言者が希望すれば、自分が亡くなったことを法務局が知った時に、相続人に対して遺言書が保管されている旨が通知されます。
 

まとめ

遺言書を見つけた際には、開封する前に家庭裁判所の検認が必要なケースが大半です。したがって、見つけた場合はすぐにほかの相続人に知らせるとともに、家庭裁判所に検認の請求を行うようにしましょう。もし、勝手に開封した場合は、罰則が適用される可能性があります。
 
一部の方式に基づいて作成されたもの以外の遺言書は家庭裁判所の検認が必要で、検認された後でなければ遺産分割協議を行うことはできません。
 
もし、残される相続人に対してそのような手続きの負担をかけたくないと思うのであれば、公正証書遺言で残すか、もしくは自筆証書遺言保管制度を利用するようにしましょう。
 
出典
(※1)e-Govポータル
(※2)裁判所ウェブサイト
(※3)法務省「自筆証書遺言保管制度」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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