更新日: 2022.03.25 贈与

暦年贈与って廃止されちゃうの? 税制改正を解説

執筆者 : 柘植輝

暦年贈与って廃止されちゃうの? 税制改正を解説
相続税の節税対策として子や孫への生前贈与を考えたり、すでに節税のために実行していたりする方のなかには、「暦年贈与が廃止になる」と聞いて、今後の対応について悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
果たして本当に暦年贈与は廃止となるのか、令和4年度の税制改正大綱を基に解説します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

暦年贈与とは

暦年贈与とは、贈与税が非課税となる範囲内で、主に複数年にわたって行う贈与のことをいいます。
 
一般的には、暦年贈与によって相続財産をできるだけ小さくし、最終的に相続税を最小限に抑えられるよう、生前から自身の財産を子や孫へ移転させるために利用される手法です。
 
暦年贈与で贈与する方の財産が徐々に減っていき、相続が発生したときに保有している財産が少なくなるため、相続税の節税対策として利用することができます。
 
現在、贈与を受けた方(受贈者)にかかる贈与税は、年間の贈与の合計額が110万円までは非課税となっています。そのため、暦年贈与も年間110万円以内で行うことが一般的です。
 
受贈者一人に対する暦年贈与の金額は年間110万円ですが、例えば2人、3人に対して5年、10年と行っていくと、1000万円、2000万円、3000万と大きな金額の財産を非課税で子や孫に移していくことが可能になります。
 

暦年贈与の問題点

暦年贈与の問題点は、時間をかければ課税されることなく財産を移転することができるため、財産に比して過度な節税になる可能性があるということです。
 
本来、贈与税や相続税は財産が移転する際、富の再分配としての役割を担う働きをするのですが、暦年贈与によって非課税での財産の移転が繰り返されると、その役割が機能せず、富が固定されたままとなってしまいます。
 
令和4年度税制改正大綱においても、この点について「財産の分割贈与を通じて相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転することが可能」と言及されています。
 

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暦年贈与は廃止されるのか

暦年贈与は有識者の間でも問題視されており、今後は廃止、または規制の方向に進んでいくと考えられます。令和4年度税制改正大綱では、暦年贈与の見直しついて「本格的な検討を進める」と記載があることからも、現行の制度より規制されていくのは避けられないでしょう。
 
ただし、暦年贈与が本当に廃止されるのか、それとも制度の内容が変更となったうえで暦年贈与の仕組み自体は残り続けるのか、それがいつなのかなど、具体的かつ詳細な内容は決まっていません。
 
また、前述した暦年贈与の見直しには「諸外国の制度も参考にしつつ」との前置きがあることから、暦年贈与や贈与税については相続税も絡めて、諸外国に寄せた内容に変化していくことも想定できます。
 
例えば、日本では相続が開始する前3年以内の贈与は、暦年贈与であっても相続財産とみなして相続税の対象となります。
 
一方、アメリカをはじめ諸外国では、相続開始の3年以上前にさかのぼって相続税を計算する国もあることから、相続開始前5年以内や10年以内など、相続税の対象となる暦年贈与で年数の範囲が広くなる可能性も考えられます。
 
いずれにせよ、いつかは暦年贈与が廃止となったり、現在よりも使いにくい制度に改正されたりすることは既定路線といえます。今後、新たに相続税や贈与税の節税対策をしていく方、あるいは今まさに実施しているという方は、その点を踏まえて暦年贈与について考えていくべきでしょう。
 

暦年贈与は今後、廃止または改正に向かっていくと想定される

現在、暦年贈与によって相続税や贈与税が過度に節税されていることが問題視されており、今後は廃止または改正が想定されます。
 
節税については暦年贈与のみに頼らず、相続財産を組み替えて発生する税金が少なくなる資産配分にするなど、広い視点から考えていく必要があるでしょう。
 
出典
自由民主党 公明党 令和4年度税制改正大綱
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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