更新日: 2022.02.18 その他相続

親の死後に借金発覚。相続放棄できる?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 新井智美

親の死後に借金発覚。相続放棄できる?
親が亡くなった後に、予想していなかった借金が発覚した場合、相続放棄をすれば借金を相続せずに済みます。しかし、この相続放棄には期限があり、期限内に手続きをしなければなりません。
 
また特定の事由が発生すると、期限内に相続放棄をしても無効とされます。ここでは、親の借金等を相続しないために、相続放棄における知っておきたい注意点等を解説しています。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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新井智美

監修:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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相続放棄とは?

相続放棄は正式には「相続放棄の申述」といい、管轄の家庭裁判所に申述書及びその他の必要書類を提出することによって行います。管轄は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
 
期限は「自己のために相続の開始があったことを知ったとき(被相続人の死亡及び自分が相続人であると知ったとき)から3か月以内」とされており、この期限は「熟慮期間」とよばれています。
 
原則として、熟慮期間の起算日は被相続人の死亡日と一致しますが、幼少期に父母が離婚してずっと連絡がなかった等の被相続人と長年没交渉であった場合は、被相続人の死亡を知った日が起算日となります。
 
従って、親の死後借金が発覚した場合でも、熟慮期間内であれば、家庭裁判所に相続放棄の申述をすることにより、借金を相続しなくてすむということです。なお、相続財産の把握が困難な場合等は、家庭裁判所に熟慮期間の伸長の申し立てをすることができます。
 

熟慮期間経過後に相続放棄できる?

熟慮期間が経過した後で、親の借金が発覚した場合、相続放棄の申述をすることは原則としてできません。
 
しかし、例外的に、「(熟慮期間内に)相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないものと信じたためであり、かつこのように信じるについて相当な理由があるときは熟慮期間は、相続人が相続財産の全部もしくは一部を認識した時または認識可能な時から起算するのが相当である」(最高裁昭和59年4月27日判決)とされています。
 
従って、音信不通の父親が亡くなっていたことは知っていたが、借金の存在については知らなかったケースにおいては、たとえ自己のために相続が開始されたことを知った日から3ヶ月経過していたとしても、債権者等の請求により借金の存在を知った日から3ヶ月以内であれば相続放棄の申述は可能です。
 

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相続放棄をしても、借金を相続してしまう「単純承認行為」とは?

相続放棄の申述をし、家庭裁判所に受理されたとしても、特定の事由が発生すれば相続放棄は無効とされ、借金を相続することになります。
 
この特定の事由は「法定単純承認事由」とされ、民法に定められています。法定単純承認事由に該当するものとして「相続財産の処分」(以下「処分行為」とします。)というものがあります。
 
単純に相続財産を売却したり、贈与したりすることだけが処分行為にあたりません。実はさまざまな行為が処分行為と解釈されます。代表的なものが、債務の弁済です。債務は借金だけでなく、新聞の購読料・水道・電気代等の日常生活に関わるものも含まれます。
 
ただし、対象となるのは被相続人の財産で債務を弁済する場合であって、相続人自身の財産で被相続人の債務を弁済することは処分行為となりません。従って、債務の弁済を求められたときは、被相続人の現金等で支払うのではなく、相続人自身の現金等で支払った方がよいでしょう。
 
また被相続人の財産で債務の弁済をしても、その債務が被相続人の葬儀代である場合は、葬儀代が社会通念上相当であると認められる時は処分行為にはならないとされています。
 
また、被相続人が賃貸物件に住んでいた場合も注意が必要です。賃貸物件のオーナーに賃貸契約の解除や遺品整理を求められることがありますが、これらの行為も処分行為とされていますので、安易に応じてはいけません。
 

単純承認事由には気を付けよう

親の死後借金が発覚しても、熟慮期間内であれば相続放棄は可能です。熟慮期間は原則、自己のために相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内ですが、親と長年没交渉だった場合は、借金の存在を知ったときから3ヶ月以内となります。
 
ただし、相続放棄をしても債務の弁済等の処分行為をしてしまうと、単純承認事由が発生したとみなされ、相続放棄は無効とされてしまいますので注意が必要です。
 
出典
裁判例検索(裁判所ホームページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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