更新日: 2022.03.29 その他相続

住む予定がない家……どうすればいい?

住む予定がない家……どうすればいい?
親・祖父母から家を相続するなどして、その家に住む予定がない場合、どのようにするのがよいのでしょうか?
 
どのような選択肢があり、どのように考え、どのように決定するとよいのか、FPと一緒に考えてみましょう。
篠原まなみ

執筆者:篠原まなみ(しのはら まなみ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士

外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。

相続

親の1人が亡くなった場合は、遺(のこ)された親がそのまま家に住み続けるケースが多いのですが、遺された親も亡くなった場合は、子どもは親や、(親が祖父母から相続した)祖父母の家を相続するでしょう。
 
相続は、相続人が自分のために相続があったと知ってから3ヶ月以内(熟慮期間内)に相続放棄や限定承認の手続きをしないと、「負の財産」も含めてすべての財産を相続します。
 
そして相続開始から10ヶ月以内に、相続人は、遺産の分割の仕方を決め、遺産分割協議書を作成して、相続税の申告・納付を行わなければなりません。
 

空き家のデメリット

子どもにすでに自分の家があり、親や祖父母の家に住まない場合は、相続した家はそのまま放置しておくと、空き家になってしまいます。空き家は管理が難しいため、老朽化が加速します。
 
また、倒壊や害虫の発生、火災や犯罪の発生、さらには家がない人が住み着いたりと、近隣に住む人に迷惑をかける可能性があります。そして空き家を所有し続けることで、毎年固定資産税や都市計画税が課せられます。
 
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産所有者に対して課せられる税金で、原則としてすべての土地や家屋が対象です。一方、都市計画税は、都市計画法による市街化区域内に所在する土地や家屋が課税対象です。
 
不動産に対して課される固定資産税と都市計画税は、それぞれ固定資産評価額の×1.4%と×0.3%ですが、住宅用地に関しては、減額特例が設けられています。
 
面積が、住宅1戸につき200平方メートルまでの固定資産税は、評価額の6分の1で、200平方メートルを超える部分は3分の1です。都市計画税は、200平方メートルまでは、評価額の3分の1で、200平方メートルを超える部分は3分の2です。
 
しかし、空き家が増加している現状から、2015年5月26日に「空家等対策特別措置法」が施行され、調査によって特定空家等(※1)に指定された場合、自治体から「助言・指導」が行われますが、状況が改善されない場合には、「勧告」が行われます。
 
「勧告」が行われると、特定空家の宅地は固定資産税や都市計画税の計算上、減税特例から除外され、その結果、翌年以降の固定資産税や都市計画税は大幅に増加します。
 
それでも状況が変わらない場合には、「命令」に切り替わり、従わない場合は、50万円以下の罰金が科されます。そして最終的には自治体が、空き家を取り壊して、その取り壊し費用を所有者に請求する「行政代執行」に移行します。
 

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住む予定のない家はどうしたらよいか

それでは、空き家にしないためにはどうしたらよいのでしょうか。場所と環境が良ければ、相続した家を賃貸するという方法があります。
 
築浅であればそのままで賃貸ができますが、中古になってくるとリフォームをする必要が出てきます。老朽化が進んできてそのままでは貸せない場合は、DIY物件や倉庫として貸し出すことも検討の余地があります。
 
建物がかなり古くなり、そのまま賃貸するには崩壊の危険を伴う可能性等が出てきた場合、建て直しや、さら地にして駐車場として貸すという方法もあります。
 
賃貸に出しても借り手がいなかったり、修理と賃貸収入の収支を考えて採算が合わない場合や、管理が大変な場合は、売却が考えられます。
 
売却の方法としては、家付きのままかさら地にして売却するかになりますが、建物の資産価値、立地場所、環境によってそれぞれメリット、デメリットがありますので、ある程度の時間に余裕があれば、あわててさら地にせずに専門家に相談するなどして比較検討をしましょう。
 
なお、亡くなった親の実家を相続人が売却する場合は、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が受けられ、譲渡所得から最大3000万円の控除ができます。
 
ただし、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、売却するなどの要件があるので、注意が必要です。所定の要件については、国税庁のホームページ(※2)を参照してください。
 

まとめ

土地や建物を数人の相続人で分割する場合、相続人の間で意見が分かれたときは、売却も賃貸もスムーズにいかなくなることがあります。遺産分割協議の時点でしっかりと話し合い、後でももめないために、相続登記をしておくことが大切です。
 
なお、相続登記は、2024年4月から義務化されます。詳しくは、法務省のホームページ(※3)を参照してください。
 
出典
(※1)国土交通省 空家法基本指針及び特定空家等ガイドラインを改正 〜空家等の発生の抑制、利活用、除却等の取組を強力に推進します!〜
(※2)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)よりNo.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
(※3)法務省 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)
 
執筆者:篠原まなみ
AFP認定者、宅地建物取引士、第一種証券外務員、内部管理責任者

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