更新日: 2022.04.19 その他相続
実家のお金関係把握している? 親が認知症や要介護になる前に知っておくべきこととは?
また、まとまった財産がある場合、その後発生する相続についても、本人の意思が分からず、どのように行ったらよいのか悩むケースもあります。
親が認知症や要介護になった際に気をつけなければならない点や、そうなったときの対処法についても解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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認知症に対するお金関係の問題
認知症の進行度合いにもよりますが、一般的に認知症と診断されると「判断能力が低下している」とみなされます。
通帳や印鑑、キャッシュカードなどで本人が自分の預貯金を引き出すことができればいいのですが、その保管場所を忘れてしまったり、キャッシュカードの暗証番号を忘れてしまったりなどという状態になった場合、預貯金を引き出すことはできません。
また、預貯金を引き出せたとしても、どこかに置き忘れてしまったり、引き出せるからこその詐欺に遭ったりなど、トラブルに巻き込まれることも予想されます。
そのようなトラブルを回避するため、金融機関によっては、本人の意思が確認できない(認知症)と判断した場合、その人の口座を凍結することがあります。もし口座が凍結されると親族でも解消できません。
また、認知症と相続の関係は切り離せない問題です。
まだ判断能力があるうちに、どの財産を誰に相続するかを、あらかじめ相続人も含めて話し合っていればよいのですが、なかなかそのような場を設けることは難しいでしょう。
そうなると、遺産分割協議において、相続人同士がもめることになりかねません。
介護状態になった際のお金の問題
介護認定を受け、要介護状態になった場合、その介護の状況によってお金の問題は異なり、お金を管理する能力に差が出ることもあります。
体の自由がきかない状態になった際に、誰が介護を行うのか、その場合は本人の意思も確認する必要があります。身内に介護してもらいたいのか、介護施設に入居したいのか、希望はそれぞれ異なります。
もし介護施設に入居したいならば、どの施設に入居したいのか、そのためにはどのくらいの費用が掛かるのかを把握しておく必要があります。
そのような状態になったときに保険金、もしくは給付金が支払われる介護保険に加入していれば、その保険を利用することもできます。
要介護状態になった際には、公的な介護保険を利用できますが、原則として現物給付であり、それに掛かった費用の1割(原則)を負担しなければなりません。また、介護保険の対象とならない給付もあり、その場合は全額自己負担となります。
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遺言書やエンディングノートの活用
相続における相続人同士のトラブルを回避するためには、親の判断能力があるうちに遺言状を準備しておいてもらうことが、一番の解決策です。
遺言には「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」などがありますが、できれば法的効力の高い公正証書遺言で作成しておく方が安心です。
また、通帳や印鑑の場所の管理などについては、キャッシュカードの暗証番号や、どの金融機関に口座を開設しているのか、さらには加入している保険の内容についても、本人の意思がしっかりしているうちに細かく記載してもらっておくことをおすすめします。
最近、特に問題となっているデジタル遺産についても考えておく必要があります。
ネット銀行やネット証券などのログインID・パスワード、SNSのアカウント情報などをまとめて記載しておくとよいでしょう。
これらの情報を遺言書やエンディングノートに記載しておくことは重要ですが、他人の目に触れたり情報が漏れたりすることがないよう、厳重に保管してください。
成年後見人や家族信託の利用
このような認知症や要介護になった後のお金のトラブルを避けるためには、本人の判断能力がしっかりしているうちに、任意後見契約を結んでおくことを検討してもよいでしょう。
任意後見制度を結んでおくことで、判断能力が低下した後には、家庭裁判所の手続きを経て本人が希望した人を後見人にできます。
一時的に費用が必要な場合は、家族が金融機関に相談することで引き出すことができますが、後見人は、本人に代わって財産の管理を行うことができるので、継続して資金を引き出すこともできますし、認知症を理由に口座が凍結された際の解消手続きを行うことも可能です。
また、家族信託を利用することを考えてもよいかもしれません。
家族信託とは、本人が今後認知症や介護が必要な状態になった際の財産管理を任せることができる制度です。誰に任せるかは本人が決めることができ、任せられた人は本人が決めたルールに従って、本人の財産を管理もしくは処分できます。
まとめ
成年後見人の制度は家庭裁判所を通して行われ、後見人となった人は被後見人の財産管理や契約手続きなどを代わりに行うこともできます。
ただし、成年後見人の制度を利用するにあたっては、費用が発生する点を覚えておく必要があります。
もちろん遺言書の作成も、その作成方法によっては一時的な費用が発生します。家族信託やエンディングノートについては、費用が掛からない点からも利用しやすい制度といえるかもしれませんが、法的拘束力などは低くなります。
認知症や要介護状態になるときは突然やってきます。そのときに慌てないよう、事前に何ができるのかを知り、その中で自分たちにもっとも有効なものが何かを選んで早めに準備しておきましょう。
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員