更新日: 2022.05.18 その他相続
故人が借金を残して死亡…。返済できそうにない場合の方法って?
相続放棄と相続財産中の借金の疑問についてお答えします。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
相続の効果
ある人が亡くなりますと、国家資格や扶養してもらう権利、一身専属的なものなどごく一部の例外を除き、その方が有していた一切の財産は相続人に承継されることになります。
財産と聞くと現金や株式など、プラスのものがメインとなるイメージが強く残ります。しかし、実際にはそうではありません。ここでいう財産には借金や借金の保証人としての地位など、マイナスのものも含まれます。
つまり、相続が発生しますと、亡くなった方の権利や義務のほぼ全てが丸々相続人たちに移転するということです。
相続放棄をすれば故人の借金を負担する必要はない
相続には相続放棄という手続きがあります。相続放棄をしますと、最初から相続人でなかったと見なされることになります。
すると、プラスの財産も一切相続することができませんが、マイナスの財産も一切相続する必要がなくなります。その結果、相続放棄をするとどれだけ莫大(ばくだい)な借金があろうと、相続人が借金を1円も返さなくてもよくなるのです。
制度上としては、限定承認といってプラスの財産の範囲でマイナスの財産を負うという制度もあるのですが、こちらについては要件が厳しく実務上利用されることはほとんどありません。
また、プラスの財産の限度で負債も負うため、1円も負担する必要がないとまではならない制度になります。
相続放棄は3ヶ月以内に
相続放棄は自分が当事者となる相続があったことを知ってから3ヶ月以内に、亡くなった方の最後の住所地を管轄している家庭裁判所にて行わなければならないとされています。
3ヶ月を過ぎてしまいますと、単純承認(通常どおりの相続)をしたと見なされ、借金を返さなければならなくなります。
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相続放棄の注意点
相続放棄をしますと、プラスの財産も相続できなくなるという点以外に2つ重要な注意点があります。それは次順位の相続人に相続権が移るという点です。具体的には、亡くなった方の子が相続放棄をすると亡くなった方の兄弟姉妹に当たる方に相続権が移転するということです。
それにより、あなたが親の相続を放棄して親の借金の相続を免れたとしても、あなたに叔父や叔母がいればその方が相続人となって借金を負うことになってしまいます。
この場合、あなたが相続放棄をしただけでは叔父や叔母が借金を負うことになってしまうため、叔父や叔母も相続放棄をする必要があります。このように1人が相続放棄をすると代襲相続によって別の人に借金が移転する可能性があることにも注意しておかなければなりません。
また、亡くなった方の借金の連帯保証人となっているような場合は注意が必要です。連帯保証人たる地位と借金自体の相続とは別物であるため、相続放棄をしても連帯保証人としての位置に基づいて借金を返済しなければなりません。
故人に借金がある場合は相続放棄の検討を
故人に借金がある場合でも、相続放棄をすれば、原則相続人は1円たりとも亡くなった方の借金を背負う必要はありません。
しかし、相続放棄をすると初めから相続人でなかったものとされ、代襲相続が起こったり、プラスの財産も受け取れなくなる可能性もあります。
もし、故人が借金を残して亡くなったときでも安易に相続放棄を選ぶのではなく、制度についてよく調べ、十分に考えてから実行するようにしてください。
出典
e-Gov 民法
執筆者:柘植輝
行政書士