更新日: 2022.03.03 贈与

子や孫への財産分与。連年贈与とみなされないためにはどうすればよいの?

執筆者 : 新井智美

子や孫への財産分与。連年贈与とみなされないためにはどうすればよいの?
相続税対策と聞いて何を思い浮かべますか? 中には、亡くなる前(生前)に子どもや孫に財産を分けることを考えている方もいらっしゃるかもしれません。
 
暦年課税の贈与税額の計算においては、1年間(1月1日~12月31日)に受け取った金額の合計額のうち、110万円までは非課税です。
 
この非課税枠を利用し、生前贈与を行うにあたって、気をつけるべき点とはどのようなものなのでしょうか。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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生前贈与には2種類の贈与がある連年贈与と定期贈与がある

生前贈与として使われる方法には、以下の2種類があります。

●連年贈与
●定期贈与

この2つの違いとはどのようなものなのでしょうか。確認してみましょう。
 

■連年贈与とは

連年贈与とは、生前贈与を毎年行うことです。
 
贈与額は特に決まっておらず、110万円までなら非課税ですが、110万円を少しでも超えた場合は、超えた部分に対して贈与税が課税されます。
 

■定期贈与とは

定期贈与とは、毎年決まった額を贈与することです。
 
例えば、一度に贈与する金額を110万円と決め、それを5年間にわたって贈与するという方法です。
 
上記のような場合、年間贈与額は110万円となりますので、課税対象とならないと思われがちですが、定期金給付契約に基づいて、贈与が行われたとみなされます。贈与額の合計額が550万円として、最初に贈与した年、つまり定期贈与を契約した年に課税されることがあります。
 
なお、このケースで相続時精算課税制度を選択している場合は、贈与税の課税対象とはなりませんが申告は必要です。
 
(出典:国税庁「贈与税がかかる場合」(※))
 

連年贈与とみなされないためには

連年贈与を行ううえで考えなくてはならないことは、その贈与が「定期贈与」としてみなされてしまわないかどうかです。
 
連年贈与を検討している方は、以下の対策を確認しておきましょう。
 

■贈与の都度契約書を作成する

定期贈与の場合は、贈与を行う金額、そして期間を定めた契約書を結び、その内容に基づいて贈与が行われます。
 
したがって、契約を結んだ最初の年に、契約書に書かれた金額に応じた贈与税がかかる仕組みとなっています。
 
これに対し、連年贈与は金額を決めずにその都度贈与を行うという特徴があります。
 
しかしながら、贈与が毎年決まった時期に実行されていると、定期贈与として扱われてしまうかもしれません。それを防ぐためにも贈与の都度、贈与契約書を作成しておくのも対策のひとつと考えられます。
 

■毎年同じ時期に同じ額の贈与を行わない

毎年のように同じ時期に同額の贈与を実行している場合、いくらその都度契約書を交わしていたとしても、定期贈与として扱われてしまうかもしれません。
 
したがって、贈与の時期をずらしたり、贈与額を変更したりするなどの対策をとることも、有効かもしれません。
 

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連年贈与を行う際の注意点

連年贈与を行う際には、上記に挙げた対策以外にも考えておくべき点があります。
 

■名義預金を避ける

連年贈与でも、子どもや孫の口座を祖父母や親が管理している場合は名義預金となり、祖父母や親の財産とみなされてしまいます。
 
それを防ぐためにも、子どもや孫が管理している(それぞれの意思で自由に使っている)口座に振り込むなどといった対策が必要です。
 

■相続開始3年前の贈与は相続財産となる

生前贈与として非課税枠を最大限活用し、毎年110万円以下を贈与していたとしても、相続開始前3年間に贈与した額は相続財産とみなされます。
 
したがって、毎年贈与を行うことは問題ありませんが、それをいつ止めるのかといった時期も見据えておくことが大切です。
 

贈与契約書の作成方法

贈与契約は、贈与する側と贈与を受ける側の合意があれば成立します。したがって、口頭でも契約は成立するのです。
 
しかし、後に指摘されたことを考えるならば、書面で契約を交わし、残しておくほうが賢明です。
 
贈与契約書には、贈与する人そして贈与を受ける人の氏名を記載し、いくら贈与するのか、そしてその金額をいつ振り込むのかといった日付を記載し、贈与する人と贈与を受ける人がそれぞれ署名、捺印するようにしましょう。捏造を疑われないように、署名は自筆で行うことをおすすめします。
 
ただし、贈与を受ける人が未成年の場合、契約書には親(親権者)の同意が必要ですので、忘れないように同意したことを記載し、署名および捺印をしておきましょう。
 
また、子どもや孫の年齢が低く、署名ができない状態の場合は、親が法定代理人として署名捺印します。
 

まとめ

相続税対策としての生前贈与には、暦年課税の非課税枠を使った贈与や、それを毎年行う連年贈与、さらにあらかじめ贈与する額や贈与年数を決めておき、それに基づいて贈与を行う定期贈与があります。
 
定期贈与の場合は、契約を締結した最初の年に贈与税が発生しますが、財産の額によっては、相続時に相続財産として相続税を払うよりも税負担が少なくなる可能性もあります。
 
また贈与契約書の記載方法についても、基本的な要素(贈与する人と受ける人の氏名、金額、贈与を行う日)は漏れなく記載するとともに、自筆での署名そして捺印をしておくことも忘れないようにしましょう。
 
出典
(※)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4402 贈与税がかかる場合
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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