更新日: 2022.03.25 贈与
「教育資金」「結婚・子育て資金」贈与税の非課税制度の改正点と今後の方向性
この2つの非課税制度の主な改正点と、今後の方向性について確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
教育資金の一括贈与の概要と改正点
教育資金の一括贈与を受けた場合における贈与税の非課税とは、直系尊属である父母、祖父母などから30歳未満の子や孫が教育資金に充てるために金融機関との契約に基づいて受けた一括贈与について、受贈者1人につき1500万円までの贈与税が非課税となる制度です。
2021年度の税制改正によって、本制度の適用期限が2年間延長され、2023年3月31日までの贈与分が対象とされました。
なお、2019年度税制改正で受贈者の所得要件が設けられており、2019年4月1日以降の贈与分については、贈与があった前年の合計所得金額が1000万円以下であることが要件となります。
また、管理残額(契約の終了時に非課税拠出額から教育資金支出額を引いた残額。使い残し)の取り扱いについて、以下のように定められています。
(1)受贈者が30歳となって契約が終了する場合の管理残額については、契約終了時に贈与があったものとされ、贈与税の課税対象となる。ただし、学校に在学中、教育訓練給付金を受給中の場合は課税されない
(2)受贈者が死亡して契約が終了する場合の管理残額については、受贈者の相続財産とされ、相続税の課税対象となる
さらに、契約期間中に贈与者が死亡した場合の死亡日時点の管理残額については、以下のような取り扱いとなります。
(1)2019年3月31日以前の拠出分:相続税の課税対象とならない
(2)2019年4月1日~2021年3月31日の拠出分:死亡前3年以内の拠出分は相続税の課税対象となる
(3)2021年4月1日以降の拠出分:相続税の課税対象となる。ただし、受贈者が23歳未満、学校に在学中、教育訓練給付金を受給中の場合は課税されない
そして、2021年4月1日以降の拠出分については、受贈者が孫やひ孫などの場合、相続税額の2割加算の対象となります。
結婚・子育て資金の一括贈与の概要と改正点
結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税は、直系尊属から20歳以上50歳未満の子や孫への一括贈与について、受贈者1人につき1000万円までは贈与税が非課税となる制度です(2022年4月1日以降は、受贈者は18歳以上が対象)。
教育資金の一括贈与と同様に、こちらも適用期限が2023年3月31日までと2年間延長されています。また、受贈者の所得要件が1000万円以下や、孫などの場合に相続税額2割加算の対象となる点も共通です。
受贈者が50歳に達した場合の管理残額については、贈与税の対象となります。また、受贈者が死亡した場合は、受贈者の相続財産として相続税の課税対象です。一方、贈与者が死亡した場合の管理残額は、相続税の課税対象となります。
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2つの非課税制度における利用者数の推移
内閣府・税制調査会(2020年11月13日)の資料によると、両制度の新規契約数と新規財産設定額の推移は図表1のとおりです。
図表1
※内閣府 「第4回 税制調査会(2020年11月13日)資料一覧」より筆者作成
両制度ともに、創設当初をピークとして新規契約数および新規財産設定額が減少傾向にあります。
特に結婚・子育て資金の一括贈与については、令和元年度(2019年度)の契約数が212件と極めて少ない状況です。そのため、次の適用期限(2023年3月31日)が到来するときまでに、非課税制度自体の廃止を含めて改正を検討するとの見解も示されています。
まとめ
アメリカ、フランス、ドイツなどの諸外国では、贈与税と相続税が統合され、一体的に課税する遺産税方式や遺産取得課税方式が採用されています。一方、日本では生前贈与に対する贈与税(暦年課税、相続時精算課税)と、相続税という税負担が大きく異なる方式が採用されています。
つまり、資産を移転する時期によって税負担が異なるため、長期間の連年贈与などを活用することで、税負担を極端に縮減して資産の移転をすることも可能となります。
今回紹介した、贈与税の非課税制度の見直しは、適用期限の2023年3月がめどといわれています。併せて、暦年贈与などの制度の見直しも検討されることが予想されるため、税制改正の動向には注意が必要です。
出典
内閣府 第4回 税制調査会(2020年11月13日)資料一覧
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー