更新日: 2022.05.19 その他相続

相続登記の義務化で何が変わる?

執筆者 : 宿輪德幸

相続登記の義務化で何が変わる?
所有者不明土地の対策として、法改正がなされました。現状、多くの不動産が、すでに亡くなった方の登記のままになっています。今回の法改正により、所有者不明土地の最大の原因である相続登記が義務化され、怠った場合10万円以下の過料という罰則が設定されました。

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宿輪德幸

執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)

CFP(R)認定者、行政書士

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所有者不明土地

所有者不明土地とは、下記のとおりです。

●不動産登記記録から所有者が判明しない
●所有者の所在が不明で連絡がつかない

このような土地は、処分権限を持つ所有者と連絡を取れませんので、処分ができません。その結果、公共工事などで土地を収用しようとしてもできない、というような支障があります。特に、東北の震災後、復興工事において問題が表面化しました。
 
2017年11月、所有者不明土地問題研究会(座長増田寛也元総務相)は、2016年時点で所有者不明土地面積が410万ヘクタールあり、このままでは2040年には720万ヘクタールになる予測を公表しました(国土の面積:九州本島368万ヘクタール・北海道本島780万ヘクタール)。
 
今回の法改正では、所有者不明土地の発生予防とすでに発生している分の利用の円滑化を目指しています。
 

制度概要

今回の改正は、大きく3つのポイントがあります。

(1)不動産登記制度の見直し

●相続登記・住所変更登記の義務化
●相続登記・住所変更登記手続きの簡素化

(2)土地を手放すための制度

●相続土地国庫帰属制度の創設

(3)土地の利用を進める民法改正

●所有者不明土地管理制度等の創設
●共有者が不明な場合の共有地の利用の円滑化
●長期間経過後の遺産分割の見直し

なお、今回の改正法の施行はもう少し先のこととなります。

●民法一部改正:令和5年4月1日施行
●相続登記義務化関係:令和6年4月1日施行
●住所変更登記義務化関係:未確定(政令で定める)
●相続登記国庫帰属法:令和5年4月27日施行

施行はまだ先ですが、相続登記の申請義務は改正法以前の相続にも遡及(そきゅう)適用されることになっており、今の時点で相続登記が未了の土地も義務化の対象となります。相続登記を長引かせますと、相続人が認知症になりさらに相続が発生するなど、困難になってしまうことが多いため、早急に着手しましょう。
 

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土地を相続する際の注意点

(1)相続登記申請漏れは10万円以下の過料

不動産を取得した相続人が、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務となり、正当な理由のない申請漏れは10万円以下の過料の対象になります。相続が発生したら、3年以内に相続登記をしなければなりません。
 
土地の相続に関する遺言があれば、相続人が登記をしますが、遺言がない場合には遺産分割協議で取得する者を決めなければなりません。協議が難航すると3年以上かかることもありますが、その場合は新制度「相続人申告登記」により、相続人であることを3年以内に登記官に申し出れば過料は発生しません。
 

(2)相続した土地を国に引き取ってほしい

相続または遺贈により取得した土地を管理できない場合、国に引き取ってもらうことが可能になります。ただし、以下のような土地は引き取ってもらえません。

●建物が建っている
●担保権や使用収益の権利の設定がある
●道路その他の他人による使用の予定がある
●特定有害物質に汚染されている
●境界が明らかでない。所有権の存否などで争いがある

また、引き取ってもらうためには要件審査を受け、10年分の管理費用を納付しなければなりません。管理費の詳細は政令で規定予定ですが、現状の標準的な10年分の管理費用としては、粗放的な管理で足りる原野は約20万円、市街地の宅地では約80万円とされています。国に引き取ってもらいたい土地がある場合は、この制度の対象となるよう、事前に対策をしておきましょう。
 
今回の制度改正は、相続の発生などを把握するため法務局が住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)のデータを取得できるようにするなど、力の入った内容となっています。対象となる土地は膨大ですので、今の時点で相続登記のされていない土地を持っている方は、相続登記を急ぎましょう。
 
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士