更新日: 2022.05.12 贈与
孫の教育費を負担したら税金がかかる? その3
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
暦年贈与とは?
贈与を受ける人(受贈者)が、その年の1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の金額が110万円以下であれば贈与税は非課税となり、110万円を超えると超過額に対して定められた税率の贈与税がかかります。
暦の上での1年間ごとに非課税枠があり、その枠内で贈与することが可能なので、この方法を暦年贈与と称しています。
暦年贈与は、その都度贈与および教育資金の一括贈与と違い、使途が限定されていないため、どんな目的にも使えることが特徴です。
孫の教育資金を贈与する3つの方法のメリット、デメリット
孫の教育資金という目的に限定して考えると、その都度贈与と教育資金の一括贈与に比べ、暦年贈与を使うメリットはそれほど大きくありません。
その都度贈与のメリットは、贈与金額の限定がないことです。また、その都度贈与をするためには、必要なときに贈与できるように資金を確保しておく必要がありますがが、手続きもそれほど面倒でなく、贈与が完了します。
教育資金の一括贈与のメリットは、一度に1500万円という多額の金額を非課税で贈与することができることです。しかも、贈与金額を孫が23歳まで、または学生(大学院生も可)である間に使い切るという計画を立てておけば、贈与者が死亡しても相続税の対象になることはありません。
ただし、手続きや管理に手間がかかるというデメリットはあります。
それらに比べ、暦年贈与は教育費に使途が限定されず、住宅購入費や自動車の購入費など何にでも使えるというメリットがあるので、ほかに方法がある教育資金の贈与のために、あえて暦年贈与を使用する理由は特にないということができます。
以上が孫への教育資金の贈与に関する解説ですが、それに加えて暦年贈与を使用するに当たり、知っておくべきこと、注意をすべきことについて解説します。
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暦年贈与の税額の計算
暦年贈与の税額の計算は次のように行われます。
その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産の価額を合計しますが、贈与税は贈与者ではなく、受贈者1人当たりにかかるので、その点を注意する必要があります。
例えば、祖父が孫Aに100万円しか贈与していなくても、同じ年に祖母から孫Aに50万円の贈与があれば、孫Aの受贈額は150万円となり、基礎控除額110万円を超えるので、超えた分は贈与税の課税対象となります。
すなわち、その年における受贈額の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残りの金額に対し、税率を乗じて税額を計算します。
2015年以降の贈与税の税率は、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の2本立てになっています。
一般贈与財産用(一般税率)
一般税率は、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で、子が未成年者の場合など「特例贈与財産用」に該当しないときの贈与税の計算に使用します。
祖父母からの教育資金の贈与でも、孫が未成年者の場合は一般税率が適用されます。
※国税庁 「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」より筆者作成
特例贈与財産用(特例税率)
特例税率は、贈与により財産を取得した成年者(*)が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受けた財産に関する贈与税の計算に使用します。
(*)成年者とは、贈与を受けた年の1月1日において「20歳」以上の人ですが、2022年4月1日以後の贈与については「18歳」以上の人となります。
例えば、受贈者が成年者である場合の祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用しますが、直系血族からの贈与に限られ、夫や妻の父(義父)からの贈与には適用されません。
※「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」より筆者作成
一般税率、特例税率ともに基礎控除額は110万円ですが、贈与額を同額で計算した場合、特例税率の方が税率は低いので、納税者から見ると特例税率がより優遇されているということができます。
(贈与額610万円-基礎控除額110万円)×30%-控除額65万円=税額85万円
(贈与額610万円-基礎控除額110万円)×20%-控除額30万円=税額70万円
毎年同額の贈与をすると? 暦年贈与における注意点
基礎控除額以内であっても、毎年同額ずつ同一人物に贈与する場合、例えば毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与すると、初年度に10年間で1000万円の贈与の契約(定期金の贈与契約)をしたと見なされ、1000万円に対して贈与税をかけられる可能性があります(国税庁ホームページ「No.4402 贈与税がかかる場合」を参照)。
これは、例えば毎年111万円を贈与し、基礎控除の超過分1万円に対して贈与税を支払っていても同じです。
定期的に贈与契約をしたと見なされないためには、資金の融通ができたときに贈与していることを示すため、年ごとに金額を変えたり、時期を変えたりする配慮が必要になります。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー